日窒延岡工場のアンモニア合成装置が完成し、発明者カザレーの手によって試運転が始まったのは1923年9月のことだった。日本初のアンモニア合成であり、日本の化学工業界全体においても慶事であった。 ところが日本はその月、たいへ
本文を読むスタディルームの執筆一覧
ローザ・ルクセンブルクの「社会主義的民主主義」論 新資料の紹介と解釈を中心に
著者: 赤海勇人はじめに 本稿の主題は、1870年代初頭、当時帝政ロシアの支配下にあったポーランドの小都市ザモシチ(Zamość)で、ユダヤ系の家庭に生まれ、主にドイツとポーランドの社会民主党で活動したローザ・ルクセンブルクの「社会主
本文を読む水俣病が映す近現代史(11)アンモニア合成
著者: 葛西伸夫核技術と、石油やエレクトロニクス文明のせいで隠れてしまっているが、20世紀はアンモニア合成こそが最大の発明であったとここで強調しておきたい。 なぜならアンモニアは、空気として無尽蔵に存在する窒素を、人間が自由に利用するた
本文を読む水俣病が映す近現代史(10)大正デモクラシー
著者: 葛西伸夫明治時代が終わると、社会全体に自由を求める傾向が強まり、様々な政治運動、社会運動、労働運動が全国に広がった。 野口や日窒をとりまく状況のなかでも、労働者や主婦や漁民のような「民衆」が自分の権利や自由を求めて様々な場面で異
本文を読む水俣病が映す近現代史(9)「大正の天佑」
著者: 葛西伸夫【保険をかけていた肥料戦略】 日本の農家にとってはまったく新しい肥料である石灰窒素が、すぐに売れるとは考えられず、野口(日本窒素肥料、以下「日窒」と省略する)は、すでに輸入品を中心に普及が進んでいた硫安(硫酸アンモニア)
本文を読む前田朗氏講演の報告:「関東大震災朝鮮人虐殺-裕仁最初の犯罪責任を考える」
著者: 村尾望7月18日に、阿佐ヶ谷市民講座の前田朗氏(朝鮮大学校法律学科非常勤講師、東京造形大学名誉教授)による標記の講演を聴講した。関東大震災における朝鮮人・中国人大虐殺について重要な視点を提起していると思われる。 昨年10月
本文を読む水俣病が映す近現代史(8)天草・島原の悲劇
著者: 葛西伸夫1637〜38年にかけて起こった「天草・島原の乱」は、天草や島原の百姓やキリスト教徒が中心となり、江戸幕府にたいして大規模な武力蜂起を起こした事件である。ことの詳細については割愛するが、この事件は幕府に強い衝撃を与え、キ
本文を読む水俣病が映す近現代史(7)カーバイドの応用
著者: 葛西伸夫【20世紀の幕開けと人工肥料】 1890年代末、ドイツのアドルフ・フランク、アルバート・フランク、ニコデム・カローの三氏は、カーバイド(炭化カルシウム)に窒素を反応させ石灰窒素を抽出することに成功した。このときの石灰窒素
本文を読む水俣病が映す近現代史(6)野口の起業
著者: 葛西伸夫【野口の浪人時代】 チッソ創業者の野口は、帝大を卒業後、ひとつの帰属先に落ち着くことなく日本中の様々な事業の設立に関わったり、辞めたジーメンスの製品の委託販売をする「庭田商会」を作ったりとか、電気事業が自由競争下で急成長
本文を読む水俣病が映す近現代史(5)電気事業の成長とその背景
著者: 葛西伸夫【急増する電気需要】 日本で、工場の動力に電動機(モーター)が使われはじめたのは1890年代だった。当初は紡績工場から導入が進んだ。1896年(明治29年)に稼働を開始した大阪紡績鹿島工場や鐘紡績三重工場では、最初からす
本文を読む7/6現代史研究会レジュメ — 否定存在論について—
著者: 小笠原 晋也Ab-grund des Seyns[存在 という 基礎的な深淵 / 深淵的な基礎](Heidegger) と trou du non-rapport sexuel[「性関係は無い」の穴](Lacan) — 否定存在論に
本文を読む世界のノンフィクション秀作を読む(77) 北条常久(文筆家)の『評伝むのたけじ』(無明舎出版刊)――反戦平和を求め続けた在野のジャーナリストの一〇一年の生涯(下)
著者: 横田 喬1947(昭和22)年の大晦日、むのたけじの一家は大宮駅を発ち、元旦の朝に雪の横手駅に着く。48年2月2日、『週刊たいまつ』が創刊された。地元の青年を記者に二人、広告担当に一人、採用し、発行責任者は武野武治。粗悪な紙の
本文を読む世界のノンフィクション秀作を読む(77) 北条常久(文筆家)の『評伝むのたけじ』(無明舎出版刊)――反戦平和を求め続けた在野のジャーナリストの一〇一年の生涯(上)
著者: 横田 喬むのたけじ(1915~2016)は戦前、朝日新聞記者として中国~東南アジア特派員を経験。1945年8月15日の日本の敗戦当日、自身の戦争報道の責任を感じて退社する。郷里の秋田県横手市で週刊新聞『たいまつ』を創刊、主筆と
本文を読む水俣病が映す近現代史(4)「征韓論」の行方②
著者: 葛西伸夫【ロシアの東進】 ロシアは17世紀末ピョートル大帝の時代からシベリア方面への「東進」を進めてきたが、クリミア戦争(1853-56)敗戦後はそれに集中する。1860年、ロシアはアロー戦争仲介の見返りとして、清に黒竜江左岸と
本文を読む水俣病が映す近現代史(3)電気の登場
著者: 葛西伸夫江戸時代の日本は風力、水力、そして薪や炭のように植物が太陽エネルギーを固定した燃料など、完全なる循環型エネルギーを用いる社会だった。生産力が自然のメタボリズムと均衡していた。それを崩したのは、まさにそれを崩しに来た黒船の
本文を読む水俣病が映す近現代史(2)「征韓論」の行方①
著者: 葛西伸夫19世紀後半、鎖国中の李氏朝鮮も日本と同様に鎖国を保つか開国かで揺れていた。実権を握っていた大院君が鎖国派であるのに対し、実子である国王高宗(コ・ジョン)は開国・開化派で、朝鮮には近代化の先鞭をつけた日本の助けが必要だと
本文を読む水俣病が映す近現代史(1)【近代日本黎明期】
著者: 葛西伸夫19世紀前半、三度目の改革も成果むなしく、権力の衰えを露わしてきた江戸幕府末期の日本。それに沿うように様々な古典的思想が浸透し、倒幕運動の下地を固めていた。 1840年には英国が策略したアヘン戦争により清が領土の一部を奪
本文を読む小伝 宇野弘蔵(5)
著者: 大田一廣第三章 日本資本主義の〈構造〉と経済学体系の模索 福本和夫と経済学の方法 大原社研を辞して無職のまま1924年9月にドイツから帰国した宇野弘蔵は、ベルリンでも世話になった森戸辰男の仲介で10月に東北帝國大学法文学部助
本文を読む内田弘さんを偲ぶ
著者: 野沢敏治3年ほど前になるが、野沢さんも頑張ってくださいという年賀状をいただき、今までとちょっと様子が違うなと感じていましたが、松田さんから2月に亡くなられたという訃報の知らせを聞き、そうであったかと思いました。もう彼も自認する栃
本文を読むロシアだけでなく、中國への依存を深めるハンガリー
著者: 盛田常夫これを書いている5月8日から3日間、中国の習近平国家主席がハンガリーを訪問します。 EU から種々の制裁措置を受けているハンガリーは、東方外交を積極的に進め、瀬戸際外交によって自らの地位を確保しようとしています。ロシア
本文を読む海峡両岸論 第162号 2024・04・27発行 中ロ印の思惑錯綜するBRICSとは 米一極支配衰退で多極化の主導権競う
著者: 岡田 充米一極支配と主要先進7カ国(G7)の役割が減衰する世界秩序の新たな多極間枠組みとして、2024年から加盟国が10カ国に拡大した「BRICS」の役割が比重を増している。中でも中国、ロシア、インドの3国は異なる思惑からBRI
本文を読む海峡両岸論 第161号 2024・04・07発行 平和統一を実行に移す習近平指導部 馬英九氏ら各党派・団体と対話開始
著者: 岡田 充中国が2023年から習近平の台湾平和統一政策を具体的に進め、台湾総統選を経た24年からは実行に移す構えだ。「中国は一つであり台湾の主権と領土は分割できない」との現状認識の下、台湾が実効支配する領域を無視し主権を行使する
本文を読む海峡両岸論 第160号 2024.02.18発行 - 国家を揺るがす非国家の台頭 グローバルサウス台頭で不安定世界に -
著者: 岡田 充足掛け5年に及ぶコロナ禍のトンネルを抜けると、国民国家を基礎にしてきた世界秩序の枠組みは大きく変化していた。2023年は、ほぼ1世紀にわたって世界を支配してきたアメリカの衰退が顕在化し民主価値観も神通力を喪失、新興・途上
本文を読む海峡両岸論 第159号 2024.02.02発行 - 台湾総統選、「隠れた勝者」は中国 民進党、「抗中」転換しなければ退潮 -
著者: 岡田 充台湾総統選挙(1月13日)で当選した民主進歩党(民進党)の頼清徳氏は、勝利集会で「(台湾の有権者は)民主主義と権威主義の間で、民主主義を選択したことを示した」と、中国の選挙介入に対する有権者の反発が勝因と強調した。一方、
本文を読む小伝 宇野弘蔵(4)
著者: 大田一廣第二章 ベルリン留学と経済学への途 ワイマール期ドイツにて――革命の挫折の渦中に―― 大原社会問題研究所では『資本論』を読むという初志の希望とはほとんど縁がなかった。そこで宇野は、研究者や文化人など多くの日本人が留学し
本文を読む習近平論 (6) 習一強体制の苦境(6) ―反腐・恐怖・居座り・勲章・?
著者: 田畑光永この文章の最初の部分で、私は毛沢東、鄧小平それぞれの治世の核とでもいうべき彼らの言葉として、毛の「階級闘争が要である」と、鄧の「発展こそが第一の道理」を挙げ、習近平については「2,3,4,5,」と書いた。ここでその理由
本文を読む習一強体制の苦境(5) 習一強体制の苦境(5)―「反腐」が「恐怖」に
著者: 田畑光永習近平は2012年11月の中国共産党第18回大会で中央政治局常務委員会の序列1位に選ばれ、党総書記、つまり中国のトップの座についた。その時の選考経過などは勿論、明らかにされていない。ただ何となく世情に伝えられているのは
本文を読む習一強体制の苦境(4) ―カネが渦巻く社会の出現
著者: 田畑光永前3回は4分の3世紀の歴史を歩んだ中華人民共和国のこれまでの最高指導者のうち、毛沢東、鄧小平の治世の骨格を現在の視点からふり返った。 まず建国初代の最高指導者、毛沢東は大衆に階級闘争の理念を説いて、そこから戦闘力を引
本文を読む習一強体制の苦境(3) ―毛沢東、鄧小平はどう中国と・・・そして習の中国は?
著者: 田畑光永これまで2回(1月5日、6日)、中国で「一強」のはずの習近平体制の、実際はとてもそうは見えない、なにかというと「だんまり」で逃げる癖を指摘してきた。一昨年秋の共産党大会、最終日の開会直前に胡錦涛前総書記が強制退場させら
本文を読む習一強体制の苦境(2)―恒例の重要会議開かず、さらに・・・
著者: 田畑光永昨日の(1)では「説明せずは唯一の逃げ道」というサブタイトルで、中國では昨年後半に外交部長、国防部長という就任まもない重要閣僚が公式の理由説明がないままに解任され、さらに年末には軍幹部で退職後に全人代、政協会議といった
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