参院選の深層の争点は日米安保と天皇制なのだが、表層では…
- 2019年 7月 16日
- 時代をみる
- 加藤哲郎選挙
2019.7.15 まだ参院選が続いており、東京は天候不順が続き体調も思わしくないので、マイナーチェンジにとどめ、前回更新を残しておきます。現在すすんでいる国政選挙の光景は、この国の民主主義の悲しい現実です。特に権力を監視し批判するジャーナリズムの衰退、政治を考える余裕も時間も奪われた人々、自分の生活感覚にフィットした候補者・政党を見出すことができず投票日の天気と気分次第とあきらめている人々、野党攻撃と憲法改正だけ威勢のいい首相と官邸の情報操作に主権者の一票を委ねてしまいそうな若者ーーもとより「深層の争点」=日米安保と象徴天皇制を正面から取り上げる政党・候補者は見られません。いや、いたとしても、テレビや新聞には出てきません。内政で国民から不満や不安が寄せられ批判にさらされた時、国外に「仮想敵」を作って批判をそらし、支持を調達しようとするのは、権力者の常道です。そのスケープゴートが、3年前の前回参院選では北朝鮮、今回は韓国です。より深刻なホルムズ海峡「有志連合」自衛隊派遣の問題は、表層の争点にもならず。世界から見れば異様な差別的反韓・嫌韓報道・言説が溢れていますが、心ある人には、テレビでも新聞でも宣伝されない最新の劇場映画「新聞記者」をオススメします。「この国の民主主義は形だけでいい」という台詞の問いかける意味、なぜこの映画がマスコミで取り上げられないかも分かります。
ハンセン病家族訴訟に賠償を命じた熊本地裁判決に、国が控訴を断念したのは明るいニュース。しかし「おわびと反省」の「首相談話」と共に出された「政府声明」を合わせて見ると、どう読んでも「心からの反省」どころか、選挙戦最中のパフォーマンスの仕掛けが透けてみえます。旧優生保護法強制不妊手術の被害者裁判等への波及をあらかじめ法的にガードし、むしろ「首相談話」前日に一面トップで控訴の見通しを報じた某大新聞に「誤報」の打撃を与えるための情報戦があった可能性大です。投票日直前には、首相がハンセン病家族訴訟原告団と会見して「見せ場」を作る可能性もあります。かつての2001年ハンセン病国家賠償訴訟で、当時の小泉首相の控訴断念が参院選大勝を用意したのにあやかって。沖縄米軍基地・地位協定の問題も、ローカルな争点にされてしまいました。この問題を「深層の争点」から考えるために、岩波現代文庫の新刊、国場幸太郎『沖縄の歩み』をオススメします。かつて一緒に仕事をした故・国場幸太郎さんが、青少年向けに書いた本で、「本土」と沖縄の選挙の違い、なぜ沖縄には自立した抵抗運動とジャーナリズムが今日まで続いているのかを、考えさせられます。
初出:加藤哲郎の「ネチズン・カレッジ』より許可を得て転載 http://netizen.html.xdomain.jp/home.html
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