日本国憲法を大切に思う有権者は、けっして維新に投票してはならない。
- 2019年 7月 6日
- 評論・紹介・意見
- 明文改憲.澤藤統一郎維新
いよいよ参院選に突入である。日本国憲法の命運にかかわる選挙戦。本日(7月5日)の各紙は、「安倍政権を問う」「改憲3分の2が焦点」「争点は、年金・増税」とほぼ共通している。
驕る平家は久しからず。長すぎるアベ政権の綻びは明らかで、有権者はウンザリのはずなのだが、アベは、「政治の安定」を売り物としての延命策。なんという開き直りよう。なんというふてぶてしさ。なんという図々しさ。
ところで、多くの政党・政派が有権者の支持獲得を競っているが、各政党は一本の物差しの所定の目盛りに位置している。大雑把にいえば、最も右に自民党が、最も左に共産党が位置して、その中間にそれぞれの政党が、あるいは自民寄りに、あるいは共産寄りに、ふさわしい位置を占めている。
本日の朝日が、これを図示している。「朝日と東大谷口研究室」の共同調査による、「候補者 読み説く」という記事。いくつもの指標で、13もの政党の立ち位置を図示しているが、最も目を惹くのは、憲法改正に関する各党の積極度。
常識的には、改憲積極派の最右翼が自民党で、その対極の積極護憲派の位置に共産党がある。その両極の間の自民寄りに公明党、共産党寄りに立憲・国民などがある。この常識は、大きな間違いがない。
ところが、朝日の改憲度物差しの図示には、驚くべきことがある。右翼自民よりも、さらに右に位置する政党がある。なんとそれが維新なのだ。維新こそが自民党を凌ぐ積極改憲派なのである。
念のため、《改憲派⇔護憲派》の位置関係を順に並べてみると、次のとおり。
維新・自民・公明・国民・立憲・れ新・共社 の順となる。
そして、自民と公明の間は、かなり大きく開いている。ここに、紛れもない右翼の「N国」や、何ものかよく分からない「安楽死の会」などの諸派が入る。
なるほど、維新と共産。これは改憲・護憲軸の両極端、水と油なのだ。そういえば、最近維新が共産に絡む事件が目につく。取りようによっては、維新の自民党への媚びであり、すり寄りの手段のようでもあるが、本来この両党は本質的に相性が悪いのだ。
通常国会閉幕直前の本年6月25日、野党4党1会派が、共同で衆院本会議に内閣不信任案を提出した。これに、維新は反対に回り、足立康史が反対討論をした。足立が登壇すると、与党席から拍手が起こったという。
足立の演説は驚くべきものだった。アベ内閣が国民の信任に値するものであるか否かの、メインテーマには直接触れずにこう述べ、その行動の基準が、反共にあることを明言したのだ。
「念のため申し上げますが、私たち日本維新の会は内閣不信任決議案に反対と申し上げたのは、別に自民党や公明党と行動を共にしたいからではなく、共産党と同じ行動を取るのが、死んでもいやだからであります!」
通常国会閉会後の6月30日、ドワンゴとヤフー共催によるネット党首討論で、維新の松井代表と、共産党の志位委員長との間に、こんなやり取りがあった。
https://www.youtube.com/watch?v=Wdm4c7NCqlc
司会:松井さん、お願いします
松井:今、消費増税のお話がありました。これはもう、他の政党の皆さん、そうなんですが、2011年復興増税の折には増税の負担を国民の皆さんにお願いする限り国会議員が、すべての国会議員で身を切る改革をやろうと。ということで、いっとき2割カットがスタートしたのに、今は元に戻ってしまっております。
まず国民の皆さんに負担をお願いするのなら、自分たちが自分たちの身分を見直すべきだと思いますが、志位さん、どうでしょうか。
志位:あの、私たちは消費税を国民に押し付ける代わりに自分たちの身を切るというのは、これは理屈が違うと思います。身を切れば増税を押し付けていいんでしょうか? そんなことにはならない。ただ、私たちはたとえば、政党助成金、317億円。これ、各党が取っているわけですが、松井さんのところもたくさん貰っていると思います。
松井:いや…、活動経費に…(聞き取れず)
志位:これ全部返上したらいかがですか? 私たちは廃止を求めておりますし、私たちは受け取っておりません。まず身を切ると言うんだったら、まずそこから取り組んだらいかがですか?
松井:いや、それは…
7月3日、日本記者クラブ主催「党首討論会」でもこんな場面があった。
https://www.youtube.com/watch?v=DQgu5yni7rI
松井:前の総選挙のときの党首討論で、国会議員が領収書なしでもらえている文書通信交通滞在費は見直すべきだ、せめて領収書公開しようと提案したとの話があり、「その折、志位さんはやるといったが、あれからもう2年が経過している。今のところ、知らぬ存ぜぬで、これはまったく実行されていない。志位さんの公約というのはそういう軽いもんなんでしょうか」
志位:共産党ウオッチャーで有名な松井さんがご存じないというのは驚きましたが、私たちはホームページで、文通費の使途をすでに公開しております。公表した通り、文通費の趣旨を踏まえて活用し、人件費と選挙には使っておりません。会計処理はすべて、領収書と伝票に基づいて行い、領収書と伝票を保管しており、ルールができればいつでも提出する用意はあります。
…領収書、私、維新の会についてちょっと調べてみたんですが、ここに持ってきた杉本和巳議員の使途報告書は、100万円の文通費の全額を杉本議員自身が支部長を務める政党支部に入れており、領収書はこの2枚付いておりますが、領収書を発行したのも杉本議員、領収書を受け取ったのも杉本議員、何に使われたのかはまったくのブラックボックスです。この使途が何かが大事なのであって、使途を公表して初めて公表したといえるのではないでしょうか。
この問題についてもう一言申し上げますと、先ほど「身を切る改革」ということ議論になりましたが、そんなに身を切るのがお好きなら、政党助成金を返上したらいかがと、私は思います。
こういうのを、みごとな「切り返し」「返り討ち」というのだろう。あるいは、「効果的逆襲」「ブーメラン効果」「ツケが回る」「形なし」「ぐうの音も出ない」「身から出た錆」…。維新には党首の発言にファクトチェックの助言をする態勢がないのだろうか。いずれにせよ、憲法を大切に思う有権者は、けっして維新に投票してはならない。
(2019年7月5日)
初出:「澤藤統一郎の憲法日記」2019.7.5より許可を得て転載
http://article9.jp/wordpress/?p=12920
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8790:190706〕
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