『歴史のための弁明―歴史家の仕事―』マルク・ブロック著 讃井鉄男訳(岩波書店1965) 歴史家の仕事とはどんなことであろうか?ふとこういう疑問が浮かんでくることがある。一般的に考えるなら、それは発掘調査されたもの(原資料
本文を読むカルチャーの執筆一覧
湘 北 拙 句 抄
著者: 霧野 漠《日々の彼方に》 ブルネイの 密林の奥 蘭ひらく 白鷺(しらさぎ)が 渚歩みて 抓(つま)む魚 風紋に 彼(か)のひと歩みし 跡探し 飲み帰り 冴える星空 桜花(さくらばな) 夜叉(やしゃ)来たれ 桜吹雪
本文を読む抜き書き典籍紹介・「暴」引断簡零墨(1‐1)
著者: 山川哲『歴史のための弁明―歴史家の仕事―』マルク・ブロック著 讃井鉄男訳(岩波書店1965) *新版『歴史のための弁明』松村 剛訳(岩波書店2004):マルク・ブロックの長男により校正された新たなテキストに基づいて翻訳されたも
本文を読む2016年の歌会始は、変わったか
著者: 内野光子不覚にも 前の日までは覚えていたのだが、洗濯や布団干しをしているうちに、1月14日「歌会始」のテレビの視聴も録画も忘れてしまった。その日の夕刊と翌日の朝刊で、その様子を知ることになる。 その新聞報道によれば、応募歌数は1
本文を読む書評『トラや』南木佳士・著 文藝春秋・刊
著者: 阿部浪子トラちゃんが死んだ。焼香におとずれた近所の人に、正座した息子たちは、涙をシャツのそででふきながらあいさつする。この場面に思わず、わたしはもらい泣きしていた。 猫のトラは、小学生の息子たちが成人するまで一家統合の要だっ
本文を読むささや句会 第20回 2015年12月18日金曜日
著者: 公子結ふ食処 楽屋(ささや)にて 評者 新海あぐり 日めくりをめくり続けて駆け抜けり 奥野 皐 ・めくりめくりぬけり、何というスピード感。その日の絵を見ている暇も無いなんて! マスクして敗北の人帰国せ
本文を読むナチと軍国日本のシンボル―反感受けNY地下鉄広告撤去
著者: 隅井孝雄アマゾンがインターネットテレビ放送のために制作した作品の広告に対し、ニューヨーク州知事や市長が異議を唱えたことで撤去され、物議を醸している。 このテレビ映画は、ナチや日本が第二次大戦で勝利したあとアメリカを支配すると
本文を読む書評『日の砦』黒井千次・著 講談社・刊
著者: 阿部浪子黒井千次氏の連作短編は、サラリーマンだった主人公の、定年退職後の日常が展開する。 近隣を歩いては、彼は街のイメージを発見する。こんな地域をバックに暮らしていたのか、驚きもある。また、家族との団らんが彼を満ち足りた気分
本文を読む原節子の戦争と平和(4) ― 伊丹万作と家城巳代治 ―
著者: 半澤健市「原節子の戦争と平和」から、十五年戦争に関する映画人の戦争責任の問題にたどり着いた。しつこいようだが、映画が―今ならテレビが―、百万人規模に影響を与えるから考察しておきたいのである。 GHQによる1946年1月の公職追
本文を読む書評『雨のオクターブ・サンデー』難波田節子・著 鳥影社・刊
著者: 阿部浪子難波田節子氏の描く小説集からは、心と心の触れ合いが浮上してくる。私たちは自分が、他人からうける影響は手につかめても、他人にあたえるそれはわかりにくいものだ。日本と異国を舞台にしながら、人と人との交流をとおして、6編のド
本文を読む原節子の戦争と平和(3) ―俳優は「着せ替え人形」なのか―
著者: 半澤健市「原節子の戦争と平和」を書いていると関連する幾つかのテーマに導かれる。 一つは、俳優は職業の社会的な意味をどう考えているのか。 二つは、日本の映画人は戦争と平和をどう考えてきたのか。 三つは、映画観客はそういう問題をど
本文を読む原節子の戦争と平和(2) ― ナチスのアイドルとなった美少女 ―
著者: 半澤健市原節子の戦争は『新しき土』(1937年)から始まった。 日独合作の日本最初の本格的「国際映画」である。1920年生まれの原節子が、横浜高等女学校をやめて女優になったのは1935年である。家庭の経済的事情と義兄の映画監督
本文を読む『動かぬが勝』佐江衆一・著 新潮社・刊
著者: 阿部浪子江戸を舞台に展開する人生ドラマがおもしろい。著者佐江衆一氏の7つの短編は、読みながしては、そのすばらしさは味わえないだろう。 表題作「動かぬが勝」には、商人だった隠居が身をもって気づいていくプロセスが描かれる。60歳
本文を読む原節子の戦争と平和 ― 小津は「大東亜戦争はなかった」と考えたか ―
著者: 半澤健市ドイツの日刊紙『ディ・ヴェルト(世界)』は映画女優原節子の訃報記事に「日本人に対しては西洋的な美を、西洋には理想の日本人女性を体現した」と書いた(『東京新聞』、2015年11月27日夕刊、「共同」)。これは多くの日本人
本文を読むささや句会 第19回 2015年11月27日金曜日
著者: 公子結ふ食処 楽屋(ささや)にて 秋日和昭和を連れて女優逝く 奥野 皐 弾痕に冬薔薇挿すテロの街 新海泰子 ジャズに乗り蔵書整理や暮早し 合沢舞祥 春画展に倦みて夕の芋
本文を読む辺見庸Ⅱ―わたしの気になる人⑩
著者: 阿部浪子「辺見庸ブログ」が11月10日から再開した。「私事片々」の写真は、またも、あざやかだ。さまざまな、空のいろと雲のかたちに、かすかに陽が差している。私たちに何かを問うてくる。訴えかけてもくる。 とりわけ、わたしは「日録1
本文を読む『愛と痛み 死刑をめぐって』辺見庸・著 毎日新聞社・刊
著者: 阿部浪子なぜ考えようとしないのか。著者、辺見庸氏は、個をなくし世間に埋没して生きる私たちの日常の怠惰を、激しくたたいてくる。個がないところに愛はありえないと言う。 著者は、脳障害で入院中に愛と痛みについて思いをめぐらし、無価
本文を読む小説 「明日の朝」 (その17:最終回)
著者: 川元祥一17 次の日彼は学校に寄らずにまっすぐアパートに帰った。学校で受けるべき授業はなかった。気休めに山岡たちとだべっていようかという気持ちがあった。しかしそれよりも何よりも、自分の部屋でゆっくり眠りたかった。そのうえで、今の
本文を読む小説 「明日の朝」 (その16)
著者: 川元祥一16 一つの奇跡はどのように続くだろうかー。続くのか、続かないのかー。確かに聖子の前で一つの選択をした。そしてその時、脳裡に千津子がいたのは確かだった。しかしだからといって、千津子と自分との間で何がどのように続くのか続か
本文を読む焚書坑儒の反復
著者: 宇波彰去る2015年9月13日に,私は静岡県立美術館で「富士山-信仰と芸術展」を見た。富士山がいかに日本人の信仰・芸術とかかわっているかが少しわかった。また、富士山を描く絵は、雪舟が原点になっていることも知った。雪舟は,富士山
本文を読む小説 「明日の朝」 (その15)
著者: 川元祥一15 昨夜は眠れなかった。あれから一人駅前に出て焼き鳥屋に入った。晩飯代わりに焼き鳥を食い酒を飲んだ。いくら飲んでも意識が冴えた。聖子のことが気にならないことはなかった。しかしもう取り返しのつかないことだろう。千津子
本文を読む小説 「明日の朝」 (その14)
著者: 川元祥一14 ノースリーブの肩口からのびる柔らかい腕が優しくて、まぶしい感じだった。朝付けていた薄いカーデガンをとって、代わりに胸に木製のネックレス姿だった。おしゃれに気を配ったこんなに活発な女の子が自分のアパートを目指して来る
本文を読むひとすじに生きて尊し
著者: 鎌倉矩子―平成おうなつれづれ草(9)― ことし9月半ば、友人Nが亡くなった。彼は私の小学校時代の同級生である。 私がNに再会したのは今から6年ほど前、小学校卒業後57年を経てのことである。その頃私は、長い勤務生活を終えて故郷H村
本文を読む小説 「明日の朝」 (その13)
著者: 川元祥一13 突然異物が進入したかのような鋭い電気鋸の音が響き、煙とも埃とも見分けのつかない白いものが場内に舞い上がる。平崎はタイムレコーダーを肩に掛けてリンクサイドを歩いた。いつもなら今頃、暗い天井に小さな星が輝きショパンか
本文を読むささや句会 第18回 2015年10月23日金曜日
著者: 公子結ふ食処 楽屋(ささや)にて 大屋根の反りなぞりゆく秋の雨 小宮桃林 地下足袋を洗ひて秋を惜しみけり 新海あぐり 夜半の秋枕辺におくアンデルセン
本文を読む戦後70年の哀しさ(2) ― 吉田満のエッセイを読み返して ―
著者: 半澤健市《吉田満の「遺書」を繰り返し読む》 戦艦「大和」の沖縄特攻に生き残った吉田満(よしだ・みつる、1923~1979年)は、雑誌に載せるエッセイをベッドで夫人に口述していた。1979年秋のことである。それは彼の絶筆となった。
本文を読む小説 「明日の朝」 (その12)
著者: 川元祥一12 フロントの前の広場に人が群れて溜まっていた。先々週のチンピラ騒動と違って、やたらと人が多い。入場制限をしているように見えたが、この時期入場制限など考えられなかった。建物の中で障害事件でもあったのかー。 平崎は人
本文を読む『陽子の一日』南木佳士・著 文藝春秋・刊
著者: 阿部浪子主人公の「陽子」は、信州の総合病院に勤めて30年になる。男をあてにせず未婚をとおして育てあげた男子は保健師になり、独立した。現在、陽子は独り暮らしだ。病院では外来と人間ドックの診療に専念する。還暦をむかえ自身の周りに築
本文を読む小説 「明日の朝」 (その11)
著者: 川元祥一11 小春日和の中、薄茶色のスカートをゆらして歩く千津子は、さっきの糞真面目な表情を忘れ、解放感を楽しんでいるかのようだった。彼女が歩いてみたいと言うので、武松を出た後、二人は外掘通りを八重洲に向かった。銀座から東京駅
本文を読む小説 「明日の朝」 (その10)
著者: 川元祥一10 上腕に肩を触れてくる千津子を意識しながら彼は銀座の人通りを見ていた。乾いた光と影。一つの奇蹟がつづいて胸をふくらませていた。こんな奇蹟がどこまでつづくのかわからないのだったが、彼はその一瞬に幸運を感じていた。
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