カルチャーの執筆一覧

二十世紀文学の名作に触れる(55) パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』――二十世紀最大の大河ロマン

著者: 横田 喬

 1960年にノーベル文学賞を受けた旧ソ連の作家ボリス・パステルナーク(1890~1960)の代表作は『ドクトル・ジバゴ』だ。第一次世界大戦とロシア革命という波乱万丈の時代を背景に、無類に個性的な医師ジバゴと薄幸の美女ラ

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『自由の現実化こそ理性の絶対的目的である—若きヘーゲルの苦闘』

著者: 合澤  清

書評:『若きヘーゲル』上 ルカーチ著 生松敬三・元浜清海訳(白水社1998)   ルカーチの『若きヘーゲル』は上、下二巻から成る大作である。上巻では、ヘーゲルのベルン時代とフランクフルト時代が俎上に載せられ、そ

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何度でもやり直せる現場の物語を大切に 映画「チョコレートな人々」

著者: 杜 海樹

 人にはそれぞれの物語というものがある。生まれてから亡くなるまでの間に、進学・就職・結婚と大きな節目を向かえ、その都度自分史を刻んでいる。ある人はプロサッカー選手になりたくて部活動で頑張って来ましたと、ある人はIT事業を

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書評「フランス革命前夜のパリ-辛辣なドキュメンタリー」

著者: 合澤 清

『18世紀パリ生活誌―タブロー・ド・パリ―』上・下 メルシエ著 原 宏編訳(岩波文庫1989) パリは何度かにわたって改造されてきている。もちろんそれは、パリの都市としての拡張に合わせての理由が大部分であったろうと思う。

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二十世紀文学の名作に触れる(54) 『ジャン・クリストフ』のロマン・ロラン――反戦平和をアピールし続けた理想主義者

著者: 横田 喬

 ロランは若い頃、かのトルストイに私淑して文通を試み、弟扱いする返事をもらっている。反戦平和の理想を生涯のテーマに掲げ、数々の小説・戯曲・エッセイの執筆に心を砕く。第一次世界大戦の際には、フランスとドイツ両国に対し共に「

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二十世紀世界文学の名作に触れる(53) ロマン・ロランの『ジャン・クリストフ』――音楽への愛が綴る「青春の書」

著者: 横田 喬

 西欧では比較文化論的な立場から、よく「ドイツ人は耳が利き」、「フランス人は目が利く」と言う。ドイツは楽聖バッハやベートーヴェンを、フランスは画聖セザンヌやルノアールを生んでいるからだ。が、1915年にノーベル文学賞を受

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二十世紀世界文学の名作に触れる(52) 『チボー家の人々』のロジェ・マルタン・デュ・ガール

著者: 横田 喬

――大河小説完成に心魂を傾けて二十年  デュ・ガールは邦訳(白水Uブックス版)で全13冊に及ぶ大河小説を完成させるのに、1914~34年の実に二十年もの歳月を費やしている。一番のクライマックス、第一次世界大戦の際は、自動

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二十世紀世界文学の名作に触れる(51) ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』(下)

著者: 横田 喬

――人間の様々な葛藤を描く大河小説  時節は1914年夏、ジャックはローザンヌからジュネーヴへ移った。新聞や雑誌方面で得る金で生計を立て、各国の社会主義者たちが集まる『本部』に足繫く出入りしている。『本部』の中心的リーダ

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二十世紀世界文学の名作に触れる(50) ロジェ・マルタン・デュ・ガールの『チボー家の人々』(上)

著者: 横田 喬

――人間の様々な葛藤を描く大河小説  フランスの作家ロジェ・マルタン・デュ・ガール(1881~1958)は1937年、著作『チボー家の人々「1914年夏」』(白水Uブックス版で八~十一部)によりノーベル文学賞を受けた。授

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二十世紀世界文学の名作に触れる(49) 『狭き門』のジッド――美しいもの、弱いものへの共感

著者: 横田 喬

 フランスの作家アンドレ・ジッドは、旧ソ連邦とローマ教皇庁から等しく忌避された珍しい文学者だ。その代表作『狭き門』の題名は、新約聖書(マタイ伝)にある「力を尽くして、狭き門より入れ。滅びに至る門は大きく、その路は広く、之

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二十世紀世界文学の名作に触れる(48) ジッドの『狭き門』――大胆不敵な愛と心理洞察

著者: 横田 喬

 フランスの作家アンドレ・ジッド(1869~1951)は1947年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「人間の問題や状況を、真の大胆不敵な愛と鋭い心理洞察力で表現した、包括的で芸術的に重要な著作に対して」。その代表的な著

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二十世紀文学の名作に触れる(47) 『百年の孤独』のガルシア・マルケス――欧米では「魔術的リアリズム」と激賞

著者: 横田 喬

 南米コロンビアのノーベル文学賞作家ガルシア・マルケスの代表作『百年の孤独』は、欧米の文壇で「魔術的リアリズム」と激賞され、驚異的なヒット作となった。日本でも大江健三郎や中上健次らの現代作家たちに少なからぬ影響を与え、話

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二十世紀文学の名作に触れる(46) ガルシア・マルケスの『百年の孤独』――奇矯な叙述に彩られた世にも不思議な物語

著者: 横田 喬

 1982年にノーベル文学賞を受けた南米コロンビアの作家ガルシア・マルケス(1928~2014)の代表作『百年の孤独』は欧米の評論家が「マジック・リアリズム」と激賞したベストセラー小説だ。人の怨霊が祟ったり、死者が再生~

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書評 『日本近代文学の潜流』(大和田茂・著 論創社・刊)

著者: 阿部浪子

大和田茂の長年にわたる研究成果が本書である。大杉栄も小林多喜二も登場するが、本命はやはり、埋もれているプロレタリア作家たちへの検証であろう。 大正期から昭和初期にかけて活躍した、平澤計七、新井紀一、中西伊之助、宮地嘉六、

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二十世紀文学の名作に触れる(45) 『サンクチュアリ』のフォークナー ―― アメリカ文学を世界の檜舞台に引き上げた功労者

著者: 横田 喬

 1949年にノーベル文学賞を受けたウィリアム・フォークナー(1897~1962)は、ほぼ同世代のヘミングウェイと並び称される二十世紀アメリカ文学の巨匠だ。ヘミングウェイが海外で精力的に活動~戦争や冒険などを執筆テーマに

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