中国擁護のわけ その8/中国擁護のわけ その8-2
- 2018年 11月 21日
- 交流の広場
- 箒川兵庫助
「新疆の文化保護と発展」白書が公表されたことを歓迎する。今年に入ってから中国批判が高まっている。アメリカ上・下院や人権観察団体が一斉に新疆地区における人権無視政策を批判しだした。閉鎖されたというモスクに国旗を掲げる写真を見たが,そんなことはないだろう。合成写真であると思われる。しかしまさかの真坂があるかもしれないから,F. W. Engdahl氏は『中国のウィグル問題 – 言及されない側面』(2018年10月5日)で,中国政府に対して実際はどうなっているのか現状を説明するよう求めた(サイト「マスコミに載らない海外記事」)。小生は,BBCやBloombergの映像とテロップがおかしい上に,広大なウィグル地区を第三者が調査するのは経済的にも時間的にも困難であるから,中立機関を通して,いわれなき人権侵害批判に応えるよう中国政府に身の潔白を求めた。
その甲斐があってか,人民網日本語版( 2018年11月16日)によれば,国務院新聞弁公室は15日「新疆の文化保護と発展」白書を発表した。その白書は「1.序文」「2.新疆各民族の文化は中華文化の構成部分」「3.広範に使用される各民族の言語・文字」「4.尊重され保護される宗教文化」「5.文化遺産の保護と継承の成果」「6.発展し続ける文化事業と文化産業」「7.日増しに活発化する対外文化交流」から成る。
この白書から,強制収容所や教育再生キャンプに300万が収容され,拷問されるか強姦されるか,とにかくひどい扱いを受けているという結論は容易には導けないだろう。同様にして新疆の町の隅々には監視カメラが常設され,GPSチップを埋め込まれ人々の行動は全て監視されているということも結論されないだろう。またある批判はウィグル人全員のDNA血液標本が調べられているという。しかし日本においても成人病検診があり血液検査が実施されているが,それが厚生省や政府や情報機関に「密かに」集められていないという保証はない。監視カメラCCTVもコンビニや銀行など我が国にも至る所に設置され,個人の肖像権はなくなってすでに久しい。つまり新疆特有ではないだろう。もし拷問を問題にするなら,アル・グレイブ収容所やグアンタナモ刑務所で無辜の民を拷問してきた米国こそ人権侵害のお手本だろう。アメリカ軍がやったことを新疆に当てはめているものと推認される。
他方で全米民主化基金なる政府系機関が人権観察団体HRWなどに資金を提供して新疆地区を不安定化している。VTRでも盛んに中国政府による人権弾圧批判を繰り返している。英語はもちろんロシア語まで動員している。2017年まではウィグル自治区に関するVTR(YouTube)は楽しいものであったが。
その意味で中国政府がこの白書を出したことには意義がある。地方役人が北京政府の目を盗んで私腹を肥やすことはあってはならないが,あまりにも北京とトルファンやホ-タンなどの地方都市との文化の落差はありすぎる。VTRでは例えばカシュガルは旧市街がきちんと保護・保存されている。昔のままである。
しかし新市街の発展は著しく交通量もたくさんある。旧市街と新市街の調和を図ることも白書には求められていると思う。なぜなら,どこの国の都市も乱開発,再開発がなされ,昔の面影を残していないからである。例えば築地市場。都の役人たちが外国(イタリア?)まで出かけて行って調査し,魚卸の人たちと一緒に築地を造ったのである。今のように2年ごとに職場が変わる役人が造ったのではない。タ-レから振り落とされる事故などあり得なかった築地市場が閉鎖されたら何ができるのであろうか。
自動車の乗り入れを禁止したヴエネツイアやインドのタ-ジ・マハ-ルの町を思い出すが,現在新疆地区ではイスラム過激派によるテロ行為が問題になっている。米国のCIAなどが操っていると言われており,またウィグル出身の過激派テロリストがシリアに5、000人以上もおり、米国特殊部隊によって戦闘訓練されていると聞く。その大部分が新疆に戻りテロを起こすことが予想される。警戒は厳重を極める必要があろう。
しかし過度の検査・取り締まりはあってはならないだろうと思う。過激派テロリストとて同じムスリムであるから爆弾や機関銃をもってモスクに入るとは考えられない。ウィグル人は同胞であり,これまで問題なく生活してきた仲間である。またイラクのようにシ-ア派やスンニ-派の対立があるわけではないだろうからだ。
むしろ国境越えを監視強化すべきであろう。もちろんヒマラヤ山系の出入りを全て監視することはできない。2009年のようなデモがあるかもしれないが,多くの人民,ムスリムはテロに賛成ではないだろう。山羊を飼い,牛を売り馬を乗りこなす。ラグ麺も造り食べる。釜土にパンと塩の塊とを焼きつける。絨毯を織り彼らは昔ながらの生活がしたいのだろう。これ以上の貧富の差は彼らにとって好ましくないだろう。
人権観察団体HRWの支部が新疆にもあるようだから,好ましからざるNGOなどは国外退去させるべきだろう。これからの新疆政策には難しい面が多々あるだろうが,トルファンや烏魯木斉や喀什などの古き良き文化をいつまでも残してほしいと,異国の空より願っている。
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