〝見掛け倒し〟の石破政権は案外早く失速するかもしれない、それでも次期衆院選では野党が苦境に立たされる、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その37)
- 2024年 10月 3日
- 時代をみる
- 「リベラル21」広原盛明次期衆院選石破政権
立憲民主党代表選も自民党総裁選も終わった。野田氏の代表選出は予想通りだったが、自民党の方はまったくわからなかった。石破氏が選出されたのは、その他候補の印象(もちろん中身も)があまりにも悪すぎて、「まだまし」と思われたからにすぎない。今日、党人事と組閣を終えて新政権がスタートすることになるが、石破氏は次期衆院選の時期を巡っては早くも「国会で議論してから」との約束を覆して解散・総選挙に踏み切る始末、党利党略そのものだ。それでいて「国民のための政治」「政治不信の解消」「信頼できる政治実現」など聞くも恥ずかしい言葉を並べるのだから、まるで得体が知れない人物のように映る。以下、ぞろぞろ出てきた候補者たちの印象についても少し述べたい。
最初に出てきた小林候補は当初の見た目はよかったが、中身は古色蒼然とした「体育会系右翼」そのもので途中から勢いを失った。前評判の高かった小泉4世は「言語明瞭・意味不明」の典型だった。要するに若さだけが取り柄の「コピー人間」で、従来からの自民党の政策を口先を変えて喋っただけのことで、新しい中身は何一つなかった。河野・茂木両氏は自民党の「暗闇」を象徴するような人物で、一方は雄弁に、他方は陰鬱にそれぞれの信条を語ったが、時間が経てば経つほどその不気味な本性を見透かされて底辺に沈んでいった(以下省略)。
問題は、高市氏がなぜあれほどの票を取ったかということだ。奈良県出身の高市氏は「議席を得るためには手段を選ばない」人物として地元では有名だった(私も同郷で近い場所の出身だからよく知っている)。高市氏は、駆け出しのころから当選可能性のある政党や会派を渡り歩き、その都度都合のよい政治信条を掲げてきた「カメレオン」のような人物だ。そして、最後にたどり着いたのが「安倍派」であり、そこに終生の安住地を得てから露骨な本性を表したのである。神社本庁のある橿原神宮の近くで育った高市氏は、以降「靖国神社詣」をトレードマークにして政界に進出し、国会での「右翼総本山」の役割を担うようになった。
さすがの自民党国会議員も自民党関係者も、こんな高市氏には「二の足」を踏んだのではないか。高市氏が政権を担うようになれば、中国はもとより米国も黙っていないからである。場合によっては「不快感」を超えて、日米同盟にヒビが入るかも知れない――と誰もが思ったはずだ。裏金問題を隠蔽するために同氏を支持してきた関係議員も、「大局的見地」から最後の決断を迫られたに違いない。こうして石破氏が「まだまし候補」として浮上し、勝利を手にしたのである。
9月28,29実施の毎日新聞世論調査では、石破新総裁に「期待する」52%、「期待しない」30%、「どちらかとも言えない」17%となり、石破氏に対する期待感が過半数を占めた。しかし、裏金問題に関しては、「実態解明に取り組むべきだ」77%、「取り組む必要はない」15%となり、圧倒的多数の国民はこのことを忘れていない。もし、石破氏が裏金議員を次期衆院選で「公認」し、選挙戦に臨むようなことがあれば、情勢が劇的に変化する可能性もある。あれこれの理由をつけて饒舌でごまかすには、「政治とカネ」に関する裏金問題は大きすぎる不祥事だからである。
一方、野田立憲代表に対しても「期待する」49%、「期待しない」33%、「どちらかとも言えない」18%との結果が出ている。興味がひかれるのは、石破氏に対する数字とほぼ同様の結果が野田氏にも出ていることだ。与党に対する期待感が強く、野党に対する期待感が薄ければ、こんな結果は出てこない。石破新総裁と野田立憲代表に対する期待感がほぼ同数であることは、世論はまだどちらにも傾いていないことを意味する。政党支持率では自民33%、立憲15%と倍以上の差がついているが、次期衆院選では「裏金問題」が一大争点になるだけに、政党支持率からその帰趨を単純に占うことはできないからである。
その点で、野党共闘の今後の行方が気になる。共産党は9月30日、次期衆院選に向け第3回中央委員会総会(3中総)を党本部で開いた。田村智子委員長は、立憲民主党とは安全保障政策などで違いがあるとし、「両党間の共闘の条件は基本的に損なわれた」と報告。立憲との候補者調整は「地域ごとの限定的なもの」とする方針を示した。田村氏は3中総で「小選挙区にも最大限候補者を立てて、勝利のために奮闘する」と表明。立憲との「共闘」については「地域によってはこれまでの経緯などを踏まえて対応することはあり得るが、限定的にならざるを得ない」と述べた。比例区で650万票以上、得票率10%以上を獲得し、全ブロックでの議席確保を目指す方針を決めた。共産は、集団的自衛権の行使容認を含む安全保障法制の即時廃止を主張しており、立憲の野田佳彦代表が「違憲部分の廃止」に言及しつつも自公政権との継続性に配慮する姿勢を批判している。田村氏は記者団に「(立憲と)話し合うことは否定はしない」としつつ、「安保法制廃止の問題をあいまいにしたまま(候補者の)一本化はあり得ない」と述べた(朝日新聞10月1日)。
維新は、馬場共同代表と吉村共同代表と間で野党共闘についての意見が分かれている。馬場氏は(本心かどうか分からないが)否定的で、吉村氏は肯定的だ。国会議員の中では立憲との選挙協力を望む声が強いとはいえ、どっちに転ぶかはまだわからない。だが、もし立憲と維新の間で正式の共闘が成立すれば、共産との対立関係は決定的なものになる。野田代表がいずれの選択をするのか、それとも曖昧なままで「野党の話し合いを続ける」といった姿勢に終始するのか、今後の政治判断が注目される。
共産党は、独自候補の擁立を急いでいる。選挙資金に余裕がない中で、多数の候補擁立は党財政にとって大きな負担となるに違いない。それでもなりふり構わず独自候補の擁立に踏み切るのは、次期衆院選が今後の政局の帰趨を決めると判断しているからだろう。次回は、共産党の「3中総」について分析をしたい。(つづく)
初出:「リベラル21」2024.10.03より許可を得て転載
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