1930年代の世界と日本を繰り返さないように!
- 2018年 2月 3日
- 時代をみる
- 加藤哲郎安倍民主主義
2018.2.1 通常国会が始まりました。 安倍晋三は、予想通り強気で、憲法9条改憲にまっしぐらです。平昌オリンピック開会式出席は決めましたが、韓国文大統領との首脳会談で、従軍慰安婦問題での「日韓外相合意」 履行の強要や北朝鮮への「対話より圧力」での牽制は、期待できないでしょう。森友・加計問題での政府答弁のいい加減さは相変わらずで、籠池夫妻は半年も窓無し独房生活なのに、もう一方の当事者である首相夫人・安倍昭恵の役割も前理財局長・佐川宣寿の虚偽答弁も、政府・自民党にガードされたままです。ようやく森友学園国有地格安売却交渉の文書が一部出てきた段階。佐川は現国税庁長官で、一度も記者会見に応じず、確定申告の時期に税務署員が弁明に大わらわです。スパコン、リニア、ジャパンライフ等 、首相の権力私物化と税金の怪しい使われ方の素材は山積していますが、さしあたりは、安倍内閣の弱い環、茂木経済再生担当大臣の線香配付疑惑から、野党の追及が始まりました。自民党内の旧経世会額賀派内の抗争と連動しています。ただし野党の追及は、おおむね週刊誌やメディア、ウェブ情報の後追いで、政党の独自調査にもとづく質問が、ほとんど見られません。立法事務費という調査活動費が、一人毎月65万円支給されているにもかかわらず。日本政治の劣化の兆候の一つです。
米国トランプ大統領は、恒例のダボス会議に出席し、新自由主義グローバリズムの政治経済エリートの前で「アメリカ・ファースト」を 孤立主義ではないと弁明しTPPへの復帰まで口にしましたが、G7や中国・インドの指導者が集ったこの会議(世界経済フォーラム、WEF)に、安倍晋三も日本政府の閣僚もいませんでした。 20世紀の石油危機の時代に使われた石油メジャーの「セブン・シスターズ」になぞらえて、米国のアップル、グーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトと中国のアリババ、テンセントが現代テクノロジーの「セブン・シスターズ」 とよばれ、「7姉妹は全て時価総額が50兆円を超えて、データを独占し、プライバシーを侵害し、Fake Newsを生み出す有害な独占企業として捉えられていた 」という 報告もありました。WEF「グローバルリスク報告書2018」では、「異常気象、自然災害、気候変動への対応、サイバー攻撃、水資源危機、大規模な移民」を「グローバルリスク」として評価したといいます。こうした世界の支配層の動きに、日本は、蚊帳の外だったようです。
ダボス会議から帰ったトランプは、ワシントンの議会で初めての一般教書演説を行いました。今秋の中間選挙を意識してか、ツイッターでの乱暴な口舌は抑制し、原稿通りに「新しいアメリカの時代」 への議会の超党派での協力を訴えるものでした。しかし、トランプ大統領自身をも当事者として含むセクハラに抗議する「MeToo」運動に連帯して、黒い服で埋まった野党民主党議員席からは、恒例の儀礼的拍手もなく、演説終了後、直ちに退席しました。テレビ中継を意識してか、いつものメディア 批判は封印したものの、批判的メディアの論調は「柄にもない」というものでした。もっとも日本の国会では、首相側近の元TBS記者のレイプ問題についての国会質疑を、被害者女性が傍聴席に現れたためか、1月30日午後のNHK国会中継は放映されることはなく、それを問題にし大きく報じるメディアもありませんでしたから、アメリカの民主主義は、まだ健全というべきでしょう。日本のメディアは、東アジアの隣国への悪意と蔑視に満ちた報道で溢れ、「反中嫌韓」の排外主義的ナショナリズムに染まっています。異論を述べると「反日」とレッテルを貼られるのも異常です。「言論の自由」の根幹が、揺らいでいます。
21世紀初めの10年ほど、1月のダボス会議(世界経済フォーラム)と米国大統領一般教書演説に対抗する世界社会フォーラム(WSF)のグローバルな抵抗運動があり、その年の世界の行方を占う、格好の定点観測ができました。とりわけ米国9.11同時多発テロとアフガン・イラク戦争の時期には、「もう一つの世界は可能だ」というWSFの呼びかけに応えた、グローバルな非戦平和の運動がありました。本サイトの「イマジン 」には、当時の記録が集成されています。しかしWSFは、2010年代に地域別・問題別の運動に分化して、かつてのアモルフォス(非結晶)な運動を結晶化(クリスタライズ)する作用を弱めました。その間に、グローバル資本主義そのものが、国民国家単位のブロック化と競争の様相を強め、特に移民・難民・外国人労働者の受入をめぐって、内向きの排外主義とポリュリズムと軍産複合体が、各国で台頭してきました。安倍内閣のファシズム化ばかりでなく、国際環境も、20世紀の1930年代に似てきました。世界戦争前夜の悪夢です。ただし、核兵器という人類絶滅兵器の存在ばかりでなく、国際法や国際組織の多元多層化、それに人権・平和思想とインターネットをも介した情報コミュニケーションの広がりが、かの時代とは大きく異なります。トランプ政権は、科学技術政策でも「軍事」「国土安全保障」「経済的繁栄」を最優先とのことです(朝日新聞2月1日)。科学技術や学問の世界にとっても、試練の時です。昨年公刊した『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)をもとにした、1月20日第304回現代史研究会の報告レジメとパワポ原稿を追加しました。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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