日高桃子が、もし標準語で話していれば、この小説はどうなっていたろう。『おらおらでひとりいぐも』の主人公が、東北弁でなく、標準語で話す。 想うに、日高桃子は、もっと魅力的な女性になっていなかったか。さらに、著者・若竹千
本文を読む書評の執筆一覧
『食いつめものブルース』――上海の貧乏物語を読む
著者: 阿部治平――八ヶ岳山麓から(255)―― むずかしいことや怒りたくなることをやさしく、深刻な問題をおもしろく書いた本である。舞台は上海、爆買いとも反日とも無縁な出稼ぎ中国人の生活記録。 副題は「3億人の中国農民工」(日経BP 2
本文を読むこれこそジャーナリスト必読の書 - 鎌田慧著『声なき人々の戦後史』(上・下)を読む -
著者: 岩垂 弘まさにジャーナリスト、ジャーナリストを目指す人にとって「必読の書」と言っていいだろう。 ;鎌田慧氏がルポライターの第一人者であること、その代表作が、愛知県豊田市にあるトヨタ自動車工場で期間工として6カ月間働いた体験を
本文を読む「オペレーションZ」が問いかけているもの - 真山仁最新作(新潮社、2017年12月)を読む
著者: 盛田常夫真山仁氏の最新作『オペレーションZ』は、日本の累積債務問題を扱った経済小説。ヘッジファンドの生き様を扱った小説『はげたか』でブレークした著者が、今度は日本経済が抱える債務課題に挑んだ作品だ。 周知のごとく、日本は1000
本文を読む周回遅れの読書報告(その39) アブラハム・レオンのユダヤ人論
著者: 脇野町善造アブラハム・レオンの『ユダヤ人と資本主義』を読んだ時の話である。この本は、第4インター・ベルギー支部の中心的活動家だった著者が、僅か26才でナチの手によって殺されるまでの、ほんの短い時間のうちに、書き上げた本である。非
本文を読む商社マンの幻視で表現した戦後七〇年 - 浅田次郎著『おもかげ』を読む -
著者: 半澤健市浅田次郎の作品を初めて読んだ。泣いた。 主人公は退職歓送会の帰路、脳梗塞で倒れる。作者は、死の床にある男の脳裏に浮かぶ回想と幻影を描いていく。その内容は、少年時代から現在に至るまでの65年の人生の、思い出深い場面である
本文を読む戦時下の反戦医師の足跡を掘り起こす 森永玲著『「反戦主義者なる事通告申上げます」――反軍を唱えて消えた結核医・末永敏事』
著者: 岩垂 弘無教会主義のキリスト教伝道者・内村鑑三の弟子で結核の先駆的研究者でありながら、戦時下に公然と反軍を唱えたため逮捕され、この世から抹殺された医師の足跡が、長崎新聞編集局長によって70余年ぶりに掘り起こされ、単行本になった
本文を読むアメリカのミリオンセラー書籍の紹介 - J.D. Vance,“Hillbilly Elegy” -
著者: 小川 洋現在、アメリカで文字通りミリオンセラーとなっている本がある。J.D. Vanceの“Hillbilly Elegy: A Memoir of a Family and Culture in Crisis”(Willia
本文を読む科学的常識から権力犯罪を疑う 青山透子『日航123便 墜落の新事実』を読む
著者: 小川 洋世界各地でテロ事件が続いている。その多くは社会不安を煽り、政治的不安定を引き起こすことを目的とするテロ組織によるものだろう。しかし、事件の中には科学的常識からして不審な点があって、権力犯罪の可能性を考えざるをえないケー
本文を読むエマニュエル・マクロン著 「革命:これは僕たちのフランスのための闘争だ」(Révolution)
著者: 村上良太フランスの新大統領になったエマニュエル・マクロン氏は選挙運動中に己の考えと政策をまとめた「革命:これは僕たちのフランスのための闘争だ」(Révolution : C’est notre combat pou
本文を読む『“目覚めよ”と呼ぶ声が聞こえる』片山郷子・著 鳥影社・刊
著者: 阿部浪子現代人は不安を背負っているという。とりわけ、老後の不安とはどのようなものか。片山郷子の第6作品集には、その心情がこまやかに描かれている。胸に染みいる、詩1編と小説5編だ。老若男女を問わず、自分のこととして多くの人に読ん
本文を読む秋葉 洋さんと私
著者: 小原 紘韓国通信NO525 尊敬する職場の先輩だった秋葉洋さんが書き残した『戦争青春記』を読んだ。亡くなってから3年、夫人が自費出版した。 東京府立四中(現戸山高校)から陸軍幼年学校、士官学校に進み、卒業後、静岡県磐田の通信隊で
本文を読む国会論議の不毛を逆照射する対話 - 『吉本隆明 江藤淳 全対話』(中公文庫)を読む -
著者: 半澤健市本書は、1965年から1988年の間に行われた、吉本隆明(1924~2012)と江藤淳(1932~1999)の対談の全記録である。五回の対談のタイトルは、「文学と思想」、「文学と思想の原点」、「勝海舟をめぐって」、「現
本文を読む畑山敏夫著 「現代フランスの新しい右翼 ルペンの見果てぬ夢」(法律文化社)
著者: 村上良太フランスの大統領選で決選投票に進んだマリーヌ・ルペン国民戦線党首。2002年に父親のジャン=マリ・ルペン先代党首が決選投票に進んで以来の躍進となった。アンケート調査ではエマニュエル・マクロン候補が優勢と見られているが
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (6)
著者: 野上俊明Ⅳ 社会活動家として東洋と西洋の統合を体現する マ・ティーダは医者であり小説家であり社会活動家であるという、ミャンマー民主化運動が生んだ多彩な側面を持つ稀有な人格です。医療技術を手に慈悲という東洋的ヒューマニズムに基づ
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (5)
著者: 野上俊明<試論的考察―マ・ティーダの生き方が示す四つの可能性> Ⅰ上座部仏教の可能性を拡げる マ・ティーダは、ミャンマー人の道徳的な基礎となっている戒律遵守※の首尾一貫した生き方を発展させる複数の方向性を示唆しています。※最も
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (4)
著者: 野上俊明<上座部仏教に由来する道徳的世界観―近代的世界観との比較> 前近代社会における世界観では、存在(何があるか ザイン)と価値規範(いかにあるべきか ゾレン)の区別がなく、すべて(自然、社会)が人間の価値観念によって浸潤さ
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (3)
著者: 野上俊明<ヴィパッサナー瞑想による解脱をめざして> 正直私は上座部仏教の信者でもありませんし、瞑想の何たるかも実際感覚としてよく分かりません。したがってマ・ティーダの瞑想法実践の適否も判断できません。ただ結果からみて、仏法への
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (2)
著者: 野上俊明<総選挙勝利と投獄> 1990年5月に実施された総選挙でNLDは圧勝しましたが(392/485議席)、軍事評議会SLORCは前言を翻して政権移譲を拒否、民主化勢力は徹底的に弾圧されて冬の時代に入ります。スーチー女史、テ
本文を読むマ・ティーダの獄中記「良心の囚人*―インセイン刑務所を通じての私の歩み」を読んで (1)
著者: 野上俊明私たちが優れた政治的自伝に期待するものは、著者の功績がつまびらかになることはもちろんですが、それ以上に著者がどれだけ生きた時代の証言者になっているかということです。時代証言としての自伝の意義は、著者と同世代人に対しては
本文を読む小説「すみれの暴力」について
著者: 稲浜 昇作品は作者が何らかの意図を持って生み出したものではありますが、作品として発表された瞬間から作者から独立した存在として読者に差し出されるものです。そして読者の読みによって作品は(作者の意図からは離れて)新しいものとなって
本文を読む著者への手紙:笠井一成著『不戦死』を読んで
著者: 宮野 孝笠井一成様 ごぶさたしています。『不戦死』を読みました。読むほどにずっしりと応えてくる本です。重量を言っているのではありません。 まず「見殺し」から。 各話の各登場人物が、太く細く繋がりながら全体を織り上げています。最終
本文を読む今日のジャーナリズムの姿勢を鋭く問う 『米騒動とジャーナリズム 大正の米騒動から百年』
著者: 岩垂 弘大正期の日本を震撼させた米騒動から来年(2018年)で100年になる。その記念すべき年を前に『米騒動とジャーナリズム 大正の米騒動から百年』という本が刊行された。1918年(大正7年)夏に富山県東部沿岸地域に端を発し、
本文を読む文庫本「解説」の「解説」の面白さ ―書評 斎藤美奈子著『文庫解説ワンダーランド』(岩波新書)―
著者: 半澤健市本書は、文庫本の「解説」を「解説」した本である。 解説の解説なんて何が面白いのか。面白いのである。 著者の斎藤美奈子(さいとう・みなこ)は、1956年生まれの文芸評論家。「序にかえて」の副題に「本文よりエキサイティング
本文を読む民あってこその、国 命あってこその、人
著者: 小原 紘韓国通信NO514 「民あってこその、国 命あってこその、人」 草壁皇子(天武天皇第二皇子、母は持統天皇)の長男のカル王子(後の文武天皇)に道昭が語った言葉だ。小説『道昭――三蔵法師から禅を直伝された僧の生涯』(石川逸子
本文を読む奥山忠信著『貧困と格差-ピケティとマルクスの対話』(社会評論社)を読む
著者: 佐藤直樹● デフレの原因は「搾取し過ぎ」である 本書の真骨頂は、ピケティとマルクスの議論を「導きの糸」として、現下の日本の貧困と格差をめぐる危機的状況を、ラディカルに解析してみせた点にある。一見そうみえないかもしれないが、じつ
本文を読むファシズムは死語になったのか(3) ― 『 ヒトラー万歳と叫んだ民衆の誤算 』 を読む ―
著者: 半澤健市20世紀で最も民主的・文化的といわれた「ワイマール共和国」は、1919年に始まり、1933年のナチス政権成立で終わった。14年間の短命な体制であった。6000万人から8000万人の死傷者を出したとされる第二次世界大戦の
本文を読むユーロは絶対に崩壊しない - 伴野文夫著 「ユーロは絶対に崩壊しない」 -
著者: 伊藤力司伴野文夫著 「ユーロは絶対に崩壊しない」 幻冬社ルネッサンス新書 発行年月日 2016年9月13日 定価800円+税 今年6月23日、イギリスは国民投票でヨーロッパ連合(EU)から離脱するというショッキングな判断を下
本文を読む女性週刊誌『女性自身』を買った
著者: 小原 紘韓国通信NO496 8月23日30日の合併号で450円。今まで女性週刊誌を買ったことがなかったので、私には真夏の「変事」「珍事」といえる。表紙の一番上にある吉永小百合&姜尚中の対談記事が目にとまったからだ。 同世
本文を読む書籍紹介・現代史を見直す視点 - Timothy Snyder “BLOODLANDS: Between Hitler and Starlin,” Basic Books, 2010, New York. 邦訳、布施由紀子訳『ブラッドランド ヒトラーとスターリン大虐殺の真実』(上・下) 筑摩書房、2015年 -
著者: 小川 洋本書はすでに主要な新聞の書評欄でも取り上げられており(注)、いまさら紹介でもないのだが、本書の価値はいくら強調しても足りないと考えるので、ここに改めて紹介する。 さてソ連邦史を学んだ者は、スターリンによる農業集団化の
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