SJJA&WSJPO【西サハラ最新情報】267 あまりに政略的なモロッコ・サッカー
- 2018年 6月 18日
- 評論・紹介・意見
- サッカーサハラモロッコ平田伊都子西サハラ
イード・アル・フィトル(ラマダン明けの祭り)は、西サハラでもモロッコでも6月15日から始まりました。 一カ月間の断食行を終えて、開放感と充実感にイスラム教徒たちは盛り上がります。 殊にモハンマドⅥ世モロッコ国王殿下は、今年2018年の祭りには派手な花火を上げるつもりで、様々に企んでおられました。 6月13日には2024年ワールドカップ開催地にモロッコが決まりそうだし、6月15日にはモロッコが勝てそうなイランとの初戦があるし、、
祭りの熱気が、西サハラ問題など吹っ飛ばしてくれると、国王殿下は信じておられたようです。
(1) モロッコ占領地・西サハラで2024年ワールドカップ?:
2018年6月11日、パリ・セント・マリティムの助役ジャン・ポール・ルコックが、FIFA会長ジャンニ・インファンティーノに次のような書簡を送った。「2026年ワールドカップ開催国に、モロッコ占領地・西サハラを含むモロッコを候補地としているのは、国際法上許されないことだ。国際親善と平和のためにあるべきワールドカップ組織委員会は、モロッコの開催地立候補を取り消すべきだ」
モロッコ王国がモロッコ占領地・西サハラに、サッカー界の援助金や湾岸諸国の支援金でスタジアムを造ろうと企んでいた。モロッコ国旗が翻るモロコ占領地・西サハラを世界に見せつけて、ここをモロッコ・サハラ確立させるつもりだったようだ。ついでにサハラ観光キャンペーンを展開し始めた。<モロッコ・サハラ砂漠ツアー>と称するビデオには、西サハラ民族衣装を着たモロッコ人が西サハラ・ベドウィン(砂漠の民)の案内人として登場している。<安全な観光地>がモロッコの売り物だそうだ?
(2) モロッコ、2024年ワールドカップ招致に失敗:
6月13日、モロッコは2024年ワールドカップ招致に負けた。招致候補者はモロッコVSアメリカ3か国(アメリカ、カナダ、メキシコ)で、60対134で負けた。「ガッカリ! 幻滅!」とモロッコのメデイアは、よもやの敗北に失望を露わにした。MWN(モロッコ世界ニュース)敗北記事の中では、「我々に投票すると約束していたギネアとレバノンが、最後の瞬間に裏切ってアメリカ勢に入れてしまった。アメリカ勢とサウジアラビアの圧力に負けてしまったんだ。悔しい!、、投票直前の圧力は酷い」と愚痴ばかり。そして未練がましくMWNは、「サウジアラビアは投票前の6月11日と12日に、2026年ワールドカップ開催国をアメリカ勢にするようにと、クウェート、バハレーン、ナムビア、南アフリカ、リベリアを含む諸国を脅かした」と、投票前の取引をフェアーでないと非難した。が、そう言うモロッコこそ、アフリカ諸国やアラブ諸国の票集めにモロッコ手段を選ばずやっていたのだ。そして、裏約束を取り付けた諸国に裏切られ、投票に負けた。
(3) くじけるなアトラス・ライオン:
「朕は、選手とコーチ全員に、エールを送る。勝利を勝ち取るように祈っている。この重要な国際試合に出場しているナショナルチームを全面支援する」と、モロッコ国王陛下は6月13日に、ロシアに入ったモロッコサッカー選手団のハーヴェ・ルナード・コーチとメフディ・べナティア・キャプテンに電話をして、喝を入れた。
喝が効きすぎてアトラス・ライオンと異名を取るモロッコ・ナショナルチームは、6月15日の初戦に0対1で負けた。相手は、♠米大横領に忖度してモロッコが国交を絶った、イラン・ナショナルチームだった。パワハラなんぞにくじけちゃいけない、アトラス・ライオン! 6月20日にはポルトガルの強者たちが、6月25日にはスペインの強者たちが競技場で待っている。両者は初戦を3対3で引き分けている。
モハンマドⅥ世国王陛下のサッカー国策方針は、国連報道室も襲った。世界の悲惨な紛争が議論されている最中、唐突にモロッコ人記者が、「モロッコ。ポルトガル戦を国連事務総長が観戦するそうだが、どっちを応援するのか?」と、しつこく二日間にわたって質問した。報道官から、「モロッコ」という文言を引き出し、国連がモロッコ寄りであるようなムード作りを試みたようだ。モロッコ・サッカーは西サハラ問題にすり替えられようとしている。モロッコ大使オマル・ヒラールは6月11日の国連脱植民地化委員会で、「2015年、モハンマドⅥ世国王陛下は南サハラ(モロッコ式西サハラ呼称)に、8,000憶円もつぎ込まれた」と、語った。
「モハンマドⅥ世国王陛下が、2030年ワールドカップ招致をご決意されたことは、誠に喜ばしい。サッカーはモロッコの政治と経済を発展させる牽引力となっている。国王陛下の御名の下に、モロッコと世界のサッカーが、さらにさらに栄えることとなるのは間違いない」と、モロッコ・ワールドカップ招聘委員会委員の一人モンセフ・ベルハヤトが、6月15日のBBC英国TVで、次々々ワールドカップにモロッコが立候補したことを明らかにしました。 随分と気が早い、、というか、焦っておられるようですね、、
追伸:西サハラの人々に会いたい方は、ユーチューブの「ラストコロニー西サハラ」で検索するか、下記のアドレスにアクセスしてください。
Youtube URL:https://youtu.be/yeZvmTh0kGo (日本語版)
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2018年6月18日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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