「ろうそく」が後押し~文在寅丸の出帆
- 2017年 7月 29日
- 評論・紹介・意見
- 小原 紘韓国
韓国通信NO531
韓国の新政権スタート(5/10)から2カ月あまり。「ろうそく市民革命」から生まれた新政権の動きは予想されたとはいえ、とても新鮮だ。
公企業体の非正規雇用者の正規雇用化。最低賃金の大幅アップが大きな話題となった。来年度から時間給7530ウォン(日本円換算753円16.4%の引き上げ)、2020年までに1万ウォンを目指すという。人件費の負担が困難な中小零細企業には国庫補助を行うという。韓国経済を無視した「バラマキ」だ、「人気取り」だ、「経済成長」が犠牲になるという批判もあるが、その声は小さく、説得力に乏しい。
「脱原発宣言」も、拙速で無謀という批判にさらされた。「原子力ムラ」(韓国では原発マフィア)の彼らは原発も放射能も安全と主張して、福島原発事故による原発事故関連死や健康被害を説明した大統領発言を「大ウソ」と断じた。原発輸出のセールスマンをつとめる日本の首相を引き合いに、脱原発を主張する自国の大統領をコキおろす厚かましさである。
注目されるのはやはり北朝鮮との対話路線ではないだろうか。これには早速、韓国と日本、それぞれの一部から「非現実的」、 「日米に説明を尽くすべき」という非難があがった。
しかし軍事会談の申し入れ、離散家族の再会事業の開始、来年の冬季平昌オリンピックの共同開催提案という提案は驚くほどのことではない。戦争回避のための賢明な選択である。北の「脅威」を喧伝してきた日本政府にとっては「力の抜ける」ような対話路線だが、日本には相談せず、アメリカには事前に相談したともいわれる。事実とすれば、したたかな文在寅外交である。アメリカ艦隊と一緒に北朝鮮を侵攻する構えを見せた日本政府のメンツはまるつぶれだが、話し合い路線に胸をなでおろした日本人は多かったはずだ。2002年の平壌宣言以降、拉致問題を理由に対立姿勢を強めてきた安倍路線が北朝鮮の孤立に拍車をかけ、核開発に走らせたともいえる。新政権の「平和攻勢」は前途多難が予想されるが、平和の光が少し見えてきた。「積弊清算」「国民統合」を掲げた文政権には「ろうそくデモ」で示された広範な国民の意志と支持が後押しをしている。「帰らざる河」を渡った国民の民主主義と平和への熱い思いがある。「向かい風」に向かって進む帆船のように前に進むことはあっても決して後退しないはずだ。貧困格差の解消、原発問題、北朝鮮政策、米軍基地問題などわが国と共通する問題をかかえた韓国から学ぶことは多い。
<安倍政権の賞味期限切れ>
安倍政権の支持率低落が止まらない。今までの高支持が理解できないので、低下も理解できない。首相を替えても後継者はいくらでもいる。こんな事くらいで政権もマスコミもバタバタするようでは国の未来が不安だ。先週の土曜日、近くの駅頭で「アベ政権は許さない」のプラカードを掲げていたら多くの人から声をかけられた。安倍政権の化けの皮がはがれたのか、賞味期限切れかどうかわからないが、やはり「一日でも早く辞めて欲しい」という声が多く、求めないのにカンパまでもらった。
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