【改訳】市民放射能測定所47プロジェクトから、ドイツ紙のインタビュー
- 2011年 9月 4日
- 交流の広場
- 47プロジェクト市民放射能測定所松元保昭
みなさまへ 松元
先日、「市民放射能測定所47プロジェクトから、ドイツ紙のインタビュー」として配信しました記事の改訳が47プロジェクトの久松さんから届きましたので、転送いたします。すでに転載されている方がおりましたら、この「改訳版」を使われるようお願いします。
また、アイゼンベルク博士の「日本の住民の健康危機」とドイツ放射能防護協会のプレスリリースの記事は、追ってすぐに配信いたします。
======以下転送======
みなさま
山梨の久松です。先に「市民放射能測定所」の岩田さんのインタビュー記事を配信しましたが、ある独文学の方から若干の誤訳のご指摘を受けました。それでご教示を受け「改訳」したものを再信します。ご迷惑おかけしました。なおIPPNW(International Physicians for the Prevention of Nuclear War 核戦争防止国際医師会議:1980年に設立。1985年ノーベル平和賞受賞の団体)のアイゼンベルク博士の47プロジェクト支援のプレスリリースとドイツ放射能防護協会のプレスリリースの記事を別便出お送りします。
岩田 渉 :市民放射能測定所
2011年8月15日 日本の住民の健康の危険についてのプレス・インタビュー
2011年8月19日に行われた、福島から、岩田渉さんとのスカイプ・インタビュー
当地のメディアでは、主に、3月11日の地震と津波によって大部分破壊された福島第一原発周辺の放射線量が低下していることについてばかり報道されているが、放射能はどんどん拡散しているので、日本の住民たちは、絶えざる不安の中で生活している。相変わらず破損した原子炉は風雨にさらされ、放射能に汚染された冷却水の量は増え続けており、そしてその間、地下での溶融した炉心と地下水の領域で何か起きているか、誰もわからない。
批評家は、政府と電力会社「東電」の情報政策を、カタストロフィーの第二幕であると述べている。人々は、見殺しにされていると感じている。そう思った人々が、市民主導の「市民放射能測定所」を設立させた。この団体のメンバーは、47のすべての都道府県に食品やその他の商品や人の放射能汚染度を測定する観測所を設立することを望んでいる。
2011年8月15日には、丸森あやさんと岩田渉さんが、この市民団体を代表して、ベルリンで記者会見を行ない、そこで彼らは、現地の状況と彼らの願いを語った。
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)という組織は、とりわけ5000ユーロの寄付を持って、この日本の市民団体の運動を支持している。さらに、IPPNW(核戦争防止国際医師会議)と放射線防護協会は、市民測定所の設立と操業に際して彼らの体験を伝授している。
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「影へのまなざし」紙編集部(以下SBと記す):岩田さん、あなたは、市民放射能測定所(CRMS)」に関与されていますが、その際どんなことをしているのですか?
岩田:我々の大多数は、見習い(Student)にすぎませんが、ガイガー・カウンターを持って、環境ばかりでなく人体や食品の放射能測定も規則的に行なっています。
SB;あなた方の組織は、今年の3月に地震と津波によって福島第一原発が破壊されるより以前からあったものですか、それともその後に、設立されたものですか?
岩田;それ以前にはありませんでした。電力会社「東電」と東京の政府による、「事故」を過小評価する不十分な情報政策へのリアクションから生まれました。
SB;あなた方のここ何週間の測定からどんなことが言えますか?
岩田;原発事故以来、我々は、当地での環境において、放射線量が持続的に増大していることを確認しています。それは我々の機器ばかりではなく、当地の人びとの諸観察からも言えます。事故で(原発が)破損した日、すぐに「東電」は、福島県沿岸で上昇した放射線量を、一回限りの出来事であり、あとは亀裂の入った機器からの残留物が流出しているものだと説明しようとしました。それがあたっていないことは、放射線量の測定が、ますます高い値を示すようになっているということからも言えます。もともとの事故で、膨大な流出があったと見られているわけですから、勿論、個々の場合に、汚染が当時に由来するものなのか、それとも、より新しい日付けのものなのか、ほとんど確定できないのですが。
SB;しかしそれでも、放射能汚染は総計で増えていると、いずれにせよ言えるのですね?
岩田:疑いもなく増えています。しかもそれは、福島だけではないのです。我々が、ヨーロッパ旅行から帰ってきたとき、東京では放射線値が高くなっていました。それは、福島自体の状況が、悪化しているかもしれないと、予感させるものでした。「東電」と文部科学省は、大気の放射能測定を1日にたった10分から30分しか行わないことによって、全体を小さく見せかけているのです。これは、福島における清掃作業の責任者たちが、壊れた原発から出る放射性物質をはらんだ蒸気をいつ解き放つのかを、人がさっぱりわからないか、知られないようにするということを意味しています。
SB;もしかすると放射線を含んだ蒸気が抜き取られるか、放射線を含んだ水が、海に送り込まれる前に、定点観測が行われているかもしれませんね。
岩田;ありえますね。とにかく私たちにはまったくわからないのです。なにしろ彼らは、ほんの少しの情報しか公表しないのですから。でも放射線の値が、この福島県ではますます増えていることは、事実です。
SB:あなた方は、正確にどこで測定をおこなっているのですか?
岩田;これまでにわれわれは、福島県で3箇所の測定所を開設することができました。1箇所は、福島市、それに郡山市と相馬市です。
SB;未曾有の大災害の後の一週目に、メディアは、放射線量の特別高い、いわゆるホットスポットの発見について報じていました。どこかでホットスポットが確認されたとき、役所は、どんな措置をとるのでしょうか?彼らは、その地の住民を避難させるのですか?
立ち入り禁止ゾーンを明示して、誰もそこに入れないようにするのですか?
岩田:我々は、破損した原発から60キロまで離れた所のあちこちにたくさんのホットスポットを確認しました。さらにはある幼稚園の遊び場では、毎時60マイクロシーベルト以上の放射線量を確認しました。そこでも役所は、何もやリませんでした。ほんの少しの表土が、はがされるだけなのです。というのも、本来は、避難や放射の除去が、必要とされる区域でも、福島県の役所や東京の中央政府や東電にとっては、あまりに費用がかかりすぎるものだからである。
SB;被曝した人は、ちゃんと医療的に配慮されていますか?彼らは、被曝していない住民から隔離され、別個にあつかわれるのですか?彼らは、どんなふうに扱われているのですか?
岩田;彼らは、相変わらず、社会の中に組み込まれています。2,3週間前に、福島県の保健衛生局が、約28000人の放射線犠牲者を対象に、医学的な、追加的検査プログラムを告示しました。そこでは、その該当者は、患者というよりも、実験動物のようにみなされいるようで、残念ながら、我々は、ここで問題になっているのは本来の意味での医学的な看護というよりもむしろ、疫学的な一大プロジェクトであるという印象を持ちました。役所の担当者は、これらの人々は、100ミリシーベルト以上の放射線を受けたわけではないので、おおかたの人は、何も心配することはない、また検査は、もっぱら住民の不安を払拭するために行うものであると言い張ります。すでに健康上の悩みを訴えている人もいるなかで、それは、我々には、単なる「おためごかし」のように響きました。
SB;避難させられ、自分の家から退去しなければならなかった人たちは、どんな境遇にあるのでしょうか?彼らは、引き続き仮の宿泊所で暮らしているのでしょうか?
岩田;ここでは、2つの避難のうねりが関係しています。第一は、地震と津波で、自分の家を失った人たちです。それから原発周辺20キロの立ち入り禁止ゾーンから避難せざるを得なかった人々がいます。ここで話題にしているのは、移住させられた、総計で約300,000人の人々ということになります。たいていの人は、相変わらず、体育館のような仮の宿泊施設で暮らしています。そしてもっと多くの避難が必要になりそうなので、行政当局は、原発周辺の立ち入り禁止ゾーンを拡張することを拒んでいます。そもそも地震と津波で壊れた地域の再建も捗っていないのに、もっと多くの人々を避難させることなんてできないと彼らは言います。短期的な視点にたてば、もっともな議論ということになりますが、彼らは、立ち入り禁止ゾーン周辺の地域では、長期的には、人間一般、とりわけ子どもたちにとって、健康上の大いなる危険があるということを隠しています。
SB:立ち入り禁止ゾーンからきた避難者は、国の厚生省から医療的な看護を受けていますか?
岩田:彼らは、まったく医療的な看護を受けていません。例えば、子どもたちに鼻血のような怪しげな症状が出て、親が医者に連れていった時でさえ、そうなんです。
100ミリシーベルト以下の放射線しか浴びていないのだから、鼻血が、放射能によるものとは言えない、と彼らは言い張ります。
SB;原発事故が起きた直後の数日間に、福島県では、破壊によって食料品の窮乏に陥ったばかりではなく、業者やトラックの運転手は、被曝への不安から、該当する地域に行きたがらなかったと聞いていますが、この問題は、今では解消したのでしょうか?
岩田:それは、もはや問題でなくなりました。目下の最大の問題は、高濃度に汚染された地域で、いまだに人が暮らしているということなのです。
SB;何回か炉心溶融があってから、2,3週間して、福島第一原発では、高濃度に汚染された水が、3人の作業員のゴム長靴に入ってしまい、彼らは、直ちに応急措置を施されざる得なかったという事故が起きました。この事故は、世界中にセンセーションを巻き起こしました。きっとあなたは、彼らがどうなったのか、知っていると思うんんですが?
岩田:当時その事故については聞いてはいましたが、その3人の男性に、最終的に何が起こったのかについては、知りません。
SB:放射能に汚染された福島県からの農産物については、現在何が起こっているのでしょうか?それらは、引き続き売買され、消費に回されているのでしょうか?それとも、それらは、引き続き、市場に送り出すことができるように、一定の放射線量に抑えるために、他の食料品と混ぜ合わされているのでしょうか?おそらく、多くの食品は、あっさりと破棄されるのでしょうね?
岩田:役所当局の側からは、我々はごく僅かなことしか聞かされていません。しかし我々独自の測定に基づいて、事故を起こした原発から放射性の降下物が、福島県の作付け耕地面積の上に、広範囲にわたって降り注いだことは、分かっています。ただ福島からの農産物のすべてが、放射能に汚染されているとは、言えないのです。温室で栽培された果物や野菜は、当然、まったく汚染からは免れています。放射能に汚染された食品に関して行われていること、つまりそれらの農産物が、いまだ加工されているのか、あるいは破棄されているのか、実際には、我々には、さっぱりわからないのです。当局は、キログラムあたり、500ベクレル以上の高い放射線値を示す食品は、消費に回されてはならないと定めていますが、それ以下にとどまるものは、すべて売買されているのです。
SB:福島産の食品は、安い値で売買され、その結果、比較的裕福な人々は、少々値段が高くても、汚染度の少ない食料を買う一方で、それらの食品は、おそらく貧乏な人たちによって買われ、消費されるなんてことがありえるんではないでしょうか?
岩田:そういうこともないとは言えませんが、これまでのところ、そのことについては何も聞いていません。われわれのいる、ここ福島では、3重の事故の後でも、全般的に言って食品の価格は、安定したままです。それでも、福島からの食品は、日本の他地域で、とても低い価格で提供されている、と一般的には言えるでしょう。
SB:現在のところ、日本における脱原発運動は、どんなことを企画していますか?新たな抗議活動は、準備されているのでしょうか?
岩田:われわれは、10日間のヨーロッパ旅行から帰ったばかりですから、今すぐ詳しくは言えません。それでも原子力産業の威信は、福島第一原発の出来事によって著しく損なわれたことは、否定できないでしょう。以前は、公共の場では多くの人が、日本の核政策への批判、あるいは疑念を表明することを控えていましたが、今日ではもはやそうではありません、このテーマについて、公共の場で、熱く議論されています。核エネルギーの批判者のところには、問い合わせが殺到しています。
SB:原発事故から5ヶ月以上が経って、国内の雰囲気はどうなんでしょうか?人々は、福島第一原発に由来する健康への脅威をもはや、それほど感じてはいないのでしょうか。そしてこのテーマについてのメディアの報道は、減っているのでしょうか?
岩田:そのテーマは、相変わらず、素朴なの人々の心を捉えています。ですが、新聞やラジオでは、(原発に)批判的な新聞やテレビの編集部の個々のレポートを除いて、大メディアの関心は、後退してしまいました。役所の責任者たちと同じように、大メディアの代表者たちは、福島第一原発の状況について、真面目に取り組もうとせず、彼らは、出来れば、機械的にあしらいたいと望んでいます。
SB: まだ5月中だったと思いますが、菅 直人首相は、日本は、原子力産業から方向転換すると公表しました。しかしそれと同時に再生エネルギーへの変換には、長期間かかるだろうことを強調しました。あなたは、菅氏の声明は、真剣なものであると受け取りますか?
岩田:私にはわかりません。たとえ彼が、真剣に言ったとしても、彼が、どのようにして脱原発をやってみせるのかが、私にはまったくはっきりしません。いずれにせよ私は、首相の声明に倣ったりなどしません。
SB:日本の核産業に関して、あなたは、この先どうなるとお思いますか?
岩田:巨大な規模の福島第一原発事故を目の前にして、日本の従来の核政策が、簡単には継続され得ないことは、誰にも明らかです。その諸過程からわかるのは、人類は、原子力を制御することはできず、おそらくこれからも決して完全には制御できないであろうということです。原子力産業が生み出す放射性物質をわれわれは、決して厄介払いすることができず、何千年も間、できるだけ安全にそれを保管しなければならないのです。日本で核からの脱出口とエネルギー・シフトを生み出すには、おそらく今後停止される溢れ出る原発からの電力を(当面は)利用する覚悟がいるのでしょう。けれども、基本的には人類にとってその潜在的危険と健康へのリスクは、あまりにも大きいすぎる、テクノロジーなのです。
SB:今日、福島県沿岸で、新しい大きな地震があったという報告がありました。その地震によって新たに、原子炉の損傷が生じたかどうか、あなたは、ひょっとしたらそれについてなにか聞いていませんか?
岩田:その地震は、ここ福島市で感じられました。私は、その地震が原発に及ぼすかもしれない影響について、大きな不安を抱いています。というのは、例えば、4号炉は、3月11日以来もはや安定していなくて、傾いた状態にあります。それは、一方に傾いています。原子炉建屋が崩壊する危険があります。
SB:岩田さん、理解に役立つ情報をどうもありがとう御座いました。
2011年8月22日
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