「オー! マイゴッド! 女王が本当にあんなことを言ったの?」
- 2019年 5月 3日
- 評論・紹介・意見
- 熊王信之
世は正に新元号で盛り上がっているかのようです。 です、と書きましたのは、我が家の近辺では例年のゴールデン・ウィークと変わりが無いからです。 日々出会う知人達と交わす会話も例年通りで何の変化もありません。
官公庁等では、文書整理の煩わしい作業があるでしょうが、市井の一般人には関わりがありません。 西暦が一般人にも行き渡り、私自身が私事で使うのは西暦にしているからでもあります。 ただ、確定申告等の公的機関へ提出する文書は、様式自体が元号ですので、西暦・和暦変換表は必須ですが。 この国での出来事と世界の出来事が全く違う世界の出来事のようになっているのが不便と言えば不便です。 昭和生まれで平成、令和、と合計三つの年号を経ている身にとっては、歴史を見る眼が微妙に陰るのが困るのです。
さて、この間にマスコミでの大本営発表には接していませんので騒動の実際は分かりませんが、欧米、中でも英国の王室に関わり少し思い出したことがあります。
この国ではバブル経済華やかなりし頃に、スー・タウンゼント(Sue Townsend)と言う女流作家が書かれた「女王様とわたし」(The Queen and I)と言う小説があります。
概略は、英国風ブラック・ユーモアが満載の喜劇です。 それも特大の。 何と英国で総選挙の結果、王制廃止が決り、バッキンガム宮殿から女王様ご一統が立ち退きになり、一般市民が住まう地域に引っ越しされて、自力で生活をしなければならなくなるのです。 しかも女王様は、逞しくも前向きに一般庶民と交わり、そのせいでドタバタが生じるのですが、作者の眼が女王様には好意的なのです。 旧王室の男性陣には辛辣ですが。
私は読んでいて、周囲の眼も構わず大声で笑ったものでした。 この小説、勿論、ベスト・セラーになりました。
作者は、共和制論者でしたが、生い立ちを知れば当然と思います。 満足な教育も受けられずとも自力で劇作家になり、また小説も王室を敵視せず温かい眼で喜劇に仕立てられたのです。 長生きされて他にも特大の喜劇を書いて欲しかったものです。
次に思い出したのは、BBCのテレビ映画です。 “The Student Prince ”(「学生王子」とでも言のでしょう。)と言う1997年のテレビ映画です。
ロブソン・グリーン(Robson Green)扮する警官が末の王子のボデイ・ガードに任命されてケンブリッジ大学に赴き、少し世を拗ねた気配の王子と二人して米国からの女性留学生を巡る恋愛騒動でドタバタの末に、ボデイ・ガードは、米国人留学生と結ばれ、王子は、自分を慕う女学生の存在に気付く、と言う目出度し・目出度し、の結末なのです。
最終章では、文学の講義中に王子に代わって担当教授の質問に答えたボデイ・ガードが文学的才能を教授に見出されて一念発起し文学の教授となり、王子は、と言えば、何と、彼女と共に王制廃止運動に邁進する、と描かれます。 再度書きますが、これは、英国BBCのテレビ映画です。
BBCで言えば、最近では、Tracey Breaks the News(BBC One)と言う番組が人気です。 テリーザ・メイ首相であろうが、トランプ大統領であろうが、風刺の対象になります。 以下は、You-Tubeからの一例です。
President Trump says British PM Theresa May is not hot – Tracey Breaks the News ? BBC https://www.youtube.com/watch?v=Zdn5WJNNTwk
民放のITVも負けていません。 凄く人気のあるBGT(Britain’s Got Talent)と言うタレント発掘番組では、物真似に長けた人達も良く出られます。 今年の番組では、女王(?)が出られました。
OMG! Did the Queen just say that?! | Auditions | BGT 2019 https://www.youtube.com/watch?v=zYdF7BWxGgk
こうして少し見て分るとおりに、彼の地では、憲法の条文(英国は不文憲法の国ですが)を見るまでも無く、言論・出版の自由が本当に確保されているのが分かります。 実際の共和制を目指す政治勢力も存在しますし、英連邦の中の豪州のように、女王を君主とせず共和制に移行するか否かを選挙で問うた国も存在します。
全てを包摂して民主主義の原理に則り社会を構築している国が羨ましい限りです。 何時になれば、英国並みになるのでしょうか、この国は。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://chikyuza.net/
〔opinion8614:190503〕
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