カルチャーの執筆一覧

書評:『従兄ポンス』バルザック作 水野 亮訳(岩波文庫1930/75)

著者: 合澤 清

これは文庫本で上、下の二冊よりなる長編小説である。バルザックの長編小説の特徴は、最初に、当該小説の主人公にまつわるかなり長ったらしい状況説明(住んでいる家屋敷の造りや家具、あるいはその人物の経歴や趣味など)がくどくどと述

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世界のノンフィクション秀作を読む(4) J・クラカワ―の『荒野へ』(下) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

 ――互いに往来している間に、若者はよく怒り、顔を曇らせ、両親や政治家、大多数のアメリカ人に特有の空疎な生き方を非難していたことを、老人ははっきり覚えている。彼との仲がぎくしゃくするのを恐れ、フランツは相手がそんなふうに

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世界のノンフィクション秀作を読む(3) J・クラカワーの『荒野へ』(上) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

――1992年4月、アメリカ東海岸の裕福な家庭に育った一人の若者が、ヒッチハイクでアラスカへ来着。マッキンレー山の北の荒野に単身徒歩で分け入っていった。四カ月後、彼の腐乱死体がヘラジカを追っていたハンターの一団に発見され

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世界のノンフィクション秀作を読む(2)ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(下) 人間の偉大と悲惨を叙述し、大きな感動をもたらす

著者: 横田 喬

 リルケは「やり尽くす」と言うように、「苦しみ尽くす」と言っている。私たちにとって、「どれだけでも苦しみ尽くさねばならない」ことはあった。気持ちが萎え、時には涙することもあった。が、涙を恥じることはない。この涙は、苦しむ

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世界のノンフィクション秀作を読む(1)ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(上) 人間の偉大と悲惨を叙述し、大きな感動をもたらす

著者: 横田 喬

 「人間とはガス室を発明した存在だ。が、同時にガス室に入っても、毅然とした態度を保てる存在でもある」。ユダヤ人としてナチスの強制収容所生活を体験した医師Ⅴ・フランクルの著書『夜と霧』は、人間の偉大と悲惨を叙述。「言語を絶

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二十世紀世界文学の名作に触れる(62) 『カタリーナの失われた名誉』のハインリヒ・ベル ――マス・メディアとの決然たる対峙

著者: 横田 喬

 1974年にベルが発表した作品『カタリーナの失われた名誉』は120万部を超える空前のベストセラーとなった。ヘルマン・ヘッセ以来、四半世紀余ぶりのドイツ人ノーベル文学賞作家が意を決し対峙しようとしたものは何だったのか。情

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二十世紀世界文学の名作に触れる(61) ハインリヒ・ベルの『カタリーナの失われた名誉』――言論の暴力はいかなる結果を生むか 

著者: 横田 喬

 ドイツの作家ハインリヒ・ベル(1917~1985)は72年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「同時代への幅広い眺望と鋭い描写によって、ドイツ文学の刷新に貢献した」。その代表作の一つ『カタリーナの失われた名誉』(サイマ

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<横浜ウォーキング>に参加してみようかと(1)

著者: 内野光子

いきなり、きつい、雨の谷戸坂 横浜のKKR(国家公務員共済組合)の宿、ポートヒルが企画する「横浜三塔をめぐるウォーキング」というものに参加してみようか、ついでに近代文学館にでも寄ってみようということになった。その企画には

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二十世紀世界文学の名作に触れる(60) 『ジャングル・ブック』のキプリング――植民地時代が生んだ動物文学

著者: 横田 喬

 十九世紀半ば~第二次大戦直後にかけて、植民地帝国イギリスはインドに広大な領土を持っていた。インド生まれのノーベル賞作家キプリングの出現は、いわばその植民地帝国の申し子とも映る。彼は「東は東、西は西」という言葉を残したこ

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二十世紀世界文学の名作に触れる(59)キプリングの『ジャングル・ブック』――独創的発想と非凡な叙情

著者: 横田 喬

 イギリスの作家ラドヤード・キプリング(1865~1936)は1907年、ノーベル文学賞を四十一歳の史上最年少で、英国人としては最初に受賞した。授賞理由は「その創作を特徴づける、観察力、想像力、独創性、発想の意欲と叙情の

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二十世紀文学の名作に触れる(58) 『古都』の川端康成――戦後日本文学の最高峰

著者: 横田 喬

 川端は1968年のノーベル文学賞受賞の際、「日本の伝統のお陰」と謙遜。「名誉などというものは重荷となり、かえって委縮してしまうのでは」と危惧する言葉も口にした。四年後に仕事部屋でガス自殺を遂げたことを思い合わせると、痛

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二十世紀文学の名作に触れる(57) 川端康成の『古都』 ――流麗な筆致で描く京都の面影、そして美しい双子の姉妹の数奇な運命

著者: 横田 喬

 川端康成(1899~1972)は一九六八(昭和四三)年、日本人で初めてノーベル文学賞を受けた。受賞理由は「日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えた」。対象作品は小説『雪国』『千羽鶴』

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新時代を開く「コミュニズム」―その秘策は『資本論』にある! 

著者: 合澤 清

書評:『人新世の「資本論」』斎藤幸平著(集英社新書2020/21) 「人新世」という耳慣れない言葉に一驚したが、「はじめに」で次のように説明している。 「人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学

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二十世紀文学の名作に触れる(56) 『ドクトル・ジバゴ』のパステルナーク――旧ソ連での最初の反体制活動作家

著者: 横田 喬

 パステルナークは1958年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「現代風の抒情的な詩、および大ロシアの歴史的伝統に関する分野における、彼の重要な功績に対して」。ソ連国内では当時、『ドクトル・ジバゴ』の内容はロシア革命を批

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二十世紀文学の名作に触れる(55) パステルナークの『ドクトル・ジバゴ』――二十世紀最大の大河ロマン

著者: 横田 喬

 1960年にノーベル文学賞を受けた旧ソ連の作家ボリス・パステルナーク(1890~1960)の代表作は『ドクトル・ジバゴ』だ。第一次世界大戦とロシア革命という波乱万丈の時代を背景に、無類に個性的な医師ジバゴと薄幸の美女ラ

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『自由の現実化こそ理性の絶対的目的である—若きヘーゲルの苦闘』

著者: 合澤 清

書評:『若きヘーゲル』上 ルカーチ著 生松敬三・元浜清海訳(白水社1998)   ルカーチの『若きヘーゲル』は上、下二巻から成る大作である。上巻では、ヘーゲルのベルン時代とフランクフルト時代が俎上に載せられ、そ

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