まだ最後の決戦がある - 改憲賛否を問う国民投票に向け大衆運動の構築を -
- 2017年 10月 24日
- 時代をみる
- 岩垂 弘憲法選挙
総選挙が終わった。改憲派の圧勝、護憲派の完敗だった。この結果を受けて、安倍自民党は、改憲に向けた作業をいっきに加速させるだろう。しかし、絶望することはない。望みなきにしもあらず。最後の決戦の場として「国民投票」があり、護憲派がこの国民投票で勝利することができれば、改憲派の狙いを阻止することができるからだ。
今回の総選挙では、自民・公明両党で衆院議席の3分の2を獲得したほか、両党に希望の党、日本維新の会の当選者を加えると、改憲勢力は衆院議席の4分の3(75%)を占める。この結果、護憲派(立憲民主党、共産党、社民党、無所属など)は衆院で極めて小さな勢力となってしまった。参院でも、すでに改憲勢力は3分の2を占めている。
自民党は衆院選の公約で憲法改定を初めて重点政策として掲げた。そこに「自衛隊の明記」「教育の無償化・充実強化」「緊急事態対応」「参院の合区解消」の4項目を書き込んだ。
だから、自民党としては、総選挙で大勝したことで「公約が国民に支持された」として、大手を振って改憲作業に力を注ぐことになるだろう。自民党内で検討されているスケジュールは、今秋の特別国会後に臨時国会を開いて改正原案を提示し、与野党で協議して来年の通常国会で改正案を発議、それを来年秋に国民投票に付し、可決されれば新憲法として2020年に施行、というもののようだ。
これに対し護憲派はどんな戦略を描けばいいだろうか。
国会内で圧倒的な少数派となってしまった護憲派としては、改憲の賛否を問う国民投票での勝利を最終目標にして、それに向けて大衆運動を盛り上げる以外にない。すなわち、草の根からの護憲の大運動を全国の津々浦々で展開し、国民投票で「改憲反対」の意思を示す人が有権者の過半数に達するようにする以外に道はない。
そうしたことは可能だろうか。十分に可能と私は考える。なぜなら、最近の新聞・通信・テレビ各社の全国世論調査によれば、国民の間では「改憲」と「護憲」が伯仲しているからである。とりわけ「9条改憲」に対しては「賛成」よりは「反対」の方が多い。このことは注目に値する。要するに、国民投票での勝機は十分にあるのだ。
大衆運動をバカにしてはいけない。この春、韓国では在職中の朴槿恵大統領が罷免され、その後の大統領選で文在寅氏が選ばれるという政変があったが、こうした最高指導者の交代をもたらしたのは、「ローソク市民革命」と呼ばれる広範な市民による大規模なデモだった。
いずれにせよ、護憲派には、これから先、運動のあり方についても再検討が迫られるだろう。これまでの護憲運動を見続けてきた者から言わせてもらうと、運動参加者は全般的に言って高齢者が多い。若い人をもっと増やさないと、運動の発展は望めない。若い人たちにも加わってもらうためにはどうしたらいいか。そのための突き詰めた論議が求められるというものだ。
護憲派にはまた、大衆運動に取り組む一方で、日本の安全保障をどうしたら確保できるかという理論的な検討の深化も求められるのではないか。
今回の総選挙で、自民党が大勝した背景に緊迫する朝鮮半島情勢があったとみて間違いない。北朝鮮による核・ミサイル開発が国民に深刻な不安を与えていたから、「モリ・カケ問題」などで安倍政権に不信感を持ちながらも、日本の安全保障のために防衛力増強と日米同盟強化を進めると主張する自民党に一票を投じた有権者が少なくなかったはずだ。「この国を守り抜く」という安倍首相の叫びが、有権者にうけたのである。こうした自民党の行き方に対抗する、説得力ある安全保障論が護憲派からはあまり聞かれなかった。
護憲派は、平和憲法を護りながら、北朝鮮の核開発問題をこう解決し、世界と日本の平和を護る――という説得ある政策なり提言を打ち出す必要がある。
1990年代半ばには、「自衛隊の違憲性の解決を目指す具体的提案」として、「平和基本法」の制定を提案した学者グループがあった。それは、自衛隊を「最小限防御力(憲法の許容しうる水準の軍事力)」にまで縮小する、具体的には国土警備隊的なものに改組するという提案だった。当時はほとんど省みられなかったが、この提案は今一度検討に値するのではないか、と私は考える。
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