「明治維新150年」で「戦争ができる国」に進む日本
- 2018年 1月 17日
- 時代をみる
- 加藤哲郎安倍
案の定というべきか、安倍総理の年頭記者会見は、北朝鮮の核・ミサイル脅威から入り、「北朝鮮の脅威に備える自衛隊の諸君。その強い使命感に、そして責任感に対して、改めて敬意を表したい」で始まりました。そこから明治維新150年、「私のふるさと長州」からの「草莽崛起」で「国難」を乗り切った話。そこからいきなり、現在の「国難」少子高齢化に対して、いかにアベノミクスが立ち向かったかとして、185万雇用増と名目GDP50兆円増を挙げ、次は「働き方改革」だと言います。本当でしょうか。ちょうど明石順平さん『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)で低賃金非正規雇用に頼りGDP基準年や算出基準を変更しての数字のマジックを読み、『サンデー毎日』1月21日号の90歳の長老・伊東光晴さんの 「アベノミクスは日本の死に至る病」という診断を聞き、ハンガリーから日本経済を見ている盛田常夫さんの安倍周辺エコノミスト評価を見ていたので、 いつもの三百代言・誇大広告と納得できました。
首相の決意は、はっきりしています。「戌年の今年こそ、新しい時代への希望を生み出すような憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国民的な議論を一層深めていく。自由民主党総裁として、私はそのような1年にしたいと考えております。2018年は、改憲の年と、位置づけられています。その準備も、着々と進められています。自民党内にも異論があり、与党の公明党との間にもなお軋轢はありますが、「ファシズムの初期症候」満載の 安倍内閣が続く限り、この路線は強まるでしょう。野党の非力につけこんだ、選別・分断と囲い込みが進められるでしょう。
しかし、安倍晋三の年頭所感で、語れなかったこともあります。トランプ大統領も日米同盟も、登場しません。盟友トランプの気まぐれな国際政治の暴走、国内政治での迷走・スキャンダルは、安倍ブランドにも跳ね返ってくるリスクがあります。沖縄で続くヘリコプター事故は、完全無視です。辺野古や基地問題での質問は、避けたかったのでしょう。北朝鮮の平昌オリンピック参加と南北会談、トランプの歓迎談話、韓国文在寅大統領の慰安婦問題での新方針などは、安倍官邸にとっても蚊帳の外で、影響力を行使できません。国会を開けば集中砲火を浴びるに違いない、公的権力の私物化、森友・加計問題、スパコン・リニア疑惑に触れられることは、心底懼れているようです。だから「消費税の使い道を見直し」以外、税の話は出てきません。森友資料隠しの元凶が国税庁長官ですから、確定申告を前に、騒がれたくないのでしょう。
ノーベル平和賞を受賞したICAN事務局長の来日に、日本政府は、首相との面会を断りました。安倍首相は、「まだ行ったことがない国」という理由でバルト3国・旧東欧の6カ国外遊に逃げ出しました。22日からの通常国会では、首相の委員会出席時間削減が、与野党の攻防になっています。そもそも議論したり、批判されたりするのが、いやなようです。そのくせ、右翼のオトモダチや芸能人との会食、メディア対策のイベント出席には熱心です。沖縄や福島・熊本住民の苦悩は、意に介さないようです。正月も、各地で地震が続きました。異常気象の影響は地球大なのに、急速に進む「脱炭素革命」 に乗り遅れて原発を再稼働し、次期経団連会長のポストを餌に、日立の危ない原発輸出商談、トランプから高価な陸上イージスを買わされたうえで、武器輸出への参入も。「死の商人」への道です。
「戦争ができる国」へと変容するこの国で、私たちは、何ができるのでしょうか。さしあたりは、「戦争とは何か」を、21世紀を担う若者たちに、具体的にイメージしてもらう必要があります。 「君たちはどう生きるか」から、「君たちは生き残れるか」へと、もう一歩進んでもらいましょう。中東シリア、イラクからミャンマー・ロヒンジャまで、ホットな素材があります。コペル君が悩んでいた時期の中国や朝鮮半島、真珠湾攻撃から沖縄戦、広島・長崎からシベリア抑留まで、歴史の書物や映画、YouTube映像も無数にあります。軍歌や反戦歌から入る道もあります。身近なところで「戦争」の実相を考えてほしいものです。私自身は、知識人向けに、昨年末公開された敗戦前後の湯川秀樹日記(1945年)の解読から、「戦争と科学者」の 問題を、再考しています。その一端は、昨年公刊した『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)と合わせて、1月20日午後の第304回現代史研究会で報告します(午後1:00~5:00、明治大学駿河台校舎・リバティタワー7階1076号教室)。すでに「今日もなお徘徊する亡霊たち-731部隊の戦後史」と題して、レジメも公開され、明治大学西川伸一教授がコメントしてくれます。今年最初の仕事ですが、関心のある方は、ぜひどうぞ。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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