スタディルームの執筆一覧

水俣病が映す近現代史(19)敗戦前後の朝鮮と水俣

著者: 葛西伸夫

【解放後の朝鮮半島】 ドイツと日本の敗戦が濃厚になってくると、英・米・ソの3国は戦後処理について頻繁に会議を開いた。朝鮮半島の分割統治についても(ソヴィエトの満州侵攻を含め)先々のシナリオまで策定されていた可能性がある。

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水俣病が映す近現代史(17)鴨緑江水豊発電所

著者: 葛西伸夫

朝鮮総督の宇垣一成は、水利権を三菱から朝鮮窒素肥料に移した責任を重く感じていたのか、長津湖発電所の工事現場を二度訪れていた。 特に湖畔の風景を気に入り、別荘を構えたいという考えを側近から聞いた久保田豊は、湖畔にバンガロー

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水俣病が映す近現代史(16)多角展開と水俣病の萌芽

著者: 葛西伸夫

1923(大正12)年、日本窒素肥料株式会社(以下、日窒)の延岡工場でのアンモニア合成の成功は、植民地朝鮮への進出によってコスト的に大きな成功を収めた。しかし、アンモニア合成の日窒にとっての成功の本質的な意義は、多角的な

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水俣病が映す近現代史(15)激動の昭和初期

著者: 葛西伸夫

明治に新たに登場した電気事業は、参入障壁が低かった発電所の建設を初期投資の対象とし、そこから電力の消費事業を発展的に構築していった。成功を収めると発電所を新・増設し、さらに消費側の事業を拡大していく。このような「シーソー

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地震予知に科学的根拠はあるか ――八ヶ岳山麓から(482)――

著者: 阿部治平 

 8月8日、日向灘を震源とした地震が発生し、気象庁は南海トラフ地震の臨時情報「巨大地震注意」を初めて発表した。それから1週間、何ごともなく「注意報」は15日に「解除」された。この間、人によっては大地震に備えて食料を買いこ

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水俣病が映す近現代史(13)牙を剥いた植民地主義

著者: 葛西伸夫

野口遵は帝大同期の森田一雄が持ってきた朝鮮での発電事業案について威勢よく賛同したものの、懸念事項があった。それはソヴィエトの動向だった。ちなみにそのころ(1924年)スターリンが最高指導者に就任していた。 ソヴィエト側に

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ローザ・ルクセンブルクの「社会主義的民主主義」論 新資料の紹介と解釈を中心に

著者: 赤海勇人

はじめに  本稿の主題は、1870年代初頭、当時帝政ロシアの支配下にあったポーランドの小都市ザモシチ(Zamość)で、ユダヤ系の家庭に生まれ、主にドイツとポーランドの社会民主党で活動したローザ・ルクセンブルクの「社会主

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水俣病が映す近現代史(10)大正デモクラシー

著者: 葛西伸夫

明治時代が終わると、社会全体に自由を求める傾向が強まり、様々な政治運動、社会運動、労働運動が全国に広がった。 野口や日窒をとりまく状況のなかでも、労働者や主婦や漁民のような「民衆」が自分の権利や自由を求めて様々な場面で異

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水俣病が映す近現代史(9)「大正の天佑」

著者: 葛西伸夫

【保険をかけていた肥料戦略】 日本の農家にとってはまったく新しい肥料である石灰窒素が、すぐに売れるとは考えられず、野口(日本窒素肥料、以下「日窒」と省略する)は、すでに輸入品を中心に普及が進んでいた硫安(硫酸アンモニア)

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前田朗氏講演の報告:「関東大震災朝鮮人虐殺-裕仁最初の犯罪責任を考える」

著者: 村尾望

 7月18日に、阿佐ヶ谷市民講座の前田朗氏(朝鮮大学校法律学科非常勤講師、東京造形大学名誉教授)による標記の講演を聴講した。関東大震災における朝鮮人・中国人大虐殺について重要な視点を提起していると思われる。  昨年10月

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世界のノンフィクション秀作を読む(77) 北条常久(文筆家)の『評伝むのたけじ』(無明舎出版刊)――反戦平和を求め続けた在野のジャーナリストの一〇一年の生涯(下)

著者: 横田 喬

 1947(昭和22)年の大晦日、むのたけじの一家は大宮駅を発ち、元旦の朝に雪の横手駅に着く。48年2月2日、『週刊たいまつ』が創刊された。地元の青年を記者に二人、広告担当に一人、採用し、発行責任者は武野武治。粗悪な紙の

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世界のノンフィクション秀作を読む(77) 北条常久(文筆家)の『評伝むのたけじ』(無明舎出版刊)――反戦平和を求め続けた在野のジャーナリストの一〇一年の生涯(上)

著者: 横田 喬 

 むのたけじ(1915~2016)は戦前、朝日新聞記者として中国~東南アジア特派員を経験。1945年8月15日の日本の敗戦当日、自身の戦争報道の責任を感じて退社する。郷里の秋田県横手市で週刊新聞『たいまつ』を創刊、主筆と

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水俣病が映す近現代史(2)「征韓論」の行方①

著者: 葛西伸夫

19世紀後半、鎖国中の李氏朝鮮も日本と同様に鎖国を保つか開国かで揺れていた。実権を握っていた大院君が鎖国派であるのに対し、実子である国王高宗(コ・ジョン)は開国・開化派で、朝鮮には近代化の先鞭をつけた日本の助けが必要だと

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海峡両岸論 第162号 2024・04・27発行 中ロ印の思惑錯綜するBRICSとは 米一極支配衰退で多極化の主導権競う

著者: 岡田 充

米一極支配と主要先進7カ国(G7)の役割が減衰する世界秩序の新たな多極間枠組みとして、2024年から加盟国が10カ国に拡大した「BRICS」の役割が比重を増している。中でも中国、ロシア、インドの3国は異なる思惑からBRI

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