地震学者・石橋克彦氏の警告を無視する原子力規制委員会
- 2015年 5月 11日
- 時代をみる
- グローガー理恵
3月24日放映「報道ステーション」から: 川内原発が再稼働目前“地震想定”は大丈夫か?
〈出典: ”MICKEYのブログ” http://blogs.yahoo.co.jp/ueda_beck/12902282.html
☆ 3月24日に放映された『報道ステーション 「川内原発が再稼働目前 – ‘地震想定”は大丈夫か?」』
動画へのリンク:http://www.tv-asahi.co.jp/dap/bangumi/hst/feature/detail.php?news_id=41647
【書き起こし】
古舘 キャ スター:「ここから、原発関連の特集に移ります。あの4年前の福島第一原発の事故をもう一度考えてみますと、津波の到来によってさまざまなものが壊れて、結 果、全電源の喪失に至ったという見方もあるなかで、反面、いや、もうちょっとその前に起きた地震によって機器の一部が損傷して壊れた、地震による破損説に よって、ああいう過酷なものになっていったんじゃないかという『地震破損説』がありました。この『報道ステーション』番組でも、ずっと『地震破損説』の可 能性を追い続けましたが、結果的にはですね、地震によるものなのか、津波で壊れたのか、そこがはっきりしないまま、今に至ってしまっている、検証がはっき りと行われていない、そういう中で、鹿児島の川内原発は、夏にも再稼働を迎えようとしている。そういう中で、あの福島の事故前から、終始一貫、いまだにぶ れてない、あることをアピールし続ける地震学者の方の発言に、この番組では注目して、特集を組みました」
(東京・六本木。「原子力規制委員会」が入ったビル) – 福島から他県に避難した男性 「原発事故により、穏やかな生活を根こそぎ奪われてしまいました。私たちのような経験は私たち限りにしたい。」 今年1月、原子力規制委員会で、全国から集まった市民による意見陳述が行われた。メディアが入ることは許されない、非公開での開催だ。 これは、九州電力川内原発の新たな規制基準の合格に対して、5000人の市民が、行政不服審査法に基づいて異議申し立てを提出し行われたものだ。 – その中に、一人の地震学者がいた。 福島原発事故の後、国会事故調査委員会のメンバーとして、原因究明に当たった人物だ。 – 神戸大学名誉教授・石橋克彦氏: 「地震列島・日本の原子力発電所が、万が一の場合はこのようになるんだということは、私たち日本人は事前に分かるべきだった」 福島事故の前から「原発は最新の地震学を反映していない」ため、「想定を超える地震に襲われて事故を起こす可能性が高い」と指摘し続けてきた、地震学の第一人者。 原子力安全委員会の分科会の委員としても警鐘を鳴らし続けたが、受け入れられず、辞任した(2006年)経緯がある。 そして、事故は現実のものとなった。 石橋克彦氏(元国会事故調査員・神戸大学名誉教授) 「(川内原発の新規制基準適合性審査は)手続き的にですね、全くすっ飛ばしてしまっているので、これはもう、とんでもない規則違反というかですね、欠陥審査だと思います」 石橋氏が異議を唱えているのは、原発の地震対策をどこまでやるか、大前提となる地震の揺れの想定だ。 川内原発は去年9月、原子力規制委員会による審査の結果、新たな規制基準で初めて合格し、早ければ夏にも再稼働する見込みだ。 しかし、石橋氏は、最新の地震学から見て、川内原発は、新たな規制基準をクリアしたとは言えないと指摘する。 「新規制基準の規則で定められているのは『内陸地殻内地震』『プレート間地震』『海洋プレート内地震』それぞれについて、敷地に大きい影響を与えると思われる地震を検討用地震として選定して、それぞれについて地震動を評価しなさいと決まっているのに、九州電力は『内陸地殻内地震』しか取り上げていない」 4年前の東日本大震災。福島の原発事故を受けて、より厳しくなった新たな規制基準では、地震対策の揺れの想定について、震源を特定できる場合、この3種類の地震から、「原発の敷地に大きな影響を与えると予想されるものを複数選定すること」としている。 3種類の地震というのは、「内陸地殻内地震」が、陸のプレート内部が深さ20キロ程度よりも浅い場所で起こる地震、「プレート間地震」とは、南海トラフと九州の東岸のあるフィリピン海プレートと陸のプレートとの境界面で起こるもの、「海洋プレート内地震」とは、フィリピン海プレートの内部で発生する地震を指す。 九州電力は、原発の敷地に大きな影響を与える地震は「震度5弱以上」の揺れだと独自に決定、「内陸地殻内地震」だけが当てはまるとした。 それ以外については、ここ数百年に起きた地震(「プレート間地震」:1662年 日向・大隅地域(M約7.5)、「海洋プレート内地震」:1909年 宮崎県西部地震(M約7.6))を挙げて、「震度5弱程度とは推定されない」と説明、検討対象から除いた。 しかし、石橋氏は、原発の地震想定は、一万年から十万年の単位で検証するのが世界の共通認識だから、この2種類の地震(「プレート間地震」「海洋プレート内地震」)についても、検討対象に入れるべきだったと指摘する。 石橋克彦氏(元国会事故調査員(神戸大学名誉教授)): 「まずですね、九州電力は(数百年の)過去の地震しか考えていない。これは大変問題でして、原発の耐震安全性のためには、将来起こり得る最大クラスの地震を想定しなければいけないので。「プレート間地震」について、今後想定すべき最大クラスの地震、何だろうというと、南海トラフ巨大地震というものがあるわけです。」 実際、政府は、東日本大震災の後に、「プレート間地震」の一つ「南海トラフ巨大地震」の被害想定を公表(内閣府(2012年))。「最大でM9の地震が襲う」とした。ここでは、「川内原発の場所に震度5弱が想定」されているのだ。 「それで見ますと、川内原発は震度5弱の領域です。ですから、「プレート間地震」で川内原発は震度5弱程度(大きな影響がない)には達しないと言った、九州電力の主張は明らかに誤りであります。」 「安全側にモデルを作れば、場合によっては川内原発は震度6の領域に入るかもしれない」 しかも、「プレート間地震」は、強い揺れの時間が「内陸地殻内地震」よりもはるかに長いので、より厳しい耐震性が求められるという。 最新の地震研究はどうなっているのか。南海トラフ巨大地震について、最新の知見を持つ現場を訪ねた。 – 高知県・土佐市。 高知大学・地震地質学専門 岡村眞教授 「過去6000年間の巨大津波児心音歴史を残した池ですね、これが。」 海 から近い古い池。大きな津波が襲えば、そのつど池の底に砂が積み重なる。その砂は、池があることで風化しないため、岡村氏は、池の底から堆積した形状のま ま、その砂を抜き取り、年代と砂の違いを調べることで、過去に南海トラフクラスの巨大地震が、いつどのくらいの規模と間隔で起こったかを調べている。 「こ れだけで大体3500年くらいの年代が得られています。何回も津波が砂を運んできているんですけれども、特に顕著なのは、300年前の1707年の宝永の 津波が非常に顕著ですね。それからこれが、それを凌ぐ2000年前の巨大な津波なんですけれども、宝永の時(砂は)4000tの砂を運んでいます。2000年前の大津波はなんと1万6000t、宝永の砂の量の約4倍。」 「宝永の時にM8.6と普通に言われています。それをはるかに超えるものがあるということですね。M9.0であっても全然おかしくない。」 岡村氏は、去年新たな知見を発表した。300年前にM8.6を記録した地震と同等か、もしくはそれを超える大きな規模の地震が、7000年間に少なくとも16回起きたことを突き止めたのだ。内閣府の想定を裏付ける結果となっている。 – 高知大学・地震地質学専門 岡村眞教授 「静 岡県から九州まで(調査を)やってきて、そういう巨大津波が繰り返し日本列島、西南日本を襲っているということが分かってきましたので。東北の今回の津波 も、1100年ぶりだったわけですね。そういうものが現実に4年前に来てしまったことを考えれば、過去数千年間を知らないと我々は次の巨大津波について理 解ができないということになってしまうわけです」 これまでも、東京電力福島第一原発事故の前から、1100年前の貞観地震を想定すべきとの指摘もあったが、対策はまったく取られてこなかった。 さらに、石橋氏は、「海洋プレート内地震」についても、フィリピン海プレートが、鹿児島県の地下にあるため、川内原発の敷地で、震度5弱以上に達する可能性があると指摘する。(1909年宮崎県西部地震(M7.6)と同じタイプが鹿児島県でも起こり得る) |
これは、去年9月、原子力規制委員会が九州電力に対し、新基準合格の「お墨付き」を与えた「審査書」だ。それを見ると、「プレート間地震」と「海洋プレート内地震」について、九州電力が対象から除くとした主張がそのまま書かれている。しかし、規制委員会がどのように審査し、2種類の地震を外す判断をしたのかは書かれていない。
石橋克彦氏(元国会事故調査員(神戸大学名誉教授): 「九州電力は、敷地に影響しないからと言って無視してしまった。それを審査側(規制委)が何の質疑もしないで全くそれを認めてしまった。こういう根本的なところが事業者の言いなりになっているというのは、非常に大きな問題だと思います。」
– 3月11日 Q:「プレート間地震」と「海洋プレート内地震」をなぜ検討する必要がないとしたのか? 原子力規制委員会・田中俊一委員長: 「「プレート間地震」も沖縄のトラフとかその辺まで含めて全部考慮して、で、川内原発について見ると基準地震動で一番大きいのは、いわゆる「震源を特定しない」ところのあれ(「内陸地殻内地震」)が一番大きな値になったということであって、そっちを考慮してないということは私はないと思いますよ」 Q:(規制委は)九州電力の言い分を認めただけだととらえられもするが、判断をしたということでよろしいでしょうか。結果的に九電と同じ考え方になったと? 田中俊一委員長: 「九電と同じというんじゃなくて、九電が最初言ってきたことについて、色々なこちらサイドからの要求があって、結果、最終的にはこちらの指導というか、意見に従ってもらったということで。何をもって九電が言っている通りになっているというんですか。そういう意味でYouTube(審査会合の動画)を全部見返してくださいということです。議論の過程が全部そこにあるから。」 番組は、公開されている63回分の審査会合の議事録を、全て見直してみたものの、「プレート間地震」と「海洋プレート内地震」を検討から外すという九州電力の方針に、規制委員会側が質問やコメントをしている箇所は見つからなかった。 Q:その場に出ている規制庁側からは、そのこと(2つの地震を除いた)に関して何の発話もなかったと。(審査会合での)議論がなかったという意味合いということですか? 原子力規制委員会・田中俊一委員長: 「い やあの、詳細なところまでは私も全部知りませんけれども、色々なヒアリングも含めて、きちっとそこは議論をしたうえで、当時は島崎(邦彦)委員と規制庁職 員がよく会合を持って、色々検討されていたというのは承知しておりますので、そういう中で、きちっとそういう判断をされたんだと」 – 田中委員長は、当初は「公開の審査会合の場で議論した」としていたが、この日、一転して「非公開のヒアリングの場で行った」とした。 – 南海トラフ地震について、検討したかどうか、担当者にも聞いた。 Q:南海トラフ地震による検討用地震は策定されませんでしたか? 原子力規制庁・地震・津波安全対策担当 小林勝安全規制管理官: 「複数選定されたものが市来断層帯とか、そういったもの(「内陸地殻内地震」)が一番やっぱり敷地に影響が大きいんじゃないかということで選んでいますので。全く検討していないということではなくて、スクリーニング(選別)しているということです」 – 担当者は、内部で選別した結果だとするが、南海トラフ巨大地震などをどのようなやりとりがあって外したのか、最後まで説明はなかった。 – 福島の事故の教訓を踏まえ、審査の透明性や説明責任が必要なのではないか。 – 石橋克彦氏(元国会事故調査員(神戸大学名誉教授)) 「(川内原発適合性審査は)最初の事例ですから、そこは今後の模範となるべく、きちんと丁寧にやってもらわなくては困るのに、それがなされていないというのはやっぱりこれは(審査を)やり直さなくてはいけないような大きな問題だと思います。」 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 古舘 キャスター: 「いかがですか、恵村さん」 恵村論説委員: 「はい、あの、VTRでお話くださいました石橋先生ですけども、阪神大震災の後の1997年に『原発震災』ということをご指摘されてるんですよね。通常の震災に、原発災害が複合して起きるものを『原発震災』と、これが起こるということに警鐘を鳴らしておられたんです。外 部電源が止まる、冷却水が失われる、炉心溶融が起きる、水素爆発が起きて、原発の建屋とか格納容器が破壊される、そして膨大な人々が自宅に戻れなくなる、 ということを想定してご指摘なさってるんですね。大きな地震が起きるたびに、原発の規制というのは確かに強化されてます。福島の事故の後も、津波対策を中 心に規制が強化されてるんですけれども、一方で、津波対策でも、地震の揺れの想定自体も、それから、火山の噴火への備えについても、科学界からなお多くの 疑問が指摘されてるわけですよね。それも事実なんです。福島の原発震災を体験した私たちは、同じ過ちを繰り返してはいけないと思うんですね。科学界からの 警鐘を軽く見るということは、決して許されないというふうに私は思っています」 古舘 キャスター: 「規制委員会も、安全基準、安全ではなくて、『新』規制基準を満たしているかどうかを我々は調べているんであってというような、ある種、安全という言葉から一定の距離を置いたスタンスを取ってますよね。で、 それでいいますと、政府側は、世界最高水準の新しい安全基準を乗り越えたものだけ、再稼働を認めていくんだというようなロジック、論理は、ちょっとこれ は、地震大国で、先ほどの専門の地震学者の先生のお話をずーっと耳をそばだてて聞いていると、政府の文言に疑問を感じるのが正直なところです」 恵 村論説委員: 「そうですね、政府の言ってることと、規制委員会の言ってることにはずれがありますね、安全の捉え方について。やはり、疑問があること、わから ないことは、安全側に立って物事を考えていく、っていうことが基本にないといけないと思いますね。それがやっぱり、福島の事故の大きな教訓だろうというふ うに思います」 |
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