生きた言語とは何か、というより、言語の生死という問いかけがあるとしたら、それは何を根拠にし、わたしたちをどこへ向かわせるのか。概念なるものは脱概念というところから逆にたどることもできる。もし、概念をぼやけさせることがで
本文を読むカルチャーの執筆一覧
ドイツ徒然(その1):シャッター通り商店街とミニ開発と地価高騰
著者: 合澤 清新しい住居の環境 ドイツに来て既に10日以上たった。今回の居所は、いつものゲッティンゲンから車で約20分、Hardegsen(ハーデクセン)という小さな、しかし実に美しい町である。 ここは保養地とキャンプ地を兼ねた所で、
本文を読む紹介:日本の教育と社会はどこへ行くのか(藤田英典 『世界 2014.7』より)
著者: 田中一郎「原発は政治のみの力で動いている(何の合理性も経済性も倫理性もない)。だから政治を変えれば原発は止まる」、これは上関原発建設に反対する県民大集会(2014年3月)の折りに鎌田慧氏が演説で話した一節である。だから政治を変え
本文を読む書評 『閉ざされた言語空間』 江藤淳著
著者: 宮内広利わたしたちは、戦後体験の意味するところを、敗戦によって求心するシンボルをなくしたナショナリズムの行方の問題として、私的感性・意志の横への拡散化の過程ととらえてきた。その意味からいうと、敗戦はまちがいなく、日本人すべての胸
本文を読むパロディ -タケシの独断「悪代官と悪徳商人」-
著者: 盛田常夫昔から言うじゃない、「魚心あれば水心」ってね。悪徳商人がお代官様の袖の下に、そうっと金子(きんす)を忍ばせてさ。「竹端(たけはし)様、件(くだん)の人足派遣の案件、当方に回るようによろしくお願いします」ってね。「分って
本文を読む「上野」、「皇室」、「大震災」を重ね、ホームレスと被災者の痛苦をつなぎ合わせて描く 〔書評〕柳美里著『JR上野駅公園口』
著者: 雨宮由希夫〔書評〕柳美里著『JR上野駅公園口』(河出書房新社、¥1400+税) 「あゝ上野駅」という唄がある。作詞・関口義明、作曲・荒井英一、歌唱・伊沢八郎で、東京オリンピックが開催された昭和39年(1964)の5月に発表された。
本文を読むサッカーW杯が教えてくれたこと
著者: 盛田常夫勝負事は実力だけでなく、運も左右する。前回の南アW杯ではどん引き守備を基本にしたカウンター戦法で、松井のセンターリングに本田が合わせた1本と、デンマーク戦の本田と遠藤の2本のフリーキックがドンピシャで嵌るという運が味方
本文を読む書評 『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治著
著者: 宮内広利宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読むと、学問とは何か、宗教とは何かを死の底に触れるような場所から教えてくれる場面にでくわす。宮沢賢治があたかも死という背景の中に浮かんだところから、人間がものを考えることは一体何なのかを問い
本文を読む書評 『歎異抄』を読む④
著者: 宮内広利親鸞における「信」と「不信」の隙間は、いわば、紙一重である。親鸞にとって「信」は、「信」と「不信」とを同時に見渡すことのできる視界を獲得していたからだ。そこからみると、「信」と「不信」は「知」と「愚」とともに全く等価に
本文を読む『評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ』
著者: 阿部浪子『評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ』岩橋邦枝・著 新潮社・刊 野上彌生子は70余年にわたり小説、評論、随筆を書きつづけた。著者の岩橋邦枝氏は、彼女の遺作「森」を読んで、この豊穣な傑作を百歳ちかい人が書いたのかと驚き、そ
本文を読む書評 『歎異抄』を読む③
著者: 宮内広利死と鼻をつきあわせたような生活状態に投げこまれた衆生に対面して、どんな理念が衆生を救済できるかという親鸞の答えは、どんなにかかわっても人が救済される保証は得られないという絶望が先にあった。人々は、生きているあいだ救済さ
本文を読む自著を語る:『北一輝-革命思想として読む』
著者: 古賀 暹*古賀暹著『北一輝―革命思想として読む』(御茶の水書房2014.6.1刊 4600円+税) 北一輝に関する書籍は、私が知る限りでも数多く存在する。雑誌などに発表された短い評論を加えると、その数は膨大なものに上るだろう。こ
本文を読む書評 『歎異抄』を読む②
著者: 宮内広利親鸞の時代は天災による飢餓や貧困、病苦、戦乱によって、いわば死が日常化していた。それは、たとえば、念仏を称える間もなく急死する人々にとって、往生するための念仏は一声でよいのかという、一見、矮小といってもよい問いかけだが
本文を読む書評 『ハイ・イメージ論』 吉本隆明著
著者: 宮内広利≪価値は自然の手段や道具としての有用な変更でもたらされるもので、価値の普遍性は役にたつ交換によってたもたれるとかんがえる『資本論』のマルクスの価値概念には、いつももの足りなさがつきまとう。素材や物体のさまざまな形態として
本文を読む書評 『歎異抄』を読む①
著者: 宮内広利親鸞の教えは、四十八願をたて修行を実践して仏となった阿弥陀仏が、極楽浄土を建立し、念仏という名号を衆生に与えたことにはじまるとされている。親鸞によれば、弥陀仏の本願によって救われるのは老若男女を問わない。また、善人や悪
本文を読む書評:井上理恵編著『木下順二の世界――敗戦日本と向き合って』
著者: 関谷由美子編著者井上理恵は「あとがき」に「今回改めて全集を読み返して思いを新たにしたが、木下の主張が余りにも現在のこの国の在りようにピッタリとはまることに驚いた。と同時に、これまで把捉できなかったものが、明らかな相貌を帯びて迫って
本文を読む書評 イメージとしての敗戦
著者: 宮内広利ひとがあるイメージを好きであったり嫌いであったりすることの意味はなんだろう、というような任意の設問をたててみる。そうすると、そのイメージに込められた人々の体験やこころの起伏によりそって、変化や屈折がプリズムのように放射
本文を読むブラウン管の中のスパイたち
著者: とら猫イーチ 改め 熊王 信之1960年代テレビ番組(洋画)では、西部劇が全盛であったことは、以前の投稿で少し書いたのですが、それ以外で当時、人気を博していた番組は、西部劇よりは少なかったもののスパイものが人気でした。 その多くは、米国からのものでし
本文を読む書評:長浜功著『「啄木日記」公刊過程の真相―知られざる裏面の検証』
著者: 阿部浪子「オレが死んだら日記は必ず焼いてくれ」。石川啄木は親友に託して1912年に他界している。しかし日記の焼却は遠のき、戦後、娘の夫によって公刊されるのであった。 著者の長浜功氏は、それまでの波瀾万丈の過程をじつに丹念にたど
本文を読む書評 神話の解体=福音書
著者: 宮内広利人間の生来の悲劇をさぐりあてたかのようなバタイユの考え方にとっては、「最高存在」の子であるイエス・キリストが肉体をもって実在した人物であったかどうかということは、とりたてて意味をもたない。イエス・キリストが実在しなかっ
本文を読む西部劇の思い出
著者: とら猫イーチ私は、西部劇が好きでした。 過去形で書かねばならないのは、近年になって、ハリウッドから西部劇の新作が全く世に出なくなったからですが、勿論のことに今でも好きなことには変わりはありません。 しかしながら、その昔、場末の映画館
本文を読むコバケン・レジェンド ―小林研一郎ハンガリー・デビュー40周年―
著者: 盛田常夫クラシック音楽が生活の一部 ウィーン、ブダペスト、プラハはいわばクラシック音楽のメッカ。週末にはマチネのコンサートが各所で開かれ、オペラハウスでも児童生徒用にマチネ公演がおこなわれている。子供でも楽しめるオペラやバレー
本文を読む書評 カミとアニミズム
著者: 宮内広利岩田慶治はアニミズム世界と空海の密教世界が似かよっていると指摘している。アニミズムとは自然の万物のうちにひそむ精霊をカミとして信じている人間の状態である。その世界では鳥や獣や河川の中に精霊がひそんでおり(擬人化)、自分
本文を読む書評 失墜した社会主義
著者: 宮内広利マルクスが『共産党宣言』において示した「私有財産の廃止」というスローガンは、あたかも国家的所有に受け取られかねない、とても誤解されやすい言い廻しである。この言葉とともに、共産主義者の任務である①土地所有を収奪する②強度
本文を読む書評 知の宗教
著者: 宮内広利20世紀最大の思想的事件はマルクス主義の解体であった。わたしたちは、1989年のベルリンの壁の崩壊やソ連邦の崩壊を体験したが、そのときの「あっけなさ」の感慨を忘れることができない。まさにそのためにこそ闘ってきたと信じてき
本文を読む『雪のひとひら』を読む
著者: 木村洋平ポール・ギャリコの『雪のひとひら』を読んでみましょう。雪のかけらの生涯を扱った物語、それは長めの童話のようです。雪のひとひらは、はるか上空で生まれ、地上へと降りてゆきました。 おかしなこと、と雪のひとひらは思いました
本文を読む書評;高橋行徳著『向田邦子「冬の運動会」を読む』(鳥影社刊)
著者: 阿部浪子闘う向田邦子を紹介したいと、著者の高橋行徳氏はいう。邦子は51歳で直木賞を受賞し、翌1981年に飛行機事故で他界している。 著者は、邦子が30代から書いてきたテレビの脚本に注目し、創作活動の転機となった「冬の運動会」
本文を読む書評 欠如のない時代の方角
著者: 宮内広利3.11前でさえ、あまりに速い世相の移り替わりなのに、停滞感がぬぐえないのはなぜだろうとおもってきた。誰もが自意識が総敗北をしているのではないかというような焦りを抱いていたのだ。しかし、このような思想状況は、わが国だけ
本文を読む書評 風景としての空海
著者: 宮内広利わが国に仏教が輸入されてそれほど時間がたっていない頃、学問重視の奈良仏教に対する真言密教の祖、空海の反抗は、自然との格闘の思想に深くかかわっている。仏教は紀元前5世紀頃にインドの釈迦が広めたことになっているのだが、その
本文を読む文学渉猟:芸術は神的なものを、情熱によって直観的なものにする
著者: 合澤 清書評:サマセット・モーム作『月と六ペンス』 中野好夫訳(新潮文庫)590円 サマセット・モームといえば、かつて大学受験英語の代表作家であった。その苦い思い出からか、私は長いことモームを読もうという意欲が起きなかった。その
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