中間選挙後のトランプ外交(1) - 米中冷戦本格化、イラン制裁で「一石二鳥」中間選挙後のトランプ外交はさらに硬化 -
- 2018年 11月 15日
- 時代をみる
- アメリカトランプ伊藤力司
米中間選挙の結果、連邦下院では野党民主党が与党共和党を逆転して過半数を占め、上院ではこれまでの多数派共和党が議席を増やして優位を保つことになった。トランプ大統領は上院の結果を誇大に評価して「大勝利」と自賛したが、下院で共和党が少数派に転落したことはトランプ大統領の敗北というのが実態であろう。
下院は上院に先駆けて連邦予算を審議す仕組みになっているから、トランプ政権が望む予算を通すことは難しくなる。トランプ氏が年来叫んでいる、移民封じのためのメキシコ国境の壁づくりの予算を通すことは、ほぼ絶望的になった。トランプ大統領は中間選挙後初の記者会見で民主党に協力を呼びかけたが、来年1月3日に発足する新下院多数派の民主党が大統領の呼びかけに協力するとは考えられない。
しかしアメリカ政治の仕組みでは、外交はいわば行政府の専権事項であって、議会がホワイトハウスの個々の外交活動に介入することはない。したがって「アメリカ・ファースト」つまり「アメリカ・エゴイズム」丸出しのトランプ外交はこれまで通り、あるいはこれまで以上に強硬かつ独善的に展開されるだろう。
当面の焦点は、関税の引き上げ合戦で火を噴いた貿易戦争に象徴される米中冷戦の激化である。マイク・ペンス副大統領は去る10月4日、ワシントンのシンクタンク「ハドソン研究所」で90分にわたって講演し、「邪悪な中国共産党との対決」を米国民に呼びかけた。この講演は入念に準備された内容で、中国が対米浸透工作を通じて中間選挙に介入して政権転覆を図ったと非難するなど、トランプ政権の対中国「宣戦布告」との声も出たほどだ。
その主な内容は▼米国の2017年対中貿易の赤字は3750億ドルで全赤字の半分近くを占める▼「Made in China」2025」計画により、官民挙げて米国の知的財産を獲得し、ロボットやバイオテクノロジー、AIなど世界の先端産業の90%支配を目論む▼米国企業を買収することで先端的な武器の設計図などの技術を盗む▼陸海空、宇宙における米国の軍事的優位を脅かす。西太平洋から米国を追い出そうとする▼中国指導者は南シナ海を軍事基地化しないと述べたが、人工島に対艦・対空ミサイル基地を建設した▼米国は中国との良好な関係を望むが、中国は経済的な攻勢を緩めず、軍事力の強化につなげてきた-など。
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