本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(208)
- 2018年 11月 15日
- 評論・紹介・意見
- 本間宗究本間裕金融
通貨堕落のメカニズム
著名な経済学者である「ケインズ」は、「既存の通貨制度は、約50年に一度崩壊し、この要因となるのが、通貨の堕落である」と考えていたようだ。そして、この点については、私自身としても、たいへん共感するものがあるが、実際には、「1971年のニクソンショック」以降、「信用本位制」という「新たな通貨制度」が世界的に採用されたものと考えている。また、今回、気付かされたことは、「金融システムが常に膨張し、最後には、発散過程を迎える」という事実に関して、たいへん興味深い「メカニズム」が存在する可能性でもあった。
具体的には、「金融システム」を構成する要素として、「民間企業と個人」、「民間金融機関」、そして、「中央銀行」が存在するものと考えている。そして、「どのようにして通貨が創造されるのか?」という「信用創造のメカニズム」については、基本的に、「不良債権は、どのようにして発生し、拡大していくのか?」という「通貨の堕落メカニズム」と深い関連性が存在するものと想定されるのである。
ただし、今回の「信用本位制」においては、「民間金融機関」と「中央銀行」との間に、「オフバランスで取引されたデリバティブ」が存在するものと考えている。そして、この点に関して、「1990年の日本株と土地のバブル崩壊以降、どのようにして、不良債権が引き継がれていったのか?」を考えた時に、「より巨大な組織が、自己のバランスシートを膨張させながら、不良債権を引き受けていった構図」が見えてきたのである。
つまり、「民間企業と個人の不良債権」については、その後、「民間金融機関」が引き受けたものの、その後は、「1997年から1998年にかけて、世界的な信用収縮が発生した展開」となったのである。そして、その後に発生したのが、前述の「デリバティブのバブル」であり、前述のとおりに、「2008年前後に約8京円」という規模にまで膨らんだのだが、「2008年に発生したリーマン・ショック」については、「デリバティブの大膨張がピークを付けた」という事実に対する「警告」でもあったようだ。
また、この時に、もっと注目すべき問題は、その後、「先進各国の中央銀行が、自己のバランスシートを大膨張させながら、デリバティブのバブル崩壊を吸収しようとした事実」でもあったが、今後は、「8京円のデリバティブ」から発生する「不良債権」を吸収するために、「今後、どれほどの紙幣が増刷されるのか?」という「一点」に、世界的な金融問題が凝縮されたようにも感じている。(2018.10.12)
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政策転換の催促相場
2018年9月に、「日経平均」は約27年ぶりの高値を付けたが、その翌月には、「世界的な株価の急落」に見舞われた。そして、この原因としては、「世界的な金利上昇」や「米中の貿易戦争」などが指摘されているが、私自身としては、このほかに、「政策転換の催促相場」が指摘できるものと感じている。つまり、このことは、「政策に問題や行き詰まりがある時に、株価の下落などで指摘される状況」とも言えるようだが、実際には、以前の「民間銀行への資本注入」や「日銀による資産買い付け」などの時に、何度か経験したことも、人々の記憶に新しいものと考えている。
そして、「今回は、どのような政策転換が催促されたのか?」が、最も注目すべき点だと思われるが、私自身としては、「デリバティブ」と「中央銀行のバランスシート」の関係性が指摘できるものと感じている。具体的には、「2008年前後のピーク時」に「約8京円」という規模にまで膨らんだ「デリバティブ」が、その後、「量的緩和」などの助けを借りて「約6京円」という規模にまで縮小した状況のことである。
より詳しく申し上げると、「1998年から2008年」までの期間に、「デリバティブの大膨張」が発生し、その結果として、大量の「コンピューターマネー」、あるいは、「デジタル通貨」という「信用本位制の本位通貨」が創られたのである。しかし、その後の展開としては、「100年に一度の大事件」といわれた「リーマン・ショック」により、「デリバティブの収縮」が始まったものと想定されるのである。
そして、この時に用いられたのが、いわゆる「量的緩和(QE)」と呼ばれる金融政策であり、実際には、「中央銀行のバランスシート」を大膨張させることにより「デリバティブのバブル崩壊」を隠す動きだったものと考えている。具体的には、「約10年」という期間にわたり、「超低金利政策」が実施されるとともに、「先進各国の中央銀行が、大量の国債を買い付けた」という状況だったが、現在は、今までの手法に限界点が訪れたものと想定されるのである。
つまり、「当座預金を増やしながら、国債を買い付ける」という「日銀が取ってきた手法」に限界点が訪れた結果として、「金利の抑圧」が難しくなってきたものと考えている。そのために、今後は、「日銀のバランスシート」を膨張させる手段として「紙幣の大増刷」しか残されていないものと思われるが、今回の世界的な株価の下落は、この政策転換を催促するものだったようにも感じている。(2018.10.12)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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