福島原発、燃料デブリ<地下>取り出し案
- 2016年 2月 28日
- 評論・紹介・意見
- 岩田昌征
SVCF(福島原発行動隊)なる原発賛成・反対の立場を超えて1F原発事故収束を目指す公益社団法人がある。2011年(平成23年)4月に故山田恭輝氏(住友金属技師)が結成した。放射能下の収束作業を放射能障害の甚大な若者に代わって60歳以上の退役技能者・技術者がある意味決死で実行せんとする義勇隊であった。志はあっても、技能も技術もない者は、正隊員ではなく、賛助隊員であった。私は1960年安保闘争期駒場東大の一兵卒であり、山田氏はブント系の師団長であった。1960年1月15日岸訪米阻止のために羽田空港に東大駒場から出発したバス5台(or4台)、私達兵卒が乗り込んだバスは、山田氏が事前に手配したものだ。そんな因縁で行動隊にも2011年4月から賛助会員となっていた。その頃は、技能者・技術者は命を払う正隊員、私のような技能も技術もない文系の口舌の徒は会費を払う賛助会員であった。その後情勢の変化もあり、現場で働く可能性もなくなったが、SVCFの活動は時の推移に適応した形で続いており、民主党・牧山ひろえ参議院議員の助力で殆ど毎月参議院議員会館で開かれる院内集会も継続している。但し、かつてのように数百人規模ではなく、数十人、十数人ではある。出席者数の低減傾向は良いことだ。福島の収束作業現場で大事故が起こっていない事の反映なのだから。
院内集会では牧山ひろえ議員の助力によって東電の担当者や関連官庁の担当官が数人来て収束作業の現況を説明してくれる事がある。今回は2月25日の事だった。私は、技術・工学については何も知らない文系の人間である。ではあるが、1F廃炉作業の要ともいえる1~3号機のデブリ取り出しに関して可能な方向がすべて検討されているように思われない。現在、燃料デブリ取り出し方法に二つが想定されている。①原子炉格納容器に水を張って、デブリを冠水させた状態で取り出す。水中で取り出す。②水を張らないで取り出す。気中で取り出す。燃料デブリ取り出し場所に二つが想定されている。(1)格納容器の上から取り出す。(2)格納容器の横から取り出す。水中の場合、止水と耐震性が課題となる。気中の場合、放射性ダスト飛散と放射線遮蔽が課題となる。上記の方法はすべて地上で行われる。地下の視点がない。原子炉の直下に頑健な地下空間(地下道か地下広場)を建造し、下から格納容器底部を掘削して、穴を開け、燃料デブリを落下させる。あるいは、すでに格納容器底部が熔けており、燃料デブリが外部へ貫き抜けているならば、掘削の手間がはぶける。地下空間に巨大な移動式水槽を設けるか、水なしのベルトコンベアーを設けるか。地下における水中と気中の差である。その他必要な設備機材は事前に地下空間に用意できよう。地下空間建設における排水・止水は、丹那トンネル建設以来の技術集積がある。大気中への放射性ダスト飛散のリスクはない。止水に凍土壁が必要となるとしても、現行の如く巨大でなくてもよい。現在予定されている方法では、事前に建屋内の瓦礫撤去、除染、半壊建屋の架構・改造、複雑な条件下で作動するロボットの設計・製作等が取り出しの事前条件である。地下空間方式ならば、かかる前提条件なしに、ロボットも単純強力なものを作ればよい。
以上は、文系口舌の徒の妄想・夢想・空想かも知れない。ふりかえって見れば、山本五十六の真珠湾作戦もまた当時の海軍の日本防衛作戦の常識外であった。建屋内における燃料デブリ取り出しが常識的作戦、地下空間からの取り出しが真珠湾作戦と言うことにならないか。妄言多罪。
平成28年2月27日
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion5929:160228〕
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