中国擁護のわけ その9-『新疆ウイグル人の話を聞く』を拝読して-
- 2018年 12月 1日
- 交流の広場
- 箒川兵庫助
2018年11月28日付の,岩田昌征千葉大名誉教授の『新疆ウイグル人の話を聞く』を拝読した。明治大学でも新疆ウィグル自治区の強制収容所の話を扱っているという岩田教授のご紹介に初めに感謝申し上げたい。
中国政府批判は以前からあり,例えば法輪功や黄色の雨傘運動やウィグル人批判等があった。香港での雨傘運動の指導者はCIAから活動資金を得ていたことを白状している。そういうことは拙文「中国擁護のわけ その1~その8」で述べたので繰り返さないが,新疆自治区の問題を整理しておきたい;
1.中国共産党の支配する中国がいかに独立を確保するか。台湾へ逃げた蒋介石軍を支援しながらCIAが二千名の兵士を共産党軍殲滅に送り込んだが失敗した事実はあまり知られていない。2.ところで中国共産党の政府を「国家」として最初に認めたのは旧ユ-ゴスラビアである。ニクソン-キッシンジャ-による米中接近まで中国は独立の承認を渇望していた。3.CIAの野望はその二人によって砕かれた。一方でCIAは石油・ガスに注目し,例えば旧ソ連の石油が20世紀末までには枯渇するだろうと80年代に予測していた。4.シリア侵略はカタル国による石油パイプ管敷設要望をシリアが拒否したので,サウジやCIAやMI6らがシリア侵略を謀った。その手先がISIS。5.露・土間のガスパイプ管が今月完成した。6.ブルガリアはガス管建設をCIAの脅しにより断ったので,ロシアはトルコまで管を敷いた。 7.CIAはロシアを潰すべく中国叩きを強化した。中国が不安定化され,国がバラバラになれば東トルキスタンの独立問題ではなくなり,中央アジアに米軍基地がたくさんできるだろう。シリアには現在米軍基地が20ほどあるが,ロシアに・u桙ニって歯舞・色丹島に米軍基地ができる事と同じく受け入れらない。8.シリアには現在ウィグル出身の過激派が五千人強いる。ウィグル過激派は,米英特殊部隊によって訓練されている。将来彼らが新疆に戻ってきた場合,新疆自治区がシリア化し,内戦となるだろう。それは民族自決とは直接に関係しない。CIAはロシア包囲網を完成させるために東トルキスタン独立運動を利用して中国を不安定化しようとしている。9.小生は約30年前新疆ウィグル自治区を訪れたことがある。それ以前から石油を求めての西部大開発が叫ばれていた。新疆は貧しかったがそれなりの豊かな生活があり餓死者は出ていなかった。しかもマラリアや天然痘はすでに根絶されていた。しかし新疆地方政府が北京政府に提出する文書は中国語であるから,ウィグル人は容易に役人になれず,貧富の格差は増大した。不満が出てくるのは自然の理であろう。そこにウィグル過激派テロ集団とCIAが付け入るスキがある。10,一番最初に中国を承認した旧ユ-ゴはNATO軍の餌食になった。ユ-ゴの人々は異なる民族や宗教が入り乱れていてもそれなりに平和に暮らしていた。しかし「民族浄化」が行・u桙墲黷スなどと難癖を付けられてユ-ゴは崩壊した。イラクもソマリア・u桙焜潟rアも米英仏軍を中心とした連合軍に国を荒らされた。北京政府が無法者国家=米国への対応を強化しても不思議ではない。今日の「ジェノサイド」はユ-ゴの「民族浄化」である。11.今年に入ってから急に,米国議会や国連等で中国の人権侵害が取り上げられるようになったがそれはなぜか。全米民主化基金やUSAID政府機関は人権活動団体やアムネスティ-等に活動資金を出している。小生は北京政府を必ずしも信用しないが,ジョ-ジ・ソロスや民主化基金から財政支援されている団体を常に信用しない。ウクライナの非合法政権を造ったのはソロスのNGOであり,オバマの国務次官補ヌ-ランドが予算消化した50億米ドルである。米政権による政府・政権転覆政策という観点から中国包囲網を眺めると,南沙諸島の自由航行作戦やインド・太平洋構想あるいは韓国へのTHAADミサイル網配備そしてチベット・新疆自治区不安定化は戦略として筋が通っている。
北京政府が恐れているのは国の独立が再び脅かされる事態である。シリアは破壊され,旧ユ-ゴは存在しない。
追記: 小生が注目するのは,例えばカシュガルの新市街と旧市街ではなくて,その中間の市街が北京を向くか,旧市街の伝統に向くのかである。また電脳網(インタ-ネット)で買い物をするのか,便利さを嫌ってこれまでの生活を続けるのかどうか。中国人の60%がカ-ド決済で現金を使わないそうだが,電脳網システムはお店で品物を買い物籠に入れただけで売買決済が行われる時代に突入している(顔認識)。
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