ずさんなオスプレイの維持管理報告の実態を国防省監察総監室が指摘 - 米外交誌「フォーリン・ポリシー」記事日本語訳
- 2013年 11月 28日
- 時代をみる
- 「ピースフィロソフィ―」
琉球新報(11月4日付)で報道された、米国の外交誌「フォーリン・ポリシー」(電子版)の10月31日付記事 の日本語訳を紹介します。
Are the Marines Faking The Reliability Record of Their $54 Billion Superplane?http://killerapps.foreignpolicy.com/posts/2013/10/31/are_the_marines_faking_the_reliability_record_of_its_79_million_superplane
★Peace Philosophy Centre による訳です。掲載後微修正する可能性があります。
MV-22 Osprey |
海兵隊は540億ドルもする最新鋭機の信頼性データを偽造しているのか?
Dan Lamothe
翻訳:酒井泰幸・乗松聡子
海兵隊のMV-22Bオスプレイが6月にノース・カロライナ州デア郡にある試射場の空き地に着陸したとき、それは通常の任務のように見えた。ところがそこで、とんだ失態となってしまった。そのオスプレイは枯れ草の火事を起こし、オスプレイはそこに駐機したまま放置された。当初、海兵隊高官たちは、損害は軽微であると語った。海軍安全センターから公開されたデータによれば、事実は異なっており、この火災で胴体が焼け、損害は合計7930万ドルに上った。後日になって、他の機体に使うために焼けた機体から部品が回収されたが、そのオスプレイが再び飛行することはなかったことを、フォーリン・ポリシー誌は突き止めた。
この事故は、ヘリコプターのように離陸し、飛行機と同様な航続距離と速度で飛ぶ革新的なティルト・ローター機をめぐり、海兵隊が直面している数々の問題を象徴している。軍は国外のオスプレイに次々と新しい任務を与え続け、同盟諸国にオスプレイを売り込むことに関心を寄せているが、この開発計画はこれまで多くの死者を出してきた上に、今も悪いニュースに付きまとわれたままである。その多くは自ら招いたものだ。この飛行機が戦場で様々な成功を収めた一方で、結局、海兵隊高官たちは今も、懐疑論者に対してオスプレイの安全性と信頼性に関する記録を擁護せざるを得ない状況だ。それにはちゃんと理由がある。大したことはなかったと海兵隊が断言した2件のオスプレイ事故は、実際には非常に大きな事故だったことが判明したからだ。
オスプレイ受容に向けての新たな障害として浮上したのが、国防総省監察総監室の報告書である。この報告書は、オスプレイ部隊によるオスプレイの作戦即応性についての記録の仕方を問題視した。この報告書そのものは機密指定されているが、ペンタゴンは10月23日に要約を公表した。これによると、MV-22オスプレイ飛行中隊の維持管理担当者は、航空機の在庫調査において200回中167回も航空機情報を不適切に記録した。また、審査の対象となった907件の作業指示書のうち、112件が適切でないものだった。さらにMV-22オスプレイ飛行中隊の指揮官たちは、6つの中隊についての作戦即応性の報告書を不完全あるいは不正確な状態で提出した。それが意図的であるかどうかはともかく、このような実態の中、指揮官たちは自分のMV-22部隊が作戦遂行の準備が整っているかどうか知ることは困難であったと、調査で判明した。
[訳者注:この記事における国防省監察総監室報告書要約の説明がわかりにくかったために原典である国防総省のサイトを参考にして訳した。この報告書のより正確な理解のためには原典に行くことを推奨する(これも機密化されている文書の要約に過ぎないのだが)。http://www.dodig.mil/pubs/report_summary.cfm?id=5353]
「結果として、[作戦即応性の数値は]信頼できるものではなく、国防省と海兵隊の高官たちは作戦に対応できないMV-22飛行中隊を配備してしまった可能性がある」と、監察総監室は結論づけた。
国防総省の調査担当者はこの失態の原因を、飛行中隊の指揮官たちが航空機の在庫調査書と作戦即応性報告書の書き方や、それらの正確さを検証する方法を職員に適切に指導しなかったためであるとした。
作戦即応性の数値は機密解除された要約には記されていないが、過去には65から80パーセントと報告されている。指揮官たちはこれが期待より低いと認識していたが、海兵隊高官たちは、監察総監室報告書の細部からはオスプレイの信頼性を実際より高く見せる企みがあったと認めることはできないとしている。むしろ、日常の作戦業務を正確に記録していなかっただけだと海兵隊高官らは語っている。
「これらの過ちは書類の偽装ではありません」と、ペンタゴンの海兵隊スポークスマン、リチャード・アルシュ大尉はフォーリン・ポリシー誌に語った。「悪質ではなく、故意でもないのです。」
書面での質問に対する詳しい回答で、イラクとアフガニスタンでの戦闘作戦を含むオスプレイの活動記録は正しいとアルシュ大尉は主張した。2011年にリビアでF-15Eストライク・イーグルが墜落してパラシュート降下した空軍兵装担当士官を救出する大胆な作戦をはじめとする、他国でのいくつかの重要な作戦にも、オスプレイが使われた。
「海軍航空隊は作戦即応性の定量化に複数の情報源と報告システムを使っています」とアルシュ大尉は語った。「したがって、人手によるデータ入力ミスや不適切な手順によって不正確さが生じることがあるので、このようなミスを最小限にし、手順の正確さを確保することが最重要課題であり、安全性・作戦即応性報告書が指揮官にとって有用なものとなることを絶えず強調し監視していくことが必要です。」
「即応性情報の中心に位置づけられるのが安全性です。業務効率と安全性は密接不可分です」とアルシュ大尉は[フォーリン・ポリシー誌への]回答の中で述べた。「過去6年間で、18回以上のMV-22の配備と有事作戦行動が、適切な訓練と装備を施された作戦中の海兵隊と作戦行動可能な航空機によって、予定期日どおりに実施されました。」
それでも、この報告書の公表は古傷に塩を擦り込むものだった。ベル・ヘリコプター社とボーイング社が共同で造ったMV-22オスプレイが、2007年にイラクへ初めて配備される前、1991から2000年の間に3回の墜落事故を起こし、合わせて30人が死亡している。また、2001年には8人の海兵隊員が、オスプレイの整備記録を故意に偽造した容疑で起訴された。
さらに最近では、昨年、演習中のMV-22型オスプレイがモロッコで墜落したとき2人の海兵隊員が死亡、2人が重傷を負った。空軍特殊作戦仕様のCV-22型機も2010年4月にアフガニスタンで墜落し、4人の兵士が死亡した。軍はどちらの事故も、原因はオスプレイの信頼性ではなくパイロットのミスであったとした。
最近の別の事故では、8月26日に1機のオスプレイがネバダ州のクリーチ空軍基地近くで「ハードランディング(激しい衝撃を伴う着陸)」した。海兵隊高官は当時、兵員が機体から脱出した後で火災を起こしたと語った。このオスプレイも7930万ドルの全損となった。
しかし、米軍にとって海外で問題になったのは、このモロッコでの墜落事故だった。沖縄で抗議した人たちはこの事故を、海兵隊は沖縄の基地からオスプレイを飛ばすべきでないという主張を裏付ける材料とした。
2012年8月に海兵隊総司令官のジェームズ・エーモス大将さえも、来日時、「海兵隊は過去10年でオスプレイの致命的な事故を回避してきた」と語り[地元の]感情を逆なでした。沖縄での彼の発言は誤解を招く無礼なものだと批判された。この発言は、日本で広く報道されたモロッコ事故の6ヶ月後になされた。司令官はモロッコでの死亡事故以前の10年間をさして言ったのだと、海兵隊スポークスマンは後日、『星条旗新聞』に語った。
このさなかにも、海兵隊は飛行中隊単位で順次CH-46ヘリコプターをオスプレイで置き換えている。また海兵隊はアフリカでアメリカの国益に関わる非常事態に対応するために今年設立された新たな危機対応部隊の中核にオスプレイを位置づけた。オスプレイの飛行速度と航続距離があれば、アメリカは何百キロ彼方の危機にも素早く対応することができると、海兵隊高官は語る。
チャック・ヘーゲル国防長官は木曜日(10月31日)に、イスラエルがアメリカからオスプレイの購入を開始すると発表した。日本政府もオスプレイの購入に関心を示していると伝えられている。
参考報道
琉球新報
米誌、海兵隊の姿勢批判 オスプレイ「信頼を偽造」
2013年11月4日
http://ryukyushimpo.jp/news/storyid-214774-storytopic-1.html
【ワシントン=島袋良太本紙特派員】米外交専門誌フォーリン・ポリシー(電子版)は10月31日付で、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイについて「海兵隊は信頼性の記録を偽造しているのか」と批判する記事を掲載した。6月に米ノースカロライナ州で起きた事故について海兵隊が「軽微な損傷」と発表したのに対し、海軍安全センターが機体は全損したと認定していたことなどを挙げており、オスプレイの安全性に対し米本国でも根強い不信があることを示した形だ。
フォーリン・ポリシーは8月にも米ネバダ州で機体が大破した「ハードランディング(激しい衝撃を伴う着陸)」事故が起きたことも報告。2008年10月~11年9月の海兵隊のオスプレイ整備から記録や整備指示のミスが多数見つかったことに対し、国防総省監査室が「任務遂行に十分な状態でないまま機体を配備していた可能性がある」と指摘したことも紹介した。
その上で「この航空機は戦場で多くの成功を収めたが、海兵隊は安全性や信頼性の記録に対する疑念に対し、依然として守勢に立っている」と結論付けた。
昨年8月に沖縄を訪れたエイモス海兵隊総司令官が米軍放送で「海兵隊は過去10年でオスプレイの致命的な事故を回避してきた」と機体の安全性を強調したことにも言及。同年4月にはモロッコで墜落事故があり、10年には空軍のオスプレイがアフガニスタンで墜落したことなどの事故履歴を挙げ、エイモス氏の説明は「誤解を招き、失礼だと批判された」と述べている。
初出:「ピースフィロソフィ―」2013.11.21から許可を得て転載
http://peacephilosophy.blogspot.jp/2013/11/blog-post_21.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔eye2465:131128〕
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