旧ソ連戦争捕虜抑留とソ連原水爆開発・ウラン採掘の関係について、情報をお寄せください!
- 2013年 7月 2日
- 時代をみる
- ソ連加藤哲郎原子力
◆2013.7.1 もうすぐ参議院選挙の公示、日本政治の大きな岐路です。といいながらも、あまり力が入りません。東京都議会選挙の政権与党自民党・公明党全勝は、参院選からウェブ選挙が始まるとはいえ、参議院議員選挙の結果を予測させます。民主党の惨敗、その激減民主党票の野党の中での食い合い、低投票率なら共産党に漁夫の利、しかし「ねじれ」が解消した国会は「アベノミクス」が跋扈し、消費税アップ、憲法改正、原発再稼働、TPP推進、議席差次第では8月15日安倍首相靖国参拝の悪夢もありえないことではない、という悲観的シナリオが浮かびます。もともと2009年の民主党政権誕生ーー政権交代ーーへの有権者の過剰期待と、沖縄普天間基地移転問題、3・11東日本大震災・福島原発事故処理で白日にさらされた民主党の統治能力への幻滅が、自民党への揺り戻し、政党政治の右傾化を作りました。そこにちょっと株価があがり、円安に振れて、なんとなく景気好転の気分。国際社会では、この半年で隣国との関係を極度に悪化させ、内向きのナショナリズムが排外主義を強めています。米中関係もスノーデン事件も、トルコ・ブラジル・エジプトの反政府行動もないかのように、朝日新聞の最新世論調査は、安倍内閣支持率に陰りが見えたとはいえ55%、参院比例区の投票先は自民44%、民主・維新の会・みんなの党各7%、消費税引き上げ反対51%、憲法96条改正反対47%、原発再稼働反対53%、TPP賛成50%とか。去年の今頃と比べると、なんとも中途半端で、煮え切らない数字です。投票率とウェブ上を含む「失言」が鍵になりそうです
◆懲りない原子力ムラは、福井県高浜原発に、プルトニウムを含むMOX燃料を、フランスからこっそり運び込みました。国会事故調の報告書は棚上げされたまま、「原発事故で死亡者いない」という自民党政調会長発言が出るほど、永田町の国会周辺では、3・11が忘れられ、復興・原発イシューが弛緩しています。そんな空気に、市民社会から逆らうために、6月17日の毎日新聞夕刊文化欄に、「核なき社会へのパラダイムシフト 人権優先の『世界共和国』へ」という短文を寄稿しました。これ実は、3月に上梓した加藤哲郎・井川充雄編『原子力と冷戦ーー日本とアジアの原発導入』(花伝社)の延長で、5月25日明治大学での第275回現代史研究会「原発問題を考える―『原子力平和利用』と科学者の責任」での私の講演「SF(サイエンス・フィクション)としての『原子力平和利用』」の超短縮版。『つくられた放射線「安全」論』(河出書房新社)の宗教学者島薗進さん「原発の倫理性について」とのジョイント討論を含め、you tube にアップされ、映像で見ることができますから、詳しくはそちらで。あるいは、当日配布したSF資料版を、学術論文データベ ースにアップされた神戸の弁護士深草徹さん「憲法9条から見た原発問題」とあわせてどうぞ。
◆この間進めている、旧ソ連におけるスターリン粛清時代の強制収容所と、戦後敗戦国ドイツ・日本・ハンガリー等のソ連の外国人戦争捕虜収容所と、旧ソ連崩壊で明るみに出た核開発・実験の秘密都市・閉鎖都市の、地図上での重なりあいの謎。戦時ドイツ人捕虜の科学者・労働者がソ連の核開発に協力した記録があるので(ホロウェイ『スターリンと原爆』、メドヴェージェフ兄弟『知られざるレーニン』)、日本人抑留者にもウラン採掘の強制労働や、ひょっとしたら科学者の秘密都市への選抜があったのではないかと仮説をたて、第1弾として、北極海にちかい政治犯収容所、ナリリスク市の抑留者が記憶に基づいて書いた「点望見取略図」中の「秘密工場(ウラン濃縮工場か)」を下図に示しました(『シベリア抑留画集 きらめく北斗星の下に』)。日本人捕虜宿舎は右下方ですが、日本人が直接秘密工場に入れられていたか否かはともかく、近接しています。また、片桐俊浩さん『ロシアの旧秘密都市』(ユーラシア研究所ブックレット、東洋書店)を読むと、日本人抑留者が施設・設備を作った収容所が、後に原爆秘密都市になっていく例がみられます。「ソ連水爆の父」サハロフ博士によれば、旧ソ連の核は「何百人もの奴隷・囚人」によって作られ、ジョレス・メデヴェージェフによれは「原子力収容所」で、ロシア人の政治的異端者・刑事犯、外国人捕虜・科学者に危険な被曝労働を担わせることで、1949年の原爆実験、53年の水爆実験、54年オブニンスク原子力発電所を動かしてきたようです。その情報提供第2弾で、シベリア抑留中、ソ連側から日本の戦時原爆開発について尋問され、朝鮮半島のウラン鉱石について供述したという『赤い牢獄』(川崎書店、1949年)著者「菅原道太郎」についての情報がありましたが、この話、北海道新聞の小坂洋右記者が『日本人狩り 米ソ情報戦がスパイにした男たち』(新潮社、2000年)で追跡し、一部始終を書いているように、どうも「ほら太郎」というあだ名を持つ、元樺太庁官吏の胡散臭い売り込み情報のようです。この「菅原道太郎」、ソ連から帰還後、GHQの情報機関につとめ、かつ「ラストヴォロフ事件」というソ連KGBスパイ事件の記録にも出てくる、怪しげな人物です。シベリア抑留からの帰還者は、朝鮮戦争前後の時期、ソ連からも米国からも情報提供者として狙われていましたから、回想記の類は、注意して検証する必要がありそうです。この問題、情報収集センター(国際歴史探偵)「尋ね人」<新たに見つかった旧ソ連粛清犠牲者「ニシデ・キンサク」「オンドー・モサブロー」「トミカワ・ケイゾー」「前島武夫」「ダテ・ユーサク」について、情報をお寄せ下さい!>とともに、引き続き情報提供を求めます。何か手がかりがありましたら、 katote@ff.iij4u.or.jp まで情報をお寄せください。
「加藤哲郎のネチズンカレッジ」から許可を得て転載 http://www.ff.iij4u.or.jp/~katote/Home.shtml
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.ne/
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