SJJA&WSJPOの【西サハラ最新情報】No130 - 英国新労働党党首は、お友達! -
- 2015年 9月 25日
- 評論・紹介・意見
- サハラ平田伊都子
「待つのが人生」これが、ここ一年の西サハラ記録映画のテーマです。
2014年8月に英国Vice News(バイスニュース)は、 The Sahara’s Forgotten War(サハラの忘れられた戦争)と題したドキュメンタリーを発表しました。 2015年3月11日、ドイツのクリスチャン・グロッパー映像作家が、「ラスト・コロニー、忘れられた西サハラの人々」という題名の一時間ドキュメンタリーを初公開しました。 <待つだけの人生>という題の、ブラジル人ララ・リーによる西サハラ難民キャンプのドキュメンタリーは、2015年7月11日に、西サハラ支援団体の集会で上映されました。 「まだ、待つのかよ~」と、うんざりしていたら、突然、国連事務総長個人特使が西サハラ難民キャンプに現れました。 そして、長年の親友コービンが、英国労働党党首になったのです。
(1)ロス国連事務総長個人特使、難民キャンプ視察:
恒例の国連総会に先駆けて、クリストファー・ロス国連事務総長西サハラ個人特使が9月5、6、7日と難民キャンプを訪問した。本来ならこの時期に、モロッコ占領地・西サハラ、モロッコ、モーリタニア、アルジェリアなどの関係周辺地域を視察するのだが、モロッコの妨害にあって、アルジェリアにある西サハラ難民政府ポリサリオ訪問に絞らざるをえなかったようだ。ロス個人特使は難民キャンプで、西サハラ難民政府高官や西サハラ側国連交渉団と会談し、パン・ギムン国連事務総長が今年の末にこの地域を訪問することを告げた。一方の西サハラ側は、早急に国連西サハラ住民投票の具体的な日程を決めるようにと、迫った。
(2)西サハラ難民政府外務大臣モハマド・サレム・ワリド・サレク:
2015年9月8日、アルジェリアの首都アルジェでワリド西サハラ難民政府外務大臣は、記者会見でロス国連総長個人特使に個人特使に直接電話をして、強く要望したことを明かした。外務大臣は、「ロス国連総長個人特使殿、あなたは西サハラ民族自決行使を実現しようと努力しているのに、モロッコが妨害している。そのことを正直に明かす必要がある。それは2点あって、第一に、モロッコが1991年に提案した国連の和平解決案を尊重していないこと。第二に、国連安保理が設定し両当事国が承認したMINURSO国連西サハラ住民投票を、無視している、この2点だ」と、ロス特使を叱咤激励したそうだ。
(3)ジェレミー・コービン新英国労働党党首が誕生:
「西サハラ超党派議員連盟会長のジェレミー・コービン下院議員(66)が、英国労働党党首に選ばれた」と、西サハラ難民政府から喜びの声が届いた。「新党首は、サハラ住民の苦難と民族自決権や独立を、変わらず支援してくれている。彼は、西サハラ難民キャンプの状況をよく知っているし、西サハラ占領地視察も試みた。残念ながらモロッコから拒否されたが、彼は、モロッコ占領地・西サハラの現状を熟知している」
コービン新党首が勝利した後、最初に訪れたのは難民や移民への支援を訴えるロンドン・デモだった。<Refugees Welcome Here(難民の皆さん、ようこそここへ)>のプラカードに囲まれて、コービン新党首は英国内の格差の解消を訴えたほか、世界の難民に対しての支援を約束し、人権重視や反戦思想を強調した。労働党のブレア政権が2003年にアメリカとともに参戦したイラク戦争に一貫して反対し、労働党が政権を奪還した1997年以降、議会で党の方針に反対する提案を500回以上、出した。
(4)CORCASコルカス(王立サハラ問題諮問協議会):
2015年9月14日からジュネーブで始まった国連人権委員会に、モロッコもCORCASコルカス(王立サハラ問題諮問協議会)を代表団として送った。コルカスによると、「モハメド・アウジャル国連ジュネーブ・モロッコ大使閣下が、国連人権委員会事務所が4月訪問(モロッコ)の報告書に関して、敵である分離主義者たちの意図的な悪巧みを盛り込んでいると、批判された。我々(コルカス)の(ジュネーブ国連人権委員会)訪問は、人権委員会と親密な関係があるモロッコ王国のお召しによるものだ」と、コルカスの国連人権委員会訪問を正当化している。
(5)西サハラ人が訴える国連人権委員会:
9月14日からジュネーブで始まった第30回国連人権委員会年次会合に、モロッコ占領地・西サハラ住民も含め、アルジェリアにある西サハラ難民キャンプの難民も参加する。
西サハラ代表団は委員会で、モロッコ占領地でのモロッコ占領当局による西サハラ住民人権侵害とモロッコ監獄に不法収容されている西サハラ政治囚の虐待を訴える。さらに、諸々の人権問題や民族自決権問題を解決すべく国連安保理が約束した、<国連西サハラ住民投票>の即時実施を促す。
ゼイド・ラード・アルフセイン国連人権高等弁務官は、「最近、モロッコやモロッコ占領地・西サハラや難民キャンプなどに職員を派遣したが、モロッコの妨害にあった」と、語っている。
ニューヨーク国連本部では、2015年9月⒖日から国連年次総会が始まった。
スイス・ジュネーブ国連では、9月14日から国連人権委員会年次会合が始まった。 国連総会では加盟国首脳たちが基調演説を行い、華々しい。 が、ジュネーブ国連人権会合の方は、閑散としている。 やっと、拉致問題対策本部が<北朝鮮による拉致を含む人権侵害に関する国際シンポジウム>をジュネーブで開催してから、この地味な会合に日本人も関心を示すようになってきた。
ヨーロッパ人の心を、難民の人々が揺さぶっています。
シリア、イラク、クルド、アフリカから脱走してきた難民の人々の悲惨な姿を見るのは、辛いものがあります。 が、この難民の人たちには、帰る国があります。 でも、アルジェリアのサハラ砂漠で40年間、テント生活を強いられている西サハラ難民には、帰る国がありません。 一日も早く、国連安保理は約束した<国連西サハラ住民投票>を実施してください。
WSJPO 西サハラ政府・日本代表事務所 所長:川名敏之 2015年9月18日
SJJA(サハラ・ジャパン・ジャーナリスト・アソシエーション)代表:平田伊都子
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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