カルチャーの執筆一覧

二十世紀文学の名作に触れる(39) 『ビラヴド』のトニ・モリスン――「カラー主義」と「他者化」のからくりを鋭く糾弾

著者: 横田 喬

 社会の分断やヘイト運動が世界中で問題化して久しい。人々は何故「よそ者」を作り出し、排除や差別をしてしまうのか。アフリカ系米国人初のノーベル文学賞作家トニ・モリスンは、そんな「他者化」のからくりを考察。講演や著述を通じ、

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二十世紀文学の名作に触れる(38) トニ・モリスンの『ビラヴド』――現代の米国社会に対する深い考察

著者: 横田 喬

 1993年、トニ・モリスンはアフリカ系米国人として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「先見的な力と詩的な重要性によって特徴付けられた小説で、アメリカの現実の重要な側面に生気を与えたこと」。受賞作の小説『ビラヴド』

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二十世紀文学の名作に触れる(37) 『ニルスのふしぎな旅』のセルマ・ラーゲルレーヴ――自然保護の大切さを説いた先見性

著者: 横田 喬

 (上)(下)二巻、一千頁を超える長尺の物語の中で、私は第十九章「大きな<鳥の湖>」の内容にとりわけ胸を衝かれた。スウェーデン中南部にある小規模の湖(トーケルン湖)の干拓をめぐる挿話だが、眼力に富む女性作家は百年以上も昔

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ささや句会   第82回    2022年 7月20日 水曜日

著者: 公子

包丁に一瞬はずむ茄子の紺                   奥野 皐 商店街抜けて売り家の茂りかな                 中代曜子 心太何か忘れてゐるやうな                   丑山孝枝 あを

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二十世紀文学の名作に触れる(36) ラーゲルレーヴの『ニルスのふしぎな旅』――スウェーデン児童文学の古典

著者: 横田 喬

 セルマ・ラーゲルレーヴ(1858~1940)は1907年、スウェーデン人として、また女性として初めてノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「その著作を特徴付ける崇高な理想主義、生気溢れる想像力、精神性の認識を称えて」。受賞

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二十世紀文学の名作に触れる(35) 『バーガーの娘』のナディン・ゴーディマ――人種差別に真正面から取り組んだヒューマニスト

著者: 横田 喬

 サハラ以南の女流作家で初めてノーベル文学賞を受けたナディン・ゴーディマは母国・南アフリカの人種差別に真正面から取り組んだ。ユダヤ系の白人だった彼女は、イスラエル政府による対パレスチナ政策が南アのアパルトヘイトと本質的に

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二十世紀文学の名作に触れる(34) ナディン・ゴーディマの『バーガーの娘』――南アの人種差別に挑んだ意欲作

著者: 横田 喬

 南アフリカの作家ナディン・ゴーディマは1991年、女性作家としては二十五年ぶりにノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「その壮大な叙事詩が『アルフレッド・ノーベルの言葉』に即した人文主義にとって重要な利益であったこと」。ア

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「水がきれい、空気がおいしい、大好き桂林」(Suketchi in Guilin )

著者: 出町 千鶴子

 「山は水を得て活き、水は山を得て媚(うつく)しく」互いに傍(より)添う。  天と地の間の地球から生まれたたくさんの命が呼応する。共に守り守られ喜びを分かち合っているのだ。千万の緑の峰々を映してくねくねと曲がって流れる漓

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二十世紀文学の名作に触れる(33) 『蠅の王』のゴールディング――倫理的・実存的な関心を貫いた異色作家

著者: 横田 喬

 プーチン・ロシアによるウクライナ侵略で明らかなように、人の心の中には「内なるナチズム」が潜んでいる。物理的に絶対な暴力と向き合った時の「正義」の脆弱性こそ、人間の根底にある「根源悪」の何よりの証明ではないか。イギリスの

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二十世紀文学の名作に触れる(32) ゴールディングの『蠅の王』――少年漂流物語の体裁で追究する人間の根源悪

著者: 横田 喬

 1983年にノーベル文学賞を受けたイギリスの作家ゴールディングの代表作が表題の『蠅の王』だ。「蠅の王」とは、聖書に出てくる悪魔ベルゼブル(ベルゼバブ)を指す。この作品は、ジュール・ヴェルヌの『十五少年漂流記』を架空の未

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アレクサンドロス大王とはどういう人物だったのか-『プルターク英雄伝』から

著者: 合澤 清

『プルターク英雄伝』(9)プルータルコス著 河野与一訳(岩波文庫1956・1972)   最初に、著者(プルータルコス)について簡単に紹介する。 「プルータルコス/ボイオーティアーにあるカイローネイアの人。トラ

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戦時下に、ひたすら家族を歌い、房総の地を詠み続けた伯父がいた~若くして、病にたおれた無念を思う(1)(2)

著者: 内野光子

戦時下に、ひたすら家族を歌い、房総の地を詠み続けた伯父がいた~若くして、病にたおれた無念を思う(1) 昭和十一年 大利根の曲りて廣く見ゆるところ浚渫船は烟ながしぬ(佐原短歌誌抄) まばゆくてま向かひがたき入りつ日にしばし

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『喜べ、幸いなる魂よ』(佐藤亜紀)~フランドル地方が舞台と知って

著者: 内野光子

 近年、めったに小説など読むことはないのだが、主人公がフランドル地方のゲント(現地の読み方がヘントらしい)のベギン会の修道院で暮らす女性と知って、読み始めた。というのも、すでに20年も前のことなのだが、2002年の秋、ブ

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二十世紀文学の名作に触れる(31) 『ブリキの太鼓』のギュンター・グラス――現代ドイツ最大の社会派作家

著者: 横田 喬

 中学一年の際に第二次世界大戦の幕開けを経験したギュンター・グラスはドイツ敗戦の直前、十七歳の少年兵として東方国境の最前線へ送られた。文字通り九死に一生を得る極限状況を体験し、戦後のドイツで良心的な社会派作家として不動の

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二十世紀文学の名作に触れる(30) ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』――読者を仰天させる新奇な物語(下)

著者: 横田 喬

 1941年秋、ドイツ軍はモスクワ西方の戦線でロシア軍を相手に泥沼に落ち込んだ。十七歳の僕オスカルもまた、視界不明でもがいていた。そんな僕に「世界市民」の看板を掛けさせるよう導く教師たる小人の道化者べブラ師が立ち現れる。

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二十世紀文学の名作に触れる(29) ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』――読者を仰天させる新奇な物語(上)

著者: 横田 喬

 1999年にノーベル文学賞を受けた現代ドイツ最大の作家ギュンター・グラス(1927~2015)の代表作が表題の『ブリキの太鼓』だ。59年に発表(処女作)され、作家としての地位を確立した同作は文庫版(集英社:訳・高本研一

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