中国の対空ロケット、セルビアが採用
- 2020年 8月 18日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
ベオグラードの日刊紙『ポリティカ』(2020年8月4日)の第1面に「中国のロケットでセルビアの空を防衛しよう」なる記事に目がとまった。以下に要点を紹介する。
――セルビア共和国の防空システムは、フランス製短射程ミストラル、ロシア製中射程パンツィルを有しているが、長射程対空防衛に関しては未決であって、20年余軍事専門家の関心の的になっていた。
セルビアの国営企業ユーゴイムポルトSDPRは、国の軍装備の輸出入契約を実行する団体である。SDPRが発表した所によれば、中国のFK-3を購入する事に決定したと言う。射程100キロメートル、高度27キロメートル。これでセルビア防空の短中長の総合が出来上がったとされる。FK-3は、今の所、中国人民解放軍だけが採用している。国防省アレクサンダル・ヴーリンが2017年7月末に北京で交渉を開始していた。――
以下に私見を述べる。
セルビアの防衛環境は複雑きわまる。1990年代の10年間、「ミロシェヴィチ政権下、共産主義の最後のモヒカン族である。」と北米西欧市民社会によって、決めつけられ、1999年には78日間に及ぶ連日の大空爆を受けた。エリツィン大統領のロシア連邦は、セルビアを守らなかった。
2001年10月5日、セルビアのリベラル諸団体と市民社会は、ミロシェヴィチを大衆蜂起の様相の中で打倒した。その後十年間北米西欧の軍事関係が優先される。NATOを指向する努力が続く。
かかる親NATOとEU指向のリベラル民主主義は、反NATOかつEU指向かつ親ロシアのナショナル民主主義=常民社会の選挙闘争によって打ち負かされる。ここに武装中立主義が表面に出て来る。2010年代の10年間の実情である。
かかる第三の10年間の最後の年に、セルビアは、ロシアの防空システムを採用するのではなく、中国のそれを導入する事に決めた。ヨーロッパ諸国の中ではじめて、史上はじめて中国の戦争技術が受容される。その意味や如何。今の所、セルビア国防省は何の声明も出していない。
令和2年8月16日(日)
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion10036:200818〕
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