「権力の私物化」を公正に裁ける国へ!
- 2018年 3月 4日
- 時代をみる
- 加藤哲郎安倍
2018.3.1 53%の大学生の一日の読書時間がゼロ、大学生協連の一万人調査の結果です。2時間以上読書の学生がまだ5%いるのが救いですが、 学生の貧困化とスマホを含む情報源多様化の、相乗効果のようです。 教える側の大学教員には、非常勤講師をかけもちする年収200万円以下の「高学歴ワーキングプア」が構造的に定着。これでは「科学技術立国」をいくら唱えても、学術研究での日本沈没は、時間の問題です。不安定・低賃金の非正規雇用労働者が2000万人以上、2015年で37.5% ですから、三人に一人をこえます。女性は非正規が1400万人で正規よりも多く、65歳以上も300万人、そして、いまや200万人を越えた在留外国人の多くが、 事実上の外国人労働者・移民労働者になっています。ここから「アンダークラス」という新たな階級的規定を設けるかどうかはともあれ、かつての「一億総中流」ニッポンは、完全に崩壊しています。1995年の日経連「新時代の『日本的経営』」を明示的な転換点として、日本の労働世界は、劇的に変わりました。結婚・出産で女性労働者が退職を強いられるM字型曲線の谷が緩やかになったと言いますが、それは女性の雇用機会が増え職場の男女平等が進んだというよりも、結婚しても生活・育児のために二人で働かざるを得ない男女が増えたということでしょう。いま国会で問題となっている裁量労働制の営業等職種への拡大は、もともと1995年日経連提言以来の財界の要請に安倍内閣が答えたものであり、過労死・過労自殺の温床になるばかりでなく、日本型格差社会の固定化・貧困化を導くでしょう。安倍首相は労働時間データ捏造による改憲世論の支持率低下をおそれて一歩後退しても、日本経団連は強気の推進姿勢です。
韓国・平昌オリンピックの第一ラウンドが終わり、パラリンピックの第二ラウンドに移ります。日本選手のメダル獲得報道の合間に、時々韓国を批判する報道が目につきました。曰く、日本のメディアを棚上げにして「TV中継は韓国が強い競技に集中」「閑古鳥が鳴く平昌五輪、THAAD制裁の余波続く」「治安を問題視した日本を「平昌に水を差す」と非難…韓国の安全・防寒対策の現状は?」「北朝鮮、平昌五輪の“ほほえみ外交”という虚飾の裏側──それでも止まぬサイバー攻撃と、韓国の思惑」等々、特に南北朝鮮の交流・融和と「平和オリンピック」成功を揶揄する日本側報道が目立ちました。本サイトは前回、オリンピック憲章に沿った場外「平和」レースで、国際オリンピック委員会(IOC)トーマス・バッハ会長、開催地韓国の文在寅大統領、それに北朝鮮の金与正特使の3人が メダリストとしましたが、その意味は、第一ラウンド終了で、いっそうはっきりしてきました。一つは、このIOCが仲介した緊張緩和策、昨年から南北朝鮮政府が秘密裏に準備し、綿密に計画されてきたものと思われることです。北朝鮮の核・ミサイル保有に対する韓国政府の対抗策は、米国からも中国からも相対的に自立し、もちろん「圧力」「制裁強化」一辺倒の日本の安倍内閣や国内保守勢力の妨害を予測し排除した、「対話」重視の戦略的・自律的選択でした。第二に、米国政府もこの文大統領の「対話」政策をCIAルートで察知・了解し、2月10日には北朝鮮金永南常任委員長・金与正特使と米国ペンス副大統領の青瓦台での会談までセットされていたことが明るみになり、北朝鮮側の2時間前ドタキャンで実現できなかったとはいえ、動かしがたい事実となったことです。北朝鮮側は、閉会式に出席した金英哲党副委員長が「米中対話の十分な用意」を述べ、あのトランプ大統領も「適切な環境の下でなら我々も対話を望んでいる」と公言しました。日本政府は、ほとんど蚊帳の外でした。ソウルまででかけた安倍晋三の外交的失敗で、「雑談程度」なら北朝鮮と「対話」するという軌道修正です。
もちろん、まだ東アジア緊張緩和の第一歩で、北朝鮮非核化には、長い距離があります。中国政府・ロシア政府は素早く動き、スウェーデン政府の影の動きも取り沙汰されています。確かなことは、この新たな東アジア情勢を作りだしたものは、韓国における昨年5月の朴槿恵大統領から文在寅大統領への政権交代によるものであり、南北融和は、文大統領の公約であり国民への約束であったことです。 韓国政治ではしばしば起こることですが、朴前大統領は、巨額の収賄と「国家の危機」を招いた「大統領権限の私物化」の罪を告発され、懲役30年、罰金118億円を求刑された刑事被告人になっています。ロシアでも中国でも、アメリカでさえ、元の政権の失政と腐敗を告発して権力を握り「独裁」に近づくのは、「権力は腐敗する、絶対的権力は絶対に腐敗する」というアクトン卿の警句通りです。それでも「腐敗した権力」を、証拠にもとづき司法手続きで裁くのは、民主主義国家の最低限の資格です。隣国韓国では、「権力の私物化」への司法的決裁が進んでいます。中国の場合は、腐敗幹部摘発の実績をもとに、憲法改正までして新たな「権力の私物化」を恒久化しようとしています。北朝鮮の場合は、粛清という古典的手法です。「権力の私物化」は、韓国ではもう一つ、前大統領時代に権力に批判的な文化人約1万人の「ブラックリスト」が作成された事件で、ソウル高裁は前文化体育観光相の趙允旋被告に対し、禁錮2年の実刑判決を言い渡しました。趙被告にブラックリスト作成を命じたとされる元大統領室長に対しても、一審判決の禁錮3年より重い禁錮4年が言い渡されました。もう一つの東アジア国家、日本でも、「権力の私物化」と腐敗は進行しています。安倍内閣のファシズム化のもとで、日本の「ブラックリスト」はどうなっているのでしょうか。「オトモダチ・リスト」「 安全牌文化人リスト」はできているようです。安倍晋三「側近政治」に、公正な裁きが下るのは、いつのことになるのでしょうか ?
2018.2.15[再録] 本サイトの「イマジン」コーナーに、「戦争の記憶・大正生れの歌・探索記」が入っています。2001年9.11直後に立ち上げ、ちょうど老年期に入った「大正生れ」の方々から大きな反響をえたもので、作詞・作曲者を歴史探偵したり、替え歌・別ヴァージョンを収集したりと、「イマジン」の目玉の一つでした。しかし2009年に作者の小林朗さんが亡くなった頃から、問いあわせも少なくなり、アジア太平洋戦争の「戦友会」や「大正会」という同世代の交流会も次第に消滅して、もう役割を終えたと思われ、本サイトの窓口も、最小限にしてきました。ところが平昌オリンピックのさなか、丁寧な長文のリクエスト・メールが届きました。神奈川県川崎市の91歳というSさんからで、昔、会社員の現役時代、「大正生れの歌」 を聞いて大変感動し、何とかもう一度聞きたいと思ってきたが果たせなかった。最近パソコン操作を覚えて、「ネチズンカレッジ」にこの歌についての記述があるのを見つけ、何とか曲そのものをもう一度聞けないか、というリクエストでした。幸い私の手元には、作詞作曲者の故小林朗さんからもらったSPレコードやカセットテープ版の歌があったので、これらをお送りしたところ、懐かしく、嬉しくて、涙した、という感謝感激の御礼が届きました。
この91歳Sさんのリクエストを機に、改めて「大正生れの歌・探索記(2018年版) 」 を作り、あわせてMIDI版の歌がリンク切れになっていたものを、カセットテープからmp3 版デジタル音源に転換し、iTunesで簡単に聞けるように更新しました。軍歌調で、よく戦友会でも歌われたようですが、作者の小林朗さんによれば、「大正生れ」はアジア・太平洋戦争敗戦時20-35歳の、最も犠牲の多かった世代であり、自分自身も徴兵され、多くの友人を喪いました。戦後は日中友好のボランティア活動に尽くした小林さんの、鎮魂の想いと平和の願いを歌ったものでした。改めて本サイトに歴史資料として残し、いま安倍ファシズムのもとで、ひょっとしたら甚大な被害者になりかねない「平成生れ」の皆さんにも味わってもらおう、と思います。「平成生れ 」の鎮魂歌を作らせないためには、安倍内閣の9条改憲の狙いを見定め、「平成生れ」世代に、日本国憲法の平和主義・民主主義・立憲主義の意義を、理解して貰わなければなりません。日本「本土」と沖縄米軍基地との歴史的関係を、見つめてもらう必要があります。幸い「学術論文データベ ース」の常連寄稿者・神戸の深草徹弁護士から、深草徹「「9条加憲」は自衛隊を普通の軍隊とする一里塚 — 国民は托卵を拒否する」(2018.2)という新規寄稿がありました。さっそくアップです。また、この間の私の731部隊研究の論文・講演記録等を、 昨年公刊した『「飽食した悪魔」の戦後ーー731部隊と二木秀雄「政界ジープ」』(花伝社)をもとにした1月20日第304回現代史研究会の報告レジメとパワポ原稿と共に、「ネチズンカレッジ」カリキュラム「現代史研究・専門課程5」に加えました。あわせてご参照下さい。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye4306:180304〕
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