続報:『週刊金曜日』9月6日号「歴史と日韓」特集の東郷和彦氏のインタビューについての私の投書に返事(10月4日の投稿)がありましたが、私の問いへの返答にはなっていませんでした。
- 2019年 11月 2日
- 評論・紹介・意見
- 「ピースフィロソフィー」乗松聡子
『週刊金曜日』9月6日号「歴史と日韓」特集の東郷和彦氏のインタビューについての私の投書に誠実な対応を求めます。
の続報です。この投稿の内容は上のリンクに行ってほしいですが、内容を簡単に繰り返すと、『週刊金曜日』9月6日号24-25頁の「東郷和彦さんインタビュー 理想の新時代を表す新協定の提案があれば真摯に話し合うべき」の中で、6月19日に韓国政府が「日韓の企業が自発的に基金をつくって勝訴が確定した原告に賠償相当額を払う」との提案について、「65年協定の違法性を根拠とする提案」と東郷氏は言っているが、それについて、私は、韓国政府が1965年の「日韓請求権協定」を否定してはいないし、事実と違うのではないか、違うのなら訂正して欲しい旨の投書を出して、10月4日号に掲載されました。
その後、10月18日号の投書欄60頁には東郷氏の投書が出ており、私の問いにはこう返事しています。
一方、韓国政府が行った提案は、確定判決被害者に慰謝料該当額を支給することとなっています。この確定判決とは、韓国大法院判決(18年10月30日)を指しています。
この判決要旨は次の通りです。〈日韓請求権協定の交渉過程で、日本政府は植民地支配の不法性を認めず、強制動員被害の法的賠償を根源的に否定した。(略)こうした状況で、強制動員の請求権が協定の適用対象に含まれたとは言い難い〉(共同通信)
つまり、植民地支配の不法性を認めていない65年協定に問題があることを理由に原告勝訴の判決を出しています。
つまり、そういう理由で出された判決を基礎とする基金を、日本政府としても支持はできないだろうと考えたわけです。
東郷氏は、大法院が「植民地支配の不法性を認めていない65年協定に問題があることを理由に原告勝訴の判決」を出したと解釈していますが、その解釈でも、「6月19日の韓国による基金案が、65年協定の違法性を根拠としていた」という証拠にはなりません。
そもそも私の問いは、「6月19日の韓国の基金案は65年協定の違法性を根拠としていた」という事実があったのかどうかということを聞いているのであり、唯一それを証明できるのは、そういう事実があった、つまり韓国政府がその時そういう言明をしたという証拠が存在するときのみです。そのような言明を韓国政府がその時したという事実が出せないのなら、これはやはり誤りということになります。
私がこの点にこだわったのは、この表現が、韓国政府が、当時、独裁政権だったにせよ、そのときの政府が正式に調印した国際条約を今になって「違法だった」などと言っているなどという濡れ衣を着せていることと同じであり、そのような事実はないのだったらしっかり「ない」と認めて、その濡れ衣を晴らしてもらう必要があると思ったからです。
この同じ号の66頁「金曜日から」というコーナーでは、編集者の伊田浩之氏が、私の投書に応えるということで文を載せていますが、私の投書の他の部分にコメントしつつも、肝心の上記の問いには一切触れていませんでした。
なので結論としては、東郷氏も伊田氏も私の問いには答えられなかった、つまり、韓国政府が6月19日に、「65年協定の違法性を根拠」として基金案を出したという記述が事実である、と証明できるソースを示せなかったということです。
『週刊金曜日』には引き続き、この部分は事実ではなかった、との訂正を求めます。
乗松聡子
初出:「ピースフィロソフィー」2019.11.01より許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.com/2019/11/blog-post.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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