始まった参院選に向けての野党共闘 ― 市民連合と5野党1会派
- 2018年 11月 19日
- 評論・紹介・意見
- 弁護士明文改憲.澤藤統一郎選挙協力
改憲派にとっては、「アベのいるうち、両院の議席が3分の2あるうち」が改憲のチャンスという認識。ということは、「アベが首相の座から去ることになれば」、あるいは「衆参どちらかの議院で改憲派議席が3分の2のラインを失えば」、千載一遇のチャンスは喪失することになる。いま、アベ9条改憲の策動による憲法の危機ではあるが、改憲派にとってもけっして明るい展望が開けているわけではない。
右派が描いたアベ改憲シナリオは綻びを見せつつある。国民世論の動向が、改憲を優先課題と認識していないからである。このことが、改憲を軸とした野党の共闘を促しているし、与党内にもアベ改憲に冷ややかな空気を漂わせてている。
憲法改正の課題ばかりは、議会での審議を強行採決で乗り切ろうというアベ政権の常套手段は使えない。そのあとに国民投票が控えているからだ。国民大多数の意見の集約点を国会審議で見極めなければならない。しかし、今国民は、「現政権での改憲には反対」なのだ。だから、改憲勢力も展望を持てない。客観的に改憲は困難なのだ。
アベ改憲がもとより困難なのだから、当初のシナリオのとおりにはことが運ばない。だから焦りが出て来る。その焦りが下村博文の自民党・憲法改正推進本部長への登用。こんな、焦りの結果のタカ派人事でうまく行くはずがない。下村は、「職場放棄失言」でボロを出した。政権と下村の焦りが裏目に出たのだ。かえって、野党を硬化させ臨時国会での憲法審査会開催を困難にしている。
しかも、下村の失態に対する公明党の冷ややかさはどうだ。いま、国民から改憲加担勢力と見られては選挙に勝てないとの思惑が強いのだ。自民党内も、下村に冷たい。アベの求心力低下を思わせる。
アベ改憲実現のためには、今臨時国会で憲法審査会を開き自民党改憲案の提示くらいはしておくことが改憲のためのシナリオだったがそれができない。とすれば、来年6月公示7月投開票の参院選前に、国会が改憲発議をすることは絶望的といってよい。となれば、2019年参院選こそが改憲阻止の重要なキーポイントとなる。半数の改選だが、これで改憲勢力の議席を3分の2以下にすることができれば、当面の改憲の危機を回避できることになる。
9月の沖縄知事選の教訓が大きい。野党の共闘ができれば、「自・公・維(・希)」の改憲勢力に勝てるのだ。安倍政権の露骨な利益誘導の総力戦も民意を動かせなかったではないか。アベ政権、けっして見掛けほど強くはない。
参院選ではいつものことだが、一人区の野党共闘の成否が結果を分けることになる。その一人区は32。いずれも、アベノミクスの恩恵からは置いてけぼりだ。TPPも、農業改革も水産改革も、この一人区では極めて評判が悪い。アベ政権の人気は地に落ちている。むしろ、怨嗟の声か満ちている。スムースな形での野党共闘さえできれば、勝算十分だ。現在の世論動向は、各政党を「与党連合対野党共闘」の対決構図に巻き込まざるを得ない。どちらかの陣営に入る以外に、一人区での当選の目はないのだから。
せっかくの勝機。共闘の協議開始時期としてはもうぎりぎりではないか。具体的な共闘のあり方の協議と候補者の選定を始めなくてはならない。
改憲勢力である与党連合とは「自・公・維」のこと。そして共闘に加わる野党は、立憲民主党・国民民主党・日本共産党・自由党・社会民主党・無所属の会の5党1会派。なかなか難しい野党のとりまとめを買って出ているのが、市民連合。これが、「市民と野党の共闘」の具体的な構図。
一昨日(11月16日・金)、「立憲野党と市民連合の意見交換会」が開催された。
意見交換会参加者は、下記のとおり。
立憲民主党 福山哲郎幹事長・辻元清美国対委員長
国民民主党 平野博文幹事長・小宮山泰子衆議院議員
日本共産党 小池晃書記局長・穀田恵二国対委員長
自由党 森裕子幹事長・日吉雄太国対委員長
社会民主党 吉川元幹事長
無所属の会 大串博志幹事長・広田一国対委員長
同日のTBSニュースは、次のように伝えている。
https://news.tbs.co.jp/newseye/tbs_newseye3526461.html
《野党と市民連合が意見交換、来年の参院選に向け選挙協力を確認》
立憲民主党など主な野党と、安全保障関連法などに反対する団体「市民連合」が会談し、来年の参院選に向け、選挙協力を進めることを確認しました。
「前回の参院選挙の前に、やはりこの市民連合と政党との意見交換が大きな役割を果していただいた。来年の参院選挙に向けて、より具体的、建設的な意見交換が出来るようにお願いをしまして」(立憲民主党 福山哲郎 幹事長)
立憲民主党など野党5党1会派の幹事長らが、「市民連合」のメンバーと会談し、来年の参院選挙に向けて、全国に32ある「1人区」で野党の候補者を一本化することなど、選挙協力を進める方針を確認しました。市民連合は、2016年の参議院選挙でも1人区における野党統一候補擁立を後押ししていて、立憲民主党などは、来年の参院選でも候補者の調整で市民連合に仲介させたい考えです。
しかし、無所属の会の岡田代表は16日、記者との懇談で、「市民連合が重要なプレイヤーであることは間違いないが、基本は政党がしっかり主導しないと候補者は出てこない」と述べています。
一方、これまで安全保障や憲法についての考え方の違いなどから出席を見合わせていた国民民主党は、初めてこの会談に出席しました。
また、市民連合自身は、こう報告している。(抜粋)
はじめに立憲民主党福山幹事長より挨拶がありました。
「財務省の文書改ざん、加計学園問題、防衛省の日報隠しといったことで国会が大紛糾している最中に、前回の市民連合との意見交換会が行われました。半年が経った今、安倍政権は臨時国会で入管法改正を無理やり採決しようとしており、その体質は全く変わっていません。一方で、9月には沖縄県民の皆さんの力と、市民の皆さん、そして政党の皆さんの力の中で、玉城デニー知事が当選しました。安倍政権の体質が全く変わらず、民主主義を壊し続けているという状況の中で、今日このような形で集まれたことはとても意義が深いと思います。また、国民民主党の平野幹事長にお越しいただきました。我々としては歓迎させていただきたいと考えております。安倍政権を倒すために、来年の参院選に向けて、より具体的かつ建設的な意見交換をしていきたいと考えています。」
続いて安全保障関連法に反対する学者の会・広渡清吾より挨拶がありました。
「前回の参院選では、野党と市民の努力により32全ての1人区で候補者の1本化が実現し、大きな成果をあげました。来年の参院選に向けて、この水準を後戻りしてはならないと強く思っています。先日『あたりまえの政治』を掲げ、街頭宣伝を行いました。『あたりまえの政治』を求めなくてはならないというのが、今の安倍政権が陥っている状況です。憲法を守る、民意を尊重する、嘘をつかない。このあたりまえのことができない政治を変えなければなりません。そのためにも立憲野党の皆さんと市民との協力を深めていきたいです。」
さらに、立憲デモクラシーの会・山口二郎より安保法制の廃止、改憲阻止、さらに今の日本政治が直面するいくつかの重要な課題について、前回と同様に政策合意を何らかの形で結び、共通の旗印としていきたいといいう提起がありました。
その後、立憲民主、国民民主、共産、自由、社民、無所属の会の各党・会派と、市民連合の各構成団体から、幅広く意見交換が行われ、参院選に向けて市民と野党の協力をさらに強く深めていくことが確認され、意見交換会は終了となりました。
市民連合は、11月28日(水)19時から王子・北とぴあにて、野党とのシンポジウムを開催予定です。私たちは、このような機会を通じて、参院選に向けた協力体制をさらに深化させていきたいと考えています。ぜひご参加いただけますと幸いです。
共闘は容易なことではない。しかし、共闘しなければ選挙に勝てない。選挙に勝てなければ、アベ改憲を阻止することができない。アベ改憲を許せば、この国の平和主義が不可逆的に崩れる。憲法政治に取り戻すことのできない疵がつく。憲法を擁護しようとする諸勢力には、来夏の参院選に向けて選挙共闘するしか途はない。
(2018年11月18日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2018.11.18より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=11512
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
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