カルチャーの執筆一覧

世界のノンフィクション秀作を読む(7)福沢諭吉の『福翁自伝』――「門閥制度は親の仇」と喝破した当人による自叙伝

著者: 横田 喬

 本書は幕末維新~明治の洋学者・教育者、福沢諭吉晩年の口語文体による自叙伝だ。1898(明治31)年7月1日から翌99(明治32)年2月16日にかけて計67回、当時の『時事新報』に掲載された。「門閥制度は親の仇でござる」

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世界のノンフィクション秀作を読む(6) ヘンリー・D・ソローの『ウォールデン――森の生活』(講談社学術文庫・佐渡谷重信:訳)――人生のあるべき姿を深く洞察(下)

著者: 横田 喬

 ――ホーホー啼く梟のセレナーデも聴いた。近くで聴くと、大自然の中で奏でられる最も憂愁の響きのようだ。その啼き声は、昼間の光が届かない湿地や黄昏の森にはうってつけの美しい歌声であり、広大で未開のままの<自然>そのものを暗

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世界のノンフィクション秀作を読む(5) ヘンリー・D・ソローの『ウォールデン――森の生活』(講談社学術文庫、佐渡谷重信:訳)――人生のあるべき姿を深く考察 (上)

著者: 横田 喬

 著者ソロー(1817~1862)は19世紀中葉に活動したアメリカの思想家だ。本書は彼がボストン近郊の田舎町コンコードの近くにあるウォールデン池の畔で二十代後半の二年二か月間を過ごした折の生活記録~随想集。現実的体験を通

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書評:『従兄ポンス』バルザック作 水野 亮訳(岩波文庫1930/75)

著者: 合澤 清

これは文庫本で上、下の二冊よりなる長編小説である。バルザックの長編小説の特徴は、最初に、当該小説の主人公にまつわるかなり長ったらしい状況説明(住んでいる家屋敷の造りや家具、あるいはその人物の経歴や趣味など)がくどくどと述

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世界のノンフィクション秀作を読む(4) J・クラカワ―の『荒野へ』(下) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

 ――互いに往来している間に、若者はよく怒り、顔を曇らせ、両親や政治家、大多数のアメリカ人に特有の空疎な生き方を非難していたことを、老人ははっきり覚えている。彼との仲がぎくしゃくするのを恐れ、フランツは相手がそんなふうに

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世界のノンフィクション秀作を読む(3) J・クラカワーの『荒野へ』(上) アラスカの荒野で孤独死したエリート米国青年の数奇な運命

著者: 横田 喬

――1992年4月、アメリカ東海岸の裕福な家庭に育った一人の若者が、ヒッチハイクでアラスカへ来着。マッキンレー山の北の荒野に単身徒歩で分け入っていった。四カ月後、彼の腐乱死体がヘラジカを追っていたハンターの一団に発見され

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世界のノンフィクション秀作を読む(2)ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(下) 人間の偉大と悲惨を叙述し、大きな感動をもたらす

著者: 横田 喬

 リルケは「やり尽くす」と言うように、「苦しみ尽くす」と言っている。私たちにとって、「どれだけでも苦しみ尽くさねばならない」ことはあった。気持ちが萎え、時には涙することもあった。が、涙を恥じることはない。この涙は、苦しむ

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世界のノンフィクション秀作を読む(1)ヴィクトール・フランクルの『夜と霧』(上) 人間の偉大と悲惨を叙述し、大きな感動をもたらす

著者: 横田 喬

 「人間とはガス室を発明した存在だ。が、同時にガス室に入っても、毅然とした態度を保てる存在でもある」。ユダヤ人としてナチスの強制収容所生活を体験した医師Ⅴ・フランクルの著書『夜と霧』は、人間の偉大と悲惨を叙述。「言語を絶

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二十世紀世界文学の名作に触れる(62) 『カタリーナの失われた名誉』のハインリヒ・ベル ――マス・メディアとの決然たる対峙

著者: 横田 喬

 1974年にベルが発表した作品『カタリーナの失われた名誉』は120万部を超える空前のベストセラーとなった。ヘルマン・ヘッセ以来、四半世紀余ぶりのドイツ人ノーベル文学賞作家が意を決し対峙しようとしたものは何だったのか。情

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二十世紀世界文学の名作に触れる(61) ハインリヒ・ベルの『カタリーナの失われた名誉』――言論の暴力はいかなる結果を生むか 

著者: 横田 喬

 ドイツの作家ハインリヒ・ベル(1917~1985)は72年、ノーベル文学賞を受けた。授賞理由は「同時代への幅広い眺望と鋭い描写によって、ドイツ文学の刷新に貢献した」。その代表作の一つ『カタリーナの失われた名誉』(サイマ

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<横浜ウォーキング>に参加してみようかと(1)

著者: 内野光子

いきなり、きつい、雨の谷戸坂 横浜のKKR(国家公務員共済組合)の宿、ポートヒルが企画する「横浜三塔をめぐるウォーキング」というものに参加してみようか、ついでに近代文学館にでも寄ってみようということになった。その企画には

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二十世紀世界文学の名作に触れる(60) 『ジャングル・ブック』のキプリング――植民地時代が生んだ動物文学

著者: 横田 喬

 十九世紀半ば~第二次大戦直後にかけて、植民地帝国イギリスはインドに広大な領土を持っていた。インド生まれのノーベル賞作家キプリングの出現は、いわばその植民地帝国の申し子とも映る。彼は「東は東、西は西」という言葉を残したこ

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二十世紀世界文学の名作に触れる(59)キプリングの『ジャングル・ブック』――独創的発想と非凡な叙情

著者: 横田 喬

 イギリスの作家ラドヤード・キプリング(1865~1936)は1907年、ノーベル文学賞を四十一歳の史上最年少で、英国人としては最初に受賞した。授賞理由は「その創作を特徴づける、観察力、想像力、独創性、発想の意欲と叙情の

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二十世紀文学の名作に触れる(58) 『古都』の川端康成――戦後日本文学の最高峰

著者: 横田 喬

 川端は1968年のノーベル文学賞受賞の際、「日本の伝統のお陰」と謙遜。「名誉などというものは重荷となり、かえって委縮してしまうのでは」と危惧する言葉も口にした。四年後に仕事部屋でガス自殺を遂げたことを思い合わせると、痛

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二十世紀文学の名作に触れる(57) 川端康成の『古都』 ――流麗な筆致で描く京都の面影、そして美しい双子の姉妹の数奇な運命

著者: 横田 喬

 川端康成(1899~1972)は一九六八(昭和四三)年、日本人で初めてノーベル文学賞を受けた。受賞理由は「日本人の心の精髄を、すぐれた感受性をもって表現、世界の人々に深い感銘を与えた」。対象作品は小説『雪国』『千羽鶴』

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新時代を開く「コミュニズム」―その秘策は『資本論』にある! 

著者: 合澤 清

書評:『人新世の「資本論」』斎藤幸平著(集英社新書2020/21) 「人新世」という耳慣れない言葉に一驚したが、「はじめに」で次のように説明している。 「人類の経済活動が地球に与えた影響があまりに大きいため、ノーベル化学

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