平野久美子著 『テレサ・テンが見た夢』 筑摩書房 発行年月日 2015年4月10日; 定価 ¥1000E テレサ・テン(鄧麗君)がタイのチェンマイで急死したのは、平成7年(1995)5月8日のことであった。衝撃の急
本文を読む書評の執筆一覧
佐藤賢一著 『ラ・ミッション 軍事顧問ブリュネ』文藝春秋
著者: 雨宮由希夫発行年月日: 2015年2月25日、 定価¥1850 慶応3年(1867)1月、ナポレオン三世は徳川幕府からの要請を受け、フランス軍事顧問団(ラ・ミッション・ミリテール)を日本に派遣した。シャノワーヌを団長とする一行15
本文を読む書名『死に支度』
著者: 雨宮由希夫著者 瀬戸内寂聴 発売 講談社 発行年月日 2014年10月30日 定価 ¥1400 この私小説的長編小説の主人公は91歳の誕生日を目前にして、夜も眠らず年がら年中仕事に追いまくられている女性
本文を読む『忘却に抵抗するドイツ―歴史教育から「記憶の文化」へ』(岡裕人著、2012年、大月書店)
著者: 小澤俊夫メール通信「昔あったづもな」第29号 都合の悪い過去を消しさろうとあがく日本と、強制収容所などを保存し、公開しているドイツとの違いは、ぼくにとって大きな問題なのだが、この本は、ずばりその問題を在独20年の日本人歴史学者
本文を読む書評 『日本史 ほんとうの偉人列伝』
著者: 雨宮由希夫岳 真也 著 『日本史 ほんとうの偉人列伝』 みやび出版 ¥2000 人生の上で心 通わせることの出来る知友を幾人持つことができるかが人の幸せをはかる目安となろうが、歴史時代小説の読者にとっては、心惹かれた歴史上の人物を
本文を読む書評 近藤誠氏のがん治療関連著作
著者: 盛田常夫近藤 誠著『抗がん剤は効かない』(文芸春秋、2011年)、同『がん治療で殺されない七つの秘訣』(文春新書、2013年)、同『がんより怖いがん治療』(小学館、2014年) 1990年代初頭から現代のがん治療にたいする疑念表
本文を読む書評 山﨑正純・著『丸山眞男と文学の光景』洋々社
著者: 阿部浪子1946年、「超国家主義の論理と心理」を発表して論壇に衝撃をあたえた丸山眞男は、民主主義の啓蒙運動の一翼をになうことになった。その丸山言説をふまえつつ日本の近代文学をたんねんに検証するのは、四十代の著者、山﨑正純氏であ
本文を読む書評 海老坂武・著『戦後文学は生きている』
著者: 阿部浪子海老坂武・著『戦後文学は生きている』講談社現代新書 戦後文学の名著からは、人間のせつない声が聞こえてくる。人生に真剣に向きあう姿も見えてくる。1945年、小学5年生だった著者の海老坂武氏は、長じて読書したその感想に現在
本文を読む書評『冬を待つ城』 安部龍太郎 著
著者: 雨宮由希夫九戸政実の乱とは今から約400年前、天正19年(1591)3月、南部氏一族の有力者で南部家の重臣九戸(くのへ)政(まさ)実(ざね)が、南部家当主南部(なんぶ)信(のぶ)直(なお)および豊臣秀吉に対して起こした反乱である
本文を読む書評 『海松』稲葉真弓・著 新潮社・刊
著者: 阿部浪子鳥の鳴き声が聞こえはじめると、彼女は、沼に行きたくてうずうずする。沼は、都心のマンション暮らしを長年つづけてきた女が夢見るものすべてを、もたらしてくれたという。収録の「光の沼」は、2008年度の川端康成文学賞を受賞した
本文を読む書評 「近代の超克」論議
著者: 宮内広利太平洋戦争の開始からほぼ1年たった昭和17年9月、雑誌『文学界』に『近代の超克』と銘打たれたシンポジウムが掲載された。この「近代の超克」という言葉は、それ以後、知識人をとらえ、シンボルとして使われるようになる。保田与重郎
本文を読む書評 倫理と支配の根拠
著者: 宮内広利わたしたちのかつての共同体の倫理は、ときに軋みや異和を発して、ともすれば、なだらかな発生の神話をつき崩そうとする。『古事記』神話の中ではじめて「罪」という概念が登場するのは、スサノオが高天原(タカマガハラ)から二度の追放
本文を読む元東芝エンジニアによる脱原発論 ー書評 小倉志郎著『元原発技術者が伝えたいほんとうの怖さ』(彩流社)ー
著者: 半澤健市《頭が真っ白になったエンジニア》 2011年3月11日の午後、一人の元エンジニアが都内中央区立月島社会教育会館で平和運動の紙芝居を見ていた。そこへ大きな揺れがきた。東日本大震災の始まりである。当日は横浜の自宅に帰れず
本文を読む書評 概念は壊せるのだろうか
著者: 宮内広利わたしたちは、ときに、言語の沈黙と肉体の沈黙とはどちらが重いのだろうと考えることがある。これは心と言語の距離と心と肉体の距離のどちらが長いかという設問に言い換えることもできる。肉体の沈黙の方が比重や密度が大きいとしている
本文を読む書評 『歎異抄』を読む➄
著者: 宮内広利鎌倉仏教の祖、法然の浄土門の教えは、なにより、仏門の大衆化と民主化だったとおもえる。鎌倉仏教といわれる法然以下、一遍、道元、日蓮、栄西らはだれも、多かれ少なかれ仏教の大衆化をもとめたのである。平安仏教である天台宗や真言宗
本文を読む書評 『共同幻想論』 吉本隆明著
著者: 宮内広利普段、死は、人間の死への対面によってよりあからさまに、かつ重層的に出現する。つまり、死は、生とのコントラストにおいて、生に侵蝕し、言語の逸脱や越境をまねきよせる。わたしたちが、ありふれた思想に納得してしまうのは、親離れ
本文を読む書評 ベンヤミンとマルクス
著者: 宮内広利生きた言語とは何か、というより、言語の生死という問いかけがあるとしたら、それは何を根拠にし、わたしたちをどこへ向かわせるのか。概念なるものは脱概念というところから逆にたどることもできる。もし、概念をぼやけさせることがで
本文を読む書評 『閉ざされた言語空間』 江藤淳著
著者: 宮内広利わたしたちは、戦後体験の意味するところを、敗戦によって求心するシンボルをなくしたナショナリズムの行方の問題として、私的感性・意志の横への拡散化の過程ととらえてきた。その意味からいうと、敗戦はまちがいなく、日本人すべての胸
本文を読む「上野」、「皇室」、「大震災」を重ね、ホームレスと被災者の痛苦をつなぎ合わせて描く 〔書評〕柳美里著『JR上野駅公園口』
著者: 雨宮由希夫〔書評〕柳美里著『JR上野駅公園口』(河出書房新社、¥1400+税) 「あゝ上野駅」という唄がある。作詞・関口義明、作曲・荒井英一、歌唱・伊沢八郎で、東京オリンピックが開催された昭和39年(1964)の5月に発表された。
本文を読む書評 『銀河鉄道の夜』 宮沢賢治著
著者: 宮内広利宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を読むと、学問とは何か、宗教とは何かを死の底に触れるような場所から教えてくれる場面にでくわす。宮沢賢治があたかも死という背景の中に浮かんだところから、人間がものを考えることは一体何なのかを問い
本文を読む書評 『歎異抄』を読む④
著者: 宮内広利親鸞における「信」と「不信」の隙間は、いわば、紙一重である。親鸞にとって「信」は、「信」と「不信」とを同時に見渡すことのできる視界を獲得していたからだ。そこからみると、「信」と「不信」は「知」と「愚」とともに全く等価に
本文を読む『評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ』
著者: 阿部浪子『評伝 野上彌生子―迷路を抜けて森へ』岩橋邦枝・著 新潮社・刊 野上彌生子は70余年にわたり小説、評論、随筆を書きつづけた。著者の岩橋邦枝氏は、彼女の遺作「森」を読んで、この豊穣な傑作を百歳ちかい人が書いたのかと驚き、そ
本文を読む書評 『歎異抄』を読む③
著者: 宮内広利死と鼻をつきあわせたような生活状態に投げこまれた衆生に対面して、どんな理念が衆生を救済できるかという親鸞の答えは、どんなにかかわっても人が救済される保証は得られないという絶望が先にあった。人々は、生きているあいだ救済さ
本文を読む書評 『歎異抄』を読む②
著者: 宮内広利親鸞の時代は天災による飢餓や貧困、病苦、戦乱によって、いわば死が日常化していた。それは、たとえば、念仏を称える間もなく急死する人々にとって、往生するための念仏は一声でよいのかという、一見、矮小といってもよい問いかけだが
本文を読む書評 『ハイ・イメージ論』 吉本隆明著
著者: 宮内広利≪価値は自然の手段や道具としての有用な変更でもたらされるもので、価値の普遍性は役にたつ交換によってたもたれるとかんがえる『資本論』のマルクスの価値概念には、いつももの足りなさがつきまとう。素材や物体のさまざまな形態として
本文を読む書評 『歎異抄』を読む①
著者: 宮内広利親鸞の教えは、四十八願をたて修行を実践して仏となった阿弥陀仏が、極楽浄土を建立し、念仏という名号を衆生に与えたことにはじまるとされている。親鸞によれば、弥陀仏の本願によって救われるのは老若男女を問わない。また、善人や悪
本文を読む書評:井上理恵編著『木下順二の世界――敗戦日本と向き合って』
著者: 関谷由美子編著者井上理恵は「あとがき」に「今回改めて全集を読み返して思いを新たにしたが、木下の主張が余りにも現在のこの国の在りようにピッタリとはまることに驚いた。と同時に、これまで把捉できなかったものが、明らかな相貌を帯びて迫って
本文を読む書評 イメージとしての敗戦
著者: 宮内広利ひとがあるイメージを好きであったり嫌いであったりすることの意味はなんだろう、というような任意の設問をたててみる。そうすると、そのイメージに込められた人々の体験やこころの起伏によりそって、変化や屈折がプリズムのように放射
本文を読む書評:長浜功著『「啄木日記」公刊過程の真相―知られざる裏面の検証』
著者: 阿部浪子「オレが死んだら日記は必ず焼いてくれ」。石川啄木は親友に託して1912年に他界している。しかし日記の焼却は遠のき、戦後、娘の夫によって公刊されるのであった。 著者の長浜功氏は、それまでの波瀾万丈の過程をじつに丹念にたど
本文を読む書評 カミとアニミズム
著者: 宮内広利岩田慶治はアニミズム世界と空海の密教世界が似かよっていると指摘している。アニミズムとは自然の万物のうちにひそむ精霊をカミとして信じている人間の状態である。その世界では鳥や獣や河川の中に精霊がひそんでおり(擬人化)、自分
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