カルチャーの執筆一覧

書評 『日本近代文学の潜流』(大和田茂・著 論創社・刊)

著者: 阿部浪子

大和田茂の長年にわたる研究成果が本書である。大杉栄も小林多喜二も登場するが、本命はやはり、埋もれているプロレタリア作家たちへの検証であろう。 大正期から昭和初期にかけて活躍した、平澤計七、新井紀一、中西伊之助、宮地嘉六、

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二十世紀文学の名作に触れる(45) 『サンクチュアリ』のフォークナー ―― アメリカ文学を世界の檜舞台に引き上げた功労者

著者: 横田 喬

 1949年にノーベル文学賞を受けたウィリアム・フォークナー(1897~1962)は、ほぼ同世代のヘミングウェイと並び称される二十世紀アメリカ文学の巨匠だ。ヘミングウェイが海外で精力的に活動~戦争や冒険などを執筆テーマに

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二十世紀文学の名作に触れる(44) フォークナーの『サンクチュアリ』――世にも恐ろしい暗黒の物語

著者: 横田 喬

 米国南部ミシシッピ州生まれの作家フォークナー(1897~1962)は1950年、ノーベル文学賞を受けた。表題の作品『サンクチュアリ』は31年に著された小説で、それまで無名だった彼の名を一躍有名にした出世作でもある。サン

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二十世紀世界文学の名作に触れる(43) 『神々は渇く』のアナトール・フランス――精細な史料調査に腐心

著者: 横田 喬

 「悪は必要だ。もし悪が存在しなければ、善もまた存在しないことになるから」。アナトール・フランスの箴言は、この作家が冷めた人間通だったことを証す。私は彼の代表作『神々は渇く』を精読。その精緻な筆致に感嘆し、作家というより

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二十世紀世界文学の名作に触れる(42) アナトール・フランスの『神々は渇く』――フランス革命の真実を探求

著者: 横田 喬

 フランスの作家アナトール・フランス(1844~1924)は1921年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「格調高い様式、人類への深い共感、優美さ、真なるガリア人気質からなる作風による、文学上の輝かしい功績が認められた」

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二十世紀世界文学の名作に触れる(41) 『詩集』のパブロ・ネルーダ ――抑圧された人民を勇気づける熱血詩人

著者: 横田 喬

 ネルーダは詩人にして外交官、かつ後半生では政治家に転じ、上院議員として大統領候補(共産党)にまでなった。波乱万丈の人生で、指名手配~地下生活を送ったこともある。が、本業はあくまで詩作。伝統詩、ヘルメス主義(神秘主義的な

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二十世紀世界文学の名作に触れる(40) パブロ・ネルーダの『詩集』――20世紀最大のスケールと豊穣さ

著者: 横田 喬

 南米チリが生んだ詩人パブロ・ネルーダ(1904~73)は71年、ノーベル文学賞を受けた。  授賞理由は「一国の大陸の運命と、多くの人々の夢に生気を与える源となった、力強い作品に対して」。「20世紀最大のスケールと豊穣さ

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『菊池和子 写真絵本原画展「私はあいちゃんのランドセル」』2022/10/7(金)〜30日(日)金土日・12:00-17:00 観覧無料

著者: 高尾裕子

ーーイベント情報テキストーー 『菊池和子 写真絵本原画展「私はあいちゃんのランドセル」』2022/10/7(金)〜30日(日)金土日・12:00-17:00 観覧無料 ●菊池和子写真絵本原画展「私はあいちゃんのランドセル

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ささや句会   第83回   2022年 8月20日 土曜日 

著者: 公子

日雷しづかに人の死を怒る                   丑山霞外 片足は宙に浮いたる茄子の牛                  新海泰子 松葉ボタン庭を彩るチアリーダー                新海あすか 水

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二十世紀文学の名作に触れる(39) 『ビラヴド』のトニ・モリスン――「カラー主義」と「他者化」のからくりを鋭く糾弾

著者: 横田 喬

 社会の分断やヘイト運動が世界中で問題化して久しい。人々は何故「よそ者」を作り出し、排除や差別をしてしまうのか。アフリカ系米国人初のノーベル文学賞作家トニ・モリスンは、そんな「他者化」のからくりを考察。講演や著述を通じ、

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二十世紀文学の名作に触れる(38) トニ・モリスンの『ビラヴド』――現代の米国社会に対する深い考察

著者: 横田 喬

 1993年、トニ・モリスンはアフリカ系米国人として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「先見的な力と詩的な重要性によって特徴付けられた小説で、アメリカの現実の重要な側面に生気を与えたこと」。受賞作の小説『ビラヴド』

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二十世紀文学の名作に触れる(37) 『ニルスのふしぎな旅』のセルマ・ラーゲルレーヴ――自然保護の大切さを説いた先見性

著者: 横田 喬

 (上)(下)二巻、一千頁を超える長尺の物語の中で、私は第十九章「大きな<鳥の湖>」の内容にとりわけ胸を衝かれた。スウェーデン中南部にある小規模の湖(トーケルン湖)の干拓をめぐる挿話だが、眼力に富む女性作家は百年以上も昔

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ささや句会   第82回    2022年 7月20日 水曜日

著者: 公子

包丁に一瞬はずむ茄子の紺                   奥野 皐 商店街抜けて売り家の茂りかな                 中代曜子 心太何か忘れてゐるやうな                   丑山孝枝 あを

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二十世紀文学の名作に触れる(36) ラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』――スウェーデン児童文学の古典

著者: 横田 喬

 セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)は1907年、スウェーデン人として、また女性として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「その著作を特徴付ける崇高な理想主義、生気溢れる想像力、精神性の認識を称えて」。受賞

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二十世紀文学の名作に触れる(35) 『バーガーの娘』のナディン・ゴーディマ――人種差別に真正面から取り組んだヒューマニスト

著者: 横田 喬

 サハラ以南の女流作家で初めてノーベル文学賞を受けたナディン・ゴーディマは母国・南アフリカの人種差別に真正面から取り組んだ。ユダヤ系の白人だった彼女は、イスラエル政府による対パレスチナ政策が南アのアパルトヘイトと本質的に

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二十世紀文学の名作に触れる(34) ナディン・ゴーディマの『バーガーの娘』――南アの人種差別に挑んだ意欲作

著者: 横田 喬

 南アフリカの作家ナディン・ゴーディマは1991年、女性作家としては二十五年ぶりにノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「その壮大な叙事詩が『アルフレッド・ノーベルの言葉』に即した人文主義にとって重要な利益であったこと」。ア

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「水がきれい、空気がおいしい、大好き桂林」(Suketchi in Guilin )

著者: 出町 千鶴子

 「山は水を得て活き、水は山を得て媚(うつく)しく」互いに傍(より)添う。  天と地の間の地球から生まれたたくさんの命が呼応する。共に守り守られ喜びを分かち合っているのだ。千万の緑の峰々を映してくねくねと曲がって流れる漓

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二十世紀文学の名作に触れる(33) 『蠅の王』のゴールディング――倫理的・実存的な関心を貫いた異色作家

著者: 横田 喬

 プーチン・ロシアによるウクライナ侵略で明らかなように、人の心の中には「内なるナチズム」が潜んでいる。物理的に絶対な暴力と向き合った時の「正義」の脆弱性こそ、人間の根底にある「根源悪」の何よりの証明ではないか。イギリスの

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二十世紀文学の名作に触れる(32) ゴールディングの『蠅の王』――少年漂流物語の体裁で追究する人間の根源悪

著者: 横田 喬

 1983年にノーベル文学賞を受けたイギリスの作家ゴールディングの代表作が表題の『蠅の王』だ。「蠅の王」とは、聖書に出てくる悪魔ベルゼブル(ベルゼバブ)を指す。この作品は、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』を架空の未

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