第50回衆院選が10月15日告示された、京都選挙区では立憲民主党と共産党が全面対決し、維新の消長も注目される、共産党はいま存亡の岐路に立っている(その38)
- 2024年 10月 19日
- 評論・紹介・意見
- 「リベラル21」広原盛明第50回衆院選
今回の総選挙ほど情勢が読めない選挙はない...と周りの皆が言っている。かく言う私もその一人でまったく選挙の行方がわからない。自民党は裏金問題で公認されない前職が出たが、公認されても「裏金議員」である事実は隠せない。公認・非公認にかかわらず、自民が相当なハンディを背負っていることには変わりない。
一方、野党側も旗色がはっきりしない。野田立憲代表は「裏金議員」が立候補する選挙区には野党が統一して対抗馬を立てると言明したが、野党共闘はいっこうに進まない。立憲のお目当てだった国民民主と維新の間でも話がまとまっていないというし、共産との間ではむしろ対立関係が激化している。このままで行けば、野党はバラバラのままで自公と戦うことになる。
京都選挙区でも立憲と共産の対立が際立っている。前回衆院選では、立憲が候補者を立てない「京都1区」の票欲しさに、共産が「京都3区」「京都6区」での候補者擁立を見送るという(信じられないような)駆け引きがあった。だが、結果は悲惨なもので、京都1区の穀田恵二候補には立憲の票がほとんど入らず、自民新人に大差を付けられ、維新新人には3千票差に迫られるという惨敗を喫したのである。
その結果、京都3区と6区では立憲の泉健太氏と山井和則氏が楽勝し、泉氏は立憲代表、山井氏は国対副委員長とそれぞれ党の要職に就いた。しかも泉氏は代表就任後、共産との共闘には一貫して否定的な態度を取り続け、その流れが現在の立憲の基本路線になっていることは皮肉としか言いようがない。共産は「敵に塩」を送ったつもりだろうが、自分が「辛酸」を舐める破目になったのである。
共産は前回の失敗に懲りたのか、それとも野田代表の政治姿勢への反発からか、今回は京都選挙区の全てに候補者を擁立して立憲と対決する。立憲はかって友好関係にあった前原誠司氏(2区)や北神圭郎氏(4区)の選挙区では候補者擁立はしないものの、1区では結党以来初めての新人候補を擁立する。いわば、共産との真っ向勝負に挑むわけである。
共産は京都選挙区において、2010年代前半までは比例得票数18~19万票、得票率17~18%をキープしていた。共産の比例得票数・得票率の推移は、2012年衆院選13万8376票(11.6%)、2013年参院選18万2395票(17.2%)、2014年衆院選19万3596票(18.6%)、2016年参院選19万4503票(18.5%)である。しかし、それ以降の2010年代後半から2020年代前半にかけては、立憲・共産両党の比例得票数・得票率はともに減少に向かっている。原因は凄まじいばかりの維新の躍進である。立憲・共産両党間の
わけのわからない裏取引に嫌気がさした有権者が、一見清新さを感じさせる「身を切る改革」の維新に票を流したのである。
〇2017年衆院選
立憲19万2867票(18.1%)、共産15万0232票(14.1%)、維新10万6945票(10.0%)
〇2019年参院選
立憲13万9910票(14.6%)、共産16万7302票(17.5%)、維新11万0923票(11.6%)
〇2021年衆院選
立憲15万8980票(13.7%)、共産15万2865票(13.1%)、維新26万6728票(23.0%)
〇2022年参院選
立憲12万8874票(12.4%)、共産12万3993票(11.9%)、維新24万2681票(23.4%)
だが、今度の総選挙の行方はまったくわからない。維新は大阪関西万博の失敗や身内議員の続発する不祥事でこの間すっかり評判を下げている。馬場維新代表のあからさまな自民すり寄り姿勢や斎藤前兵庫県知事の居直りも有権者を心底白けさせている。維新の評判は急速に上がっただけに、落ちるのも早いとの観測がもっぱらなのである。関西人は「酔うのも早いが醒めるのも早い」と言われる所以であろう。
野党共闘が、北海道や宮城、長野を除いて再構築される気配がないことを嘆く必要はない。京都のような「裏取引」の臭いのする野党共闘は抜本的に刷新しなければならず、そのためには立憲と共産の真っ向勝負が必要なのである。今回の総選挙はその第一歩であり、その結果が今後の両党の運命を決めるだろう。私は「京都3区」の有権者の一人であるが、今度は前回のように棄権しないで「意中の人」に投票しようと思う。(つづく)
初出:「リベラル21」2024.19.18より許可を得て転載
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